相手に「伝わる」話し方 ぼくはこんなことを考えながら話してきた (講談社現代新書)
- 作者: 池上彰
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2012/09/28
- メディア: Kindle版
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氏は、アナウンサーではない。NHKの報道記者、首都圏向けニュースのキャスターなどを経て、「週刊こどもニュース」の語り手であるお父さん役を務める著者。本書では、相手にわかりやすく伝える「話し方」について語っているのだ。そのエッセンスを紹介しよう。
アナウンサーでもない私は「話すプロ」でも「読むプロ」でもありません。そんな私が、原稿を読み、視聴者に語りかけるというのは大変なことでした。未熟なまま、私はキャスターの仕事を始めてしまいました。
・他人が書いた長い文章を、自分が読めるように、短い文章に分けていったのです。すると、思わぬことが気がつきました。原稿の文章がわかりやすくなったのです。文章が短くなることで、結果的に、ひとつひとつの文章が伝え内容が整理されたのです。ひとつの文章は、ひとつの要素だけを伝える。これを原則にしました。すると、読んでいて、独特のリズムが発生し、聞き手の頭に入りやすくなることを発見したのです。
・「読むニュース」から「語りかけるニュース」へ挑戦しました。「みなさん、こんなことがあったんですよ」と語りかけてくれる方が、はるかに親しみやすいはずです。一方的に伝えるのではなく、視聴者にも考えてもらえるように、話しかける。まるで一緒に話し合っているかのように伝えることで、熱心に見てもらえるようになるはずだと考えたのです。例えば、「○○鉄道は、運賃の引き上げを決めました」 → 「○○鉄道を利用しているみなさん、来月から運賃が上がりますよ」のようにです。
・気温が高かった日には、単に「きょうは暑かったですね」という会話ではなく、「きょうは駅まで自転車に行ったら、汗ばんでしまいました」と具体的な体験談を披露します。自分の体験談を話すことで、視聴者にもイメージがつかめますし、キャスターが身近な存在に感じられます。
・わかりやすく説明させるための五箇条
1 むずかしい言葉をわかりやすくかみ砕く
2 身近なたとえに置き換える
3 抽象的な概念を図式化する
4 「分ける」ことは「分かる」こと
5 バラバラの知識をつなぎ合わせる
・ダイオキシンは微量でも人体に害を及ぼします。政府は一日当たりの許容摂取量=これだけだったら体内に入っても仕方がないですよ、という限界の量です。これが一日に体重一キロ当たり四ピコグラムと設定されました。ピコグラムは、「一兆分の一グラム」とう極小の単位です。これをどう表現するか。私は「東京ドームを入れ物にして考えるのであれば、アーモンド一粒くらい」と放送当日、私はアーモンドを手に持って説明をしました。
・私は、便利な「話のテクニック」など存在しないと思っているのです。話すべき内容があって、「伝えたい」という熱い思いがあれば、それは相手に伝わるものなのです。「これだけは伝えたい」という、内心からほとばしり出る情熱があれば、たとえ説明は拙くても、それは相手に伝わるのだと思います。