「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「監督」(海老沢泰久)

 

野球ファンなら知っているが、万年Bクラスのヤクルトスワローズを初優勝に導いた名将、広岡達朗。その後、西武ライオンズの黄金時代を作っていく。

しかし、どんなやり方をやったのか?「管理野球」のひとことで片付けられない秘密がこの本で語られている。あっ!ヤクルトじゃなくて「エンゼルス」ね!(笑)(=^・^=)

 

「万年最下位のエンゼルスを日本一のチームに作りあげた監督広岡達郎は常勝ジャイアンツに対する怨念とも呼べる激しい闘志に燃えた。この物語の登場人物および組織はすべて架空であり、現存する、あるいや過去のいかなる実在人物および実在組織ににていようとも、それはまったく偶然である。この物語をもう一人の広岡達朗に捧ぐ」そのエッセンスを紹介しよう。


すぐれた監督、またはコーチの資格として、アル・カンパニスのドジャースの戦法』は、
つぎの五つを数えている(と渡会洋一は書きはじめていた)(。

 
一 選手とチームとを統率する能力
 
二 すべての場合に、選手たちにベストをつくさせる能力
 
三 野球の基本を教える能力
 
四 ゲームと作戦とに対する十分な知識
 
五 その上に勇気、すなわち自己の信念なりインスピレーションなりを実行にうつす勇
 
しかし、今やわれわれはこの五つの項目を読むためにドジャースの戦法」をわざわざひらいてみる必要はまったくない。そのかわりにエンゼルスの監督である広岡達朗を思い浮べればよい彼はこの五つのすべてを完璧に備え持っている。現役時代とまったく変らない鍛えられたしなやかな体から発散する洗練されたムードを加えれば六つである。 
 
広岡が監督に就任したことによって、エンゼルスは完全に変ってしまった。それは最近十五ゲームのエンゼルスの戦いぶりが何よりもよく証明している。エンゼルスはどこといって特徴のないチームである。もし、強打を誇るチームなら一イニングに大量得点を狙う作戦がとれるし、スピードのあるチームなら積極的に足を使った攻撃、盗塁やヒットエンドランが多用できるだろう。またすばらしい投手陣に恵まれているなら確実に一点ずつ得点するゲームができる。
 
そのいずれの長所もエンゼルスには全体として備わっていないのだ。しかし、エンゼルスはこの十五ゲームになんと十二勝を他チームからもぎとり、しかも現在、チームタイ記録の九連勝中なのである。この結果、不振のタイガースを抜いて長らく居坐りつづけた最下位を脱出したが、ペナントレース終了までの残り六ゲームの成績いかんによっては、四位のドラゴンズと人れ替るチャンスもでてきた。
 
この現象を選手の一人一人が頑張ったからだ、とある人はいうかもしれない。たしかにそのとおりだ。しかし筆者にはこういう疑問が湧く。それなら選手たちは二カ月前までどうしてそうしようとしなかったのだろう。
 
・筆者は昨夜のゲームの前に、エンゼルスのベンチへ行き、選手たちと話をした。その中で筆者は多くの選手たちに、なぜきみたちは急激に変貌してしまったのか、と訊ねてみた。するときわめて興味ある答が返ってきた。彼らはおおむねこういったのである。
 
「こうすれば勝てるってことが分ったからさ。もう負けることには飽き飽きしたからね」
 
筆者は現役を引退して選手を取材する立場になってすでに十三年になるが、エンゼルスの選手の口からこんなすばらしい言葉が出るのをきいたのは初めてだった。これまで長いあいだエンゼルスの選手たちにヤル気を起させることは、誰が監督になろうとも、日本プロ野球界の不可能事だと考えられていた。じっさい彼らは二カ月前まで、おおっぴらに監督に反抗、あるいはサボタージュを行い、自分たちが勝手気儘な野球ができるようにその監督とさまざまな取り引きまでしていたのである。しかし、いま彼らは変った。広岡が監督になることによって、彼らは変ったのである。
 
三十年代の水原、三原、鶴岡の三大監督時代はすでに遠く過ぎ去り、四十年代を一人占めにした川上もいまはもうユニフォームを脱いでしまった。これからはどんな監督の時代になるのか。それは分らない。しかしこれだけははっきりしている。広岡達朗がその一翼を担うことだけは。そして来シーズンはおそらくその最初の兆が現れるにちがいない。

 

・「いいか、優勝チーム以外には、オフなんてものはないんだ。こんなボロクソのチームが人並みにオフを楽しんでいたらどうなるんだ。バカタレが。オフはない。よく覚えておけ」

 
「きみが怒る気持はよく分る。きみのファイトはむしろ賞讃されるべきだ。だがきみ は自分できょうの調子をどう思う?」
 
ヘミングウェイはびっくりしていた。彼は大リーグでいままで何人もの監督やコーチの下で働いてきたが感情的な人間を前にしてすこしも感情的にならない監督を見るのははじめてだった。 彼の知っている連中は、こういう場合、クビだと怒鳴るか、ファームに落ちたいのかね、 かのどちらかだった。ヘミングウェイは仕方なしに答えた。
 
「よいとはいえない」
 
「わるかったな」
 
と広岡はつづけた。調子のわるいきみを先発させたのはわたしだ。責任はわたしにある。きみの調子を十分に見極められなかったために、きみに恥ずかしい思いをさせてしまった。このつ監ぎからはちゃんと見極めてから使うようにしよう」
 
ヘミングウェイは、不意にやたらと怒鳴りちらす大リーグの監督よりも、目の前の日本人の監督が怖ろしく思えてきた。永遠に調子がいいと判断してくれなくなるのではないか?

 

いいなあ。野球評論を自分で書いていたとは!?広岡の守備、見たかったなあ。野球ファン必読っ!超オススメです。(=^・^=)