「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

BOOK〜夭折した歌人・中城ふみ子の愛の遍歴!…『冬の花火』

冬の花火 (集英社文庫)

冬の花火 (集英社文庫)

このブログでも時々紹介しているけど、私は五行歌人でもあり、詩人でもあります。(^u^)


POETRY〜『五行歌 ハマ風5周年記念歌集』(おのづかてる)
http://d.hatena.ne.jp/lp6ac4/20100615
TOPICS〜五行歌…神奈川新聞に掲載されました!
http://d.hatena.ne.jp/lp6ac4/20081114
BOOK〜横浜歌会10周年記念五行歌集…『はま翔』
http://d.hatena.ne.jp/lp6ac4/20070910
POETRY〜産経新聞・神奈川版…『五行歌のポケット』
http://d.hatena.ne.jp/lp6ac4/20070609


この本を読むまでは、恥ずかしながら、中城ふみ子という歌人を知らなかった。そのエピソードを聞いただけで惹きつけられたのだ。


「昭和29年春、戦後の歌壇に突如、彗星のように登場した「乳房喪失」の歌人中城ふみ子は、ひときわ妖しく鮮烈な光芒を曵いて、その夏、札幌医大病院の暗い病室に、31歳の生涯を閉じた。没後20余年、当時、同じ大学の医学生であった渡辺淳一は、後、直木賞を受賞し、現代のロマンを語る作家として不動の地位を確立した。本書は、著者が年来のテーマに、数年に歳月と情熱を注いだ中条ふみ子の伝記的小説である。北国の野に、街に、そして死の迫る癌病棟に、美貌と天才に恵まれながら、短く激しいい生命の炎を燃やし尽し、夭折した女流歌人の奔放華麗な愛の遍歴と、死に至るドラマが展開する−。」


そのいちずな生き方、女性というよりも、女を生き切った障害、生々しい歌の数々…。感動の一冊だ!


・中城作品は、戦後、自然詠とリアリズムという古い殻のなかに過ごしてきた歌壇を根底から揺るがし、その反響は(否定論のほうが圧倒的に強かったが)その後、数年間、「短歌研究」その他の誌上を賑わし、論争、批判は絶えなかった。だがこれらの反響は、ふみ子自身には完形のないことであった。


・浮気などという言葉では言い表せない。迫りくる死の恐怖から逃れるように、ふみ子はさらに現実の恋に命を燃やす。このころ、ふみ子はなお、かすかに残る力をふり絞るようにして外出した。逢引のあと、ふみ子の眼のふちは黒く隈どられ、歩く足も心もとない。愛をたしかめあうというよし、みずから体を苛むに似た行為であった。しかしその瞬間、ふみ子はすべてを忘れることができた。迫りくる死の恐怖も、乳房を喪ったことも、いまや歌壇のスターであることも、すべてを忘れて、純粋に一人の女になりきる


・このころ、ふみ子の愛は、一般の男女の間の愛という意味をこえて、死の恐怖から逃れるための愛になっていた。人を愛し、それに没頭している時だけ、ふみ子は死を忘れることができた。生きていく支えとして、ふみ子の愛は必要不可欠なものであった。自らを虐げ、息も絶え絶えに男の愛に狂うことだけが、生きていくエネルギーになる。死の床でふみ子は再び高木の愛を意識した。


「人間って花火みたいなものね。でも私は花火でも、冬の花火ね」ふみ子はふと、自分が誰ひとり見る人もない雪の片隅に消えてゆく、冬の花火のように思えた。



われに似しひとりの女不倫にて乳削(ちそ)ぎの刑に遭はざりしや古代に


魚とも鳥とも乳房なき吾を写して容赦せざる鏡か


生きてゐてさへくれたらと彼は言ふ切られ与三(よさ)のごとき傷痕を知らず


失ひしわれの乳房に似し丘あり冬は枯れたる花が飾らむ


年々に滅びて且つは鮮(あたら)しき花の原型はわがうちにあり



「歌いたいから歌う」 「歌わずに居られぬ」「自分がこの世に生まれてきた証として残すものといえばいまは歌しかない」…クウ〜!(>_<)
ふみ子とは、レベルも違うが、私も歌わずにいられない。渡辺淳一ってさすがだね。読ませるね。オススメです!