「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「食の歴史 人間はこれまで何を食べてきたのか」(ジャック・アタリ)

ワタシは農学部出身なので、食、農業、自然環境には昔から興味がある。食から離れたと思ったら、結局、食に戻ってきてしまった。(笑)(=^・^=)
 
この本の切り口はいままでなかったなあ!わかりやすいなあ。考えさせられるなあ!♪
「人類の幸福の源は、食にある」ジャック・アタリ氏はいう。衣食住は、昔から人の生活に欠かせない3要素です。地球の誕生から過去、現在、未来に至るまで、人類はどのように食べるという行為と関わってきたのか
2050年に世界の人口が50億に達し、AI社会が到来しているとすれば、人類は何を食べていくのか。。現在、78歳にして輝かしい知性を放ち続けるために必要な巻末の「食の科学的基礎知識」は必読」そのエッセンスを紹介しよう。
 
・飢餓の状態になく、経済的に余裕があるのなら、世界中のほとんどの人々は、健康的な食事を他者とゆっくり分かち合いたいと思っているはず。誰もが料理が好きであり、食事に招待したい、そして招待してもらいたいと願っているだろう。食事を共にすることによって会話は弾み、しばしば重苦しい日常に安らぎのひと時が訪れる。 しかしながら、ゆっくりと食事をとる機会は世界中で減る傾向にある。
 
なぜ、われわれはこのように単純で、重要で、生きるために必須の楽しみを自身から奪うのか。なぜ、皆で会食する機会は減る傾向にあるのか。なぜ、仕事上の付き合いの会食だけが豪華になるのか。なぜ、(金持ちを除き) 人々は糖分と脂肪分の多い加工食品だけを慌ただしく食べるようになったのか。大きなレストラン、食堂、さらには家庭の台所さえも姿を消したが、これは人間関係の崩壊を意味するのか。いつも独りで外食し、汚染された野菜や肉、 そして加工食品だけから栄養を摂取する日が訪れるのか。
 
われわれは何を食べてきたのか。そして何を食べるようになるのか。これらの疑問の答えからは、自分たちは何者であり、人類にはどんな脅威が待ち受けているのか、そして克服可能なことは何なのかが浮かび上がってくる。
 
人間は母親の胎内にいるときからすでに食べ始めている。そして人間は自分自身の口を使ってあらゆることを行なう。食べ、飲み、話し、叫び、懇願し、笑い、接吻し、罵り、愛し、 嘔吐するのだ。また、話すことと食べることは不可分であり、権力と性行為、生と死という、人間の本質に還元される。こうしたことも、われわれの間では忘れられてきた。
 
食が欠乏すれば死ぬし、食べすぎても死ぬ食が支える会話が途絶えると、われわれは生存できない。食は文化の創造と発展に不可欠なのだ。つまり、農業、料理法、食生活は、社会が持続するための基盤だったのだ。
 
・この密接な、宇宙的規模とさえ言える人間と食との関係は、実は猿人からホモ・サピエンスが漸進的に出現したときから始まった。この関係は、言語の使用から火の利用まで、人類のおもな急激な変化の源泉になった。次に、艇、弓、車輪、農業、牧畜など、さまざまなイノベーションが登場した。これらのイノベーションは食べる欲求を満たすためのものだった。 人間と食とのこうした関係からは、都市、帝国、国家の権力掌握の過程も広く説明できる。 歴史と地政学は、何と言っても食の歴史なのだ。
 
宗教は、長年にわたって食に関する戒律を課し、これを姦淫の禁止と結び付け、食事をともにできる人物さえ選別した。人類は、数千年にわたって動物を殺すための武器を開発してきた。これらの武器は人間を殺すためにも利用され、人類は殺した人間を食べることもあった。食と戦争は、同じ手段で、同じ目的から行なわれたのである。
 
・人類は長年にわたり、時間と場所に関係なく、食べられるときに食べてきたが、次第に決まった時間に食べるようになった。これは定住化の影響だろう。
 
長年にわたって、男性は自分たちが狩猟および採集したものを女性に渡し、女性はそれらを使って調理してきた。旨いものを調達できない男性には、食事やサービスに文句をつける資格がなかった。食、純潔性、性欲には、時に明確な結び付きがあったのだ。こうして性欲を催す食の探求は、すぐに普遍的な強迫観念になった。
 
人々のアイデンティティを長年にわたって形成してきたのは、領土、風土、植生、動物、そして料理法や食事法だった。
 
・「とくに、会話の決まりや社会的な人間関係の構造を長年にわたって定めてきたのは食である。神々と会食できる人、王族と夕食をとれる人、家族で昼食をとる人、物乞いをする人、 何も食べない人、自分たちの食物を自ら生産する人、他者から食物を得る人がいたのだ。 帝国、王国、国家、企業、家族において、重要な決定が下されるのは食事中だ。神々との饗宴や仕事上の会食など、すべては食べるために、そして食べながら物事は決まる。これは今後も同様だろう。
 
長年にわたって、食べすぎて死んだ人もいたが、多くの人々は充分に食べることができないために死んだ充分に食べることができなかった人々が勢力を得ると、彼らは、華奢な食事をとっているに違いないと思う人物に反逆した。
 
われわれは食を通じて日常のあらゆる課題と向き合うことになる。すなわち、健康管理、 他者と会話する能力、弱者に対する配慮、男女関係、国際感覚などだけでなく、仕事、気候、 動物界との関係である。とりわけ食により、現在も健康的な食事をとることのできる人々とそうでない人々との不平等が明らかになる。
 
・つまり、食は歴史の中核に位置する重要な人間活動なのである。未来を理解し、未来に働きかけるには、食に関するあらゆる難問に答えを見出さなければならないのだ。
 
食べることは、これからも会話、創造、反逆、社会的な制御の場であり続けるのか。それとも、われわれはいたるところで静かに加工食品を個食する、自己の殻に閉じこもった他者に無関心なナルシストになるのか。
 
・われわれは美味しくて便利だというふれこみの出来合いの総菜を食することによって、これからも自身の健康を害し続けるのだろうか。今日では一部の人しか手に入れられない食品であっても、今後は広く流通するようになるのか。それとも、環境問題への意識の高まりから、そうした食品を使った料理は誰も食べられなくなるのか。食用の植物種の数はさらに減るのか。われわれは自分たちの食物によって命を落とすのか。
 
われわれは、これからも食に関する宗教上の禁止事項、社会的な慣習、性別に関する規範を甘受し続けるのか。あるいは、食べてもよいものや食べるべきものを、人工知能(AI) が一方的に告げる時代が訪れるのか。人類と人類以外の生物との境界を熟考するようになるのか。地球および生命を破壊することなく、われわれは一〇〇億人の人類を養えるのか。世界中で農民の人口が減少し続けているが、農民の将来はどうなるのか。われわれは今後もこれまで通りの食生活を維持でき、維持したいと願うのだろうか。例外はあるにせよ、すでに人類の三分の一がそうであるように、昆虫を食べるようになるのか。また、合成肉などの人工物を食するようになるのか。近い将来、これまでの文明史を急変させたような食糧の奪い合いや飢饉による暴動が勃発する恐れはあるのか。最後に、フランスは、食物の質の高さと食事時間の確保を両立する稀有なモデルを維持し、規範、見本、先駆的存在となることができるのか。 
 

いいなあ……。手放せないなあ。今年のベスト10、間違いなしだね。超オススメです。(=^・^=)