恋の歌が好きだ。いわゆるラブソング。男と女から生まれてくるものが本来の歌なのだ、と思う。
さて、この本。「恋」をテーマに、監修者で東京大学大学院教授・渡部泰明氏が恋歌を解説し、杉田圭氏がマンガ化したのだ。しかも朗読CDS付き!万葉集の古代から、恋は変わっていないのだ。その代表的な歌を紹介しよう。
・あかねさす 紫野行き 標野(しめの)行き 野守(のもり)は見ずや 君が袖振る(額田王)
紫草の生える野原を行き、御料地を行くあなた。そんなに袖を振って、番人に見つかったらどうするの?
・紫草(むらさき)の にほへる妹(いも)を 憎くあらば 人妻故に 我(あれ)恋ひめやも(大海人皇子)
紫草の花のように美しい君を、嫌いになれるわけがないでしょう。たとえ人妻だとしても、恋しく思う気持ちは止められません。
・月やあらぬ 春や昔の 春ならぬ わが身一つは もとの身にして(在原業平)
月が違う?それとも春が昔の春ではない?あなたがいなくなり、すべてが変わってしまった。私だけを、あの時のまま置き去りにして。
・思ひつつ 寝ればや人の 見えつらむ 夢と知りせば 覚めざらましを(小野小町)
あの人のことばかり考えながら眠りについたおかげで、夢で逢えたのでしょうか。夢の中で、これは夢だと気付くことができたなら、覚めないよういしたのに。
・恋ひしのぶ 袖の涙や 大井川 逢ふ瀬ありせば 身をや捨てまし(後深草院二条)
あの人のことを恋しく思って流す涙は、川の水のようにあふれている。もし再会できるのならば、この川に身を投げてしまおうか。
…いいなあ。ロマンチックだなあ。古文の副読本に指定して欲しいよね。オススメです。(・∀・)