戦後最大の怪事件でもあり、「国鉄三大ミステリー事件」のひとつ、「下山事件」のことは私も聞いたことがある。日本が連合国の占領下にあった1949年(昭和24年)7月5日朝、国鉄総裁下山定則が、日本橋三越から忽然と姿を消し、翌日未明常磐線の線路上で轢断死体となって発見された。自殺か?他殺か?戦後最大の怪事件の謎は、50年後のいまも解かれぬまま、関係者は鬼籍に入っていった。
ある人物から著者が得た重大な新情報で、この怪事件の真相に迫る!そのエッセンスを紹介しよう。
・「…職業的使命感じゃないんだよね。真相を知りたいだけなんだ。知るまでは死にきれない。矢田さんともよく、俺たちは下山病患者だなと笑い合っていたのだけど」
「下山病?」
「この事件に関わると、たいていの人は感染します」
言ってから斎藤はもう一度微笑する。白髪が静かに揺れる。取材メモをぱたりと閉じる。
「たぶん森君も感染しますよ。いずれワクチンが必要になります」
「…ワクチンはあるんですか」
「まだ入手できていません。よかったら一緒に探しましょう」
・「下山事件の核心をつかんでいるつもりだが、アメリカと日本が戦争でもしないかぎり、口が裂けても言えない。消されるのが怖いからだ」
・「だけどさ、これだけは森さんに知って欲しいんだよ。確かにあの時代はいろんなことがあった。誰もが生き抜くことに必死だった。兄貴だって胸を張って言えないようなことをしたことはあるかもしれない。だけど人を殺めるようなことはしていないと俺は信じている。……仮にもし、仮にだけど下山事件がなかったら、今の日本はどうなっていたと思う?もしかしたらドイツや朝鮮半島のように南北に分割されていたかもしれない。少なくとも今の日本は大きく形を変えていたはずだ。結果としてそれが良かったのかどうか、俺にはわからない。でも少なくとも、今のこの豊かさは望めなかっただろう。
…まずい言い方しちゃったな。まるで認めたみたいだなそうじゃないんだよ。あくまで仮定の話だよ」
うーん…スゴイなあ。スゴイ時代だったんだなあ。事実は小説より奇なり、だね。合わせて手塚治虫の「奇(あや)子」も読むとこの事件の真相はよくわかる。ヤバい…私も「下山病」にかかりそうだ。オススメです。(・∀・)