「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「ニッポン清貧旅行」(東海林さだお)


マンガ家の東海林さだおは天才である。マンガだけではなくエッセイも秀逸だ。ひとつのささいなことをこれほどくだらなく掘り下げることができる人は貴重だ。(・ω<)


さて、「丸かじり」シリーズから離れて、今回のテーマは「旅」


キーワードは「みじめ」、合言葉は「ひがむ・ねたむ・そねむ」。貧乏旅行の道を究めるエッセイの代表的なものを紹介しよう。


【現代貧乏旅行】


いま、貧乏が贅沢だ。ひと昔前まで、貧乏はそこら中にあった。日本中にあった。
いま、貧乏は貴重である。体験しようと思ってもなかなかできるものではない。


いま、貧乏するのは簡単だ。貧乏旅行をすればいい。うんと安い旅館に泊まればいい。うんと安い宿賃のところに泊まれば、宿の人や他の客にさげすまれていろいろ辛いことがあるにちがいない。とうことでアラタマ青年と2人で条件を挙げていった。


部屋:狭い、汚い、暗い、ゆがんでいる。
布団:薄井、硬い、小さい。
食事:まずい、足りない。みすぼらしい。
温泉:狭い、汚い、見晴らしがわるい、ぬるいチョロチョロ。


この旅行のコンセプトは「貧乏」
キーワードは、「みじめ」
合言葉は、「ひがむ」「ねたむ」「そねむ」これでいこうということになった。


この条件にどうやら合格しそうな温泉が次第に浮かび上がってきた。
厳しい選考に耐えぬいて千鹿谷鉱泉(埼玉県秩父郡吉田町)というのが堂々貧乏一位の栄冠に輝いたのであった。


部屋も廊下も、歩くたびにミシミシ音を立てて揺れる。
「合格だね」「ミシミシがこたえられません」二人でうなずきあう。
階段と廊下は、貧乏指数が極めて高く、貧乏旅行の合格ラインを充分突破している。案内された部屋は八畳もある。ぼくらの条件、「狭い」に合格していない。
が、他の条件、「汚い」「暗い」「ゆがんでる」は、すべて優秀な成績で合格していた。


…行ってみたいなあ…千鹿谷鉱泉…。味わってみたいなあ…オススメです。(・ω<)