日本語の学校 声に出して読む〈言葉の豊かさ〉 (平凡社新書 463)
- 作者: 鴨下信一
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2009/05/16
- メディア: 新書
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日本語って美しいよね。(^◇^)ここでも何度か紹介しているけど。
その日本語の良さは「声にした言葉」の中に詰まっているんだって。そういえば、朗読とか声に出して読む日本語とかも近年は流行っているよね。
日本人は、いかにして言葉に感情をのせ、人の心に伝えてきたのか。消えかかる「美質」に、この本の著者であり、日本を代表する演出家・鴨下信一氏が語る。『岸辺のアルバム』、『ふぞろいの林檎たち』、『高校教師』等々演出しているんだって。スゴイ!(>_<)
取り上げられているのは、皆いい文章なんだけど、その中でも一番印象的だったのが、川端康成氏が絶賛した、昭和39年の東京オリンピックのマラソン銅メダル・円谷幸吉氏が自ら命を絶ったときに残された遺書。その全文を紹介しよう。
『遺書』 円谷幸吉
父上様、母上様、三日とろろ美味しゆうございました。干し柿、餅も美味しゆうございました。敏雄兄、姉上様、おすし美味しゆうございました。克美兄、姉上様、ブドウ酒とリンゴ美味しゆうございました。
巌兄、姉上様、しめそし、南ばん漬け美味しゆうございました。喜久蔵兄、姉上様、ブドウ液、養命酒美味しゆうございました。又いつも洗濯ありがとうございました。
幸造兄、姉上様、往復車に便乗させて戴き有難うございました。モンゴいか美味しゆうございました。正男兄、姉上様、お気を煩わして大変申しわけありませんでした。
幸雄君、秀雄君、幹雄君、敏子ちゃん、ひで子ちゃん、良介君、敦久君、みよ子ちゃん、ゆき江ちゃん、光江ちゃん、彰君、芳幸君、恵子ちゃん、幸栄君、裕ちゃん、キーちゃん、正祠君、立派な人になって下さい。
父上様、母上様。幸吉はもうすつかり疲れ切つてしまつて走れません。何卒お許し下さい。気が休まることもなく御苦労、御心配をお掛け致し申しわけありません。幸吉は父母上様の側で暮らしとうございました。
…カア〜!!!(T_T) 何度読んでも泣ける…。円谷氏の無念が胸を刺す…。名文だよね…。周りの期待とかプレッシャーに押しつぶされたのかな…。律儀で実直な円谷氏。時代背景も感じ取られるね。(>_<)
円谷幸吉
http://www004.upp.so-net.ne.jp/kuhiwo/dazai/tsumuraya.html