「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「たぬきババアとゴリおやじ 俺とおやじとおふくろの昭和物語」(毒蝮三太夫)

いいなあ、この本!「痛快!」「粋」というのがピッタリの毒蝮三太夫さん!!!

「ババア」とか「ジジイ」とか、思いっきり言って嫌われないずうずうしさ!!!

 

毒蝮三太夫の知られざる半生を描く。親友の立川談志「お前の親を見てるとお前が上品に見える」と言わしめたひょうきんでユニークな父と母。口は悪いが愛のある、天衣無縫で八方破れなエピソードを軸に、戦前戦後の激動の昭和史を綴った一冊」そのエッセンスを紹介しよう。

 
ウルトラマン円谷プロの制作だが、フジテレビが「お金がかかり過ぎる」と手を出さなかったので、TBSになったようだ。俺はTBSが持つ出演者枠で出られたから、フジが二の足を踏んでくれてホントよかった。俺がギャラが安くて、がたいがよくて、いつも喫茶ロビーにいて暇そうに見えたのもよかった。特撮は予算を食うし、日程がハードだし、今回の撮影は長期にわたる予定だから、役者は安くて、丈夫で、暇なのが何よりだったのだと思う。俺としても、しばらく定期収入がみこめるのが嬉しかった。
 
『ウルトラ』シリーズのこの設定は、今でこそあたりまえだが、初代の昭和四十一年当時は、「なんのこっちゃ」という感じだった。怪獣は前作ウルトラQにも出ていたが、俺はあいにく見たことがなかった。主人公のウルトラマンも、第一印象はこうだった。「なんだい、のっぺりした顔をしていやがる」

ウルトラマンは四十パーセント前後の視聴率を出していたので、もっと続くかと思っ
ていた。だが収録が遅れに遅れて、今にも放送に穴があきそうになったので、三クール三十九本で局が打ち切りを決めたらしい。ありがたいことに、俺はその半年後に始まったウルトラセブンにも出させてもらって、ウルトラ警備隊のフルハシ隊員をやった。二人のM78星雲人のおかげで、俳優の石井伊吉は一躍有名になった。
 
ウルトラマンの収録がいよいよきつくなっていた昭和四十二年一月、俺はもうひとつ、週一の仕事を掛け持つことになった。日本テレビの演芸番組笑点で、大喜利の座布団運びをすることになったのだ。司会役だった談志に、どうしてもと口説かれたのだ。談志は様々な演出を加えて、新しいエンターテインメントにしようとしていた。なかでも、大喜利は大当たりとなった
 
大喜利自体は以前から寄席芸であったもので、噺家たちが謎かけに当意即妙で答えるのを楽しむものだった。だが談志の奴は、「その答えを司会が理不尽に評価して、さらに笑わせる」というしかけを組みいれた。
 

・ところが、俺が座布団運びを始めたら、すぐ問題が起きた。観客に子どもたちが多くなり 、ウルトラマンのアラシ隊員だ!」と騒ぐのだ。芸で食べている人は筋違いなことで会場が荒れるのを嫌うし、放映する日本テレビは他局のドラマ名を収録で叫ばれるのを、やはり嫌う。なら俺を座布団運びから降ろせばいいのに、談志は俺を手放す気はないらしく、とんでもない解決策を言いだした。
 
「おめえ、『アラシの石井伊吉』じゃない奴になっちまえ」
 
要は、石井伊吉は『ウルトラマンでは科学特捜隊のアラシ隊員役だが、大喜利では座布団運びの誰それ役を演じているという理屈にするのだ
 
「じゃァ、ウルトラマンの怪獣にも負けないやつで、蝮」
 
 
そしたら、五代目三遊亭圓楽さんまで、面白がって口を挟んできた。「ただの蝮じゃァつまらねえよ。いっそ毒もつけて、『いっそ毒もつけて、『毒蝮』でどうだい」
 

 
下の名前は、以前『談志専科』でやったコントからつけられた。談志がバカ殿様、俺が
家老という設定で、その家老の名が「田中三太夫」だったのだ。かくして毒蝮三太夫、ここに誕生だ。
 
・のちに談志は「『笑点』は俺がつくった傑作だが、蝮も俺がつくった傑作だ」とまで言ってくれた。
 
「捨てる神あれば拾う神あり」。『笑点』を降りたその十月から、俺はラジオ番組に出ることになったのだ。現在まで続くTBSラジオ『ミュージックプレゼント』の始まりだった。
 
「汚ねえババアだな」「ジジイ、死ぬのを忘れちゃったんじゃねえか」「まあ、あと二年は大丈夫だな」
 
そんな言葉を連発するのに、以前よりもずっと多くのジジイ、ババアが、俺の中継を見
に来てくれるようになった。元は小学校の校長先生だったというジジイも、俺にファンレターを書いて送ってくれた。 百歳になるそのジジイに対して、俺は現場で「あと二年は大丈夫」と、いつもの言葉を使ったんだが、手紙にこう書いてくれていた。
 
「人に笑われるなと学校で教えてきました。あと二年またでも、今日はマムちゃんにからかわれて、楽しかった」
 

いいなあ。江戸っ子だなあ。マムシさん、いいなあ。このキャラ!!!いつまでも元気で毒舌を吐いてほしいなあ。オススメです。(=^・^=)