![殺人の門 (角川文庫) 殺人の門 (角川文庫)](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/51Eq8h2ZNlL._SL160_.jpg)
- 作者: 東野圭吾,角川書店装丁室高柳雅人,角川書店装丁室
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2006/05/26
- メディア: 文庫
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ニュースを見ていると思わず他のチャンネルを回してしまう。なぜ人は罪を犯すのだろうか…、そこまで追い詰められるということはどういうことだろうか…。疑問に思ったことはないだろうか?
本書は、p.618ページの大作だが、人はいかにして人を騙し、騙され、殺意を抱き、殺人者になっていくのか。人を殺すということはどういうことなのか? 心の闇に潜む殺人願望とは? 二人の男のゆがんだ友情とは?淡々と語られている。ほとんどの人には無縁のことだろうが、小説という中でその人の心理を学べるということでは深い内容だ。
主人公・田島和幸は、歯医者の息子として生まれながら、両親の離婚、事業の失敗など転落の人生を歩んで行く。そしてそのきっかけはいつも倉持修という男。この男に人生を狂わされてきた。そして数多くの人が不幸になった。こいつさえいなければ。こいつだけは生かしておけない…。誰かが殺らなければ…。でも私には殺すことが出来ない。私に欠けているのはいったい何なのだろうか?
刑事は言う、『殺人には、動機も必要ですが、環境、タイミング、その場の気分、それらが複雑に絡み合って人は人を殺すんです。さらに何かの引き金が必要なのかも知れませんね。それがない限り殺人者となる門をくぐることは出来ないということです。もちろん、そんな門はくぐらない方がいいんですけどね…』
『ついカッとなって』という表現はまさにそれ!その瞬間には、相手の息の根を止めること以外に何も考えられず、相手を殺した後のことまで頭が回らないのだということ。
東野圭吾のリアルな描写力には恐れ入る!さすが直木賞作家!特に後半からラストは一気にたたみかけて読ませるね〜。
そしてこの物語は、全く異なる見方も出来る。人を突き動かす強烈なコンプレックスの強さ!そしてもし、倉持修のこの才能(?)がプラスに働いたとしたらどんなに人生を豊かに出来たのだろうか?人を幸せに出来ただろうかという見方だ。
『口のうまい男だったよね。この男にかかると、どんなクズ鉄だって金みたいに思えてくる。それでどれだけ損をさせられたか。だけど、今振り返ってみると楽しかった。この男のおかげで変わった夢をいくつも見られた。こんなことになってしまって本当に寂しいよ。』