歌の基本は「恋の歌」だと思う。
私の大好きな恋愛歌人俵万智ちゃんが古今東西、百人の歌人がうたった百首の恋の歌に万智ちゃん流の解釈と鑑賞が添えられた、ユニークな短歌鑑賞かつ恋愛手引きの書。胸キュンの歌、満載。そのなかで代表的な歌を紹介しよう。
全存在として抱かれいたるあかときのわれを天上の花と思わむ 道浦母都子
〜「全存在」がいい。愛する女性は全存在であり、全宇宙のようなものだ。
春芽ふく樹林の枝々くぐりゆきわれは愛する言ひ訳をせず 中城ふみ子
〜いろいろな恋のカタチがある。言い訳をしない恋愛でありたいよね。
いつかふたりになるためのひとりやがてひとりになるためのふたり 浅井和代
〜深い歌だ。絶叫の歌人・福島泰樹の「坊や坊ややがて別れてゆくからに夢の中でも抱き締めてやる」を思い出した。
氷河期より四国一花(いちげ)は残るといふほのかなり君がふるさとの白 米川千嘉子
〜人を好きになると、その人の故郷が知りたくなる。それはもう恋である。
指からめあふとき風の谷は見ゆ ひざのちからを抜いてごらんよ 大辻隆弘
〜「ひざのちからを抜いてごらんよ」がいいなあ。映像が浮かんでくるなあ。
美しき誤算のひとつわれのみが昂ぶりて逢い重ねしことも 岸上大作
〜恋愛はすべて美しき誤算だよね。
良寛が字に似る雨と見てあればよさのひろしと云ふ仮名も書く 与謝野晶子
〜窓を打つ雨模様は、やがて好きな人の名前となるのだ。
われらかつて魚なりし頃かたらひし藻の蔭に似るゆふぐれ来たる 水原紫苑
〜二人が交わう時は、二人が一緒になる。魚だったころを思い出す。よーく分かる。
一度にわれを咲かせるようにくちづけるベンチに厚き本を落として 梅内美華子
〜こういうシチュエーション、好きだなあ。少女漫画見たいだなあ。(・∀・)
眠りつつふたりの枕欲しがりて君はひとつをひしと抱きぬ 梅内美華子
〜愛するヒトは、抱枕のようなものなのだろうか。淋しい夜は。
君の眼に見られいるとき私はこまかき水の粒子に還る 安藤美保
〜恋は、「量子力学」のようなものなのか。
観覧車回れよ回れ想ひ出は君には一日(ひとひ)我には一生(ひとよ) 栗木京子
〜この一瞬、一瞬のひとときが宝物だよね。恋愛は。
トホホホホとはわれの口癖 情なや惚れていしゆえ別れてしまえり 晋樹隆彦
〜いままでの人生、どれだけ「トホホホホ」と言う言葉を吐いたか…。
一度だけ本当の恋がありまして南天の実が知っております 山崎方代
月に立つ君のそびらのひとつほくろ告げざれば永久(とは)にわれのみのもの 青井史
〜裸にならなければ分からない。私だけが知っているあなたの秘密。
新妻の笑顔に送られ出でくれば 中より鍵を掛ける音する 久松洋一
〜う〜ん…。よく表現したなあ。このいいようもない淋しさを。
文明がひとつ滅びる物語しつつおまえの翅(はね)脱がせゆく 谷岡亜紀
〜「翅を脱がせゆく」がなんともエロティックである。
「たった今全部すててもいいけれどあたしぼっちの女でも好き?」 渡邉志保
〜こういうセリフを言う女性は私の好みである。(・∀・)
束縛をするならもっと柔らかいシルクのリボンで縛ってほしい 久保奈穂子
〜カアーっ!!!(゜o゜) いいなあ…。一番好きな歌かも。
馬を洗はば馬のたましひ冴ゆるまで人恋はば人あやむるこころ 塚本邦雄
〜馬を洗うのならば、その魂が冴えるほど、徹底的に。同じように、人を恋するならば、その命を殺めるほどひたすらに。それが本当の恋というものだ…。
みづみづしき相聞の歌など持たず疲れしときは君に倚りゆく 石川不二子
〜疲れた時ほど、愛する女性を抱きたくなることがあるよね。
樹の葉噛む牝鹿のごとく背を伸ばしあなたの耳にことば吹きたり 早川志織
〜「牝鹿のごとく」が効いている。小柄な女性が好きです。
花水木の道があれより長くても短くても愛を告げられなかった 吉川宏志
〜あるよね…。愛の告白のシチュエーションって微妙なタイミングだからねえ。
形なきものを分け合ひ二人ゐるこの沈黙を育てゆくべし 小島ゆかり
〜愛する二人にはコトバはいらない。沈黙だけでいい。
掌(て)のぬくみ伝うるブランデー飲みほせば君になだるる潮みちくる 玉井清弘
〜お酒のチカラを借りて、抱きたいときがあるよね。
私をジャムにしたならどのような香りが立つがブラウスを脱ぐ 河野小百合
〜女性をジャムにしたらどんな味がするのだろう!?
古城址にわれを導く処女(おとめ)にて生きてゐる肩丸く小さく 島田修二
〜ふっと、小さい女性の肩を見た時に、オレが守らなければと思うんだよね。
はあ〜…やっぱり恋っていいなあ。ずっと死ぬまで恋をしていたいなあ。オススメです。(・∀・)