
いいなあ。やっぱり岸本佐知子さん。岸本節は健在っ!!!読んでいるだけでハッピーになる!そのエッセンスを紹介しよう。
【カバディ性】
・今から二十年ぐらい前、 友だちの家に数人で集まって話をしていた。
どういう流れでそうなったのだったか、 話がカバディのことになった。 ほかの誰もカパディの存在を知らなかったので、私は説明した。 数人ずつ二手に分かれて競うスポーツであること。 守備の側が手をつなぎ、攻撃側は「 カバディカバディカバディカバディ」 と言いながら鬼ごっこのように相手をつかまえること。 息が続いているあいだだけ攻撃できること。
私の説明を聞いて、全員爆笑した。なにそれー。 そんなのあるわけないじゃないー。 ほんっとヒマだよねー。何なのカバディってー。
全員腹をかかえて笑った。いやいやいや。ないわー。 よくそんなの思いつくよねー。キアヌかっこいいよねー。
その友人は「ああ、あるよねカバディ。 インドが発祥のスポーツなんでしょ」と言った。 するととたんにみんな「あ、そうなんだ」とあっさり納得した。
私は釈然としなかった。 なぜ私があれだけ力説しても誰も信じようとしなかったのに、 別の人が同じことを言うと無条件に信じるのか。 だが話題はすでに別のことに移ってしまっていた。 のちに私の中で「カバディ事件」 として記憶されることになる悲しい出来事である。
考えてみると、私は待ち合わせ場所に行くと「電車、 ちゃんと乗れた?」と訊かれることが多い。「 毎朝何時に起きてるの?」とか「ごはん、作ることあるの?」 とかもよく訊かれる。だが、 ふつう大人はこういうことを訊かれるものだろうか。 私の毛穴から、 いや存在そのものから発散される、 人としての圧倒的な信ぴょう性のなさ。その「カバディ感」 というか「カバディ性」というか「カバディさ」というかが、 人をしてそんな質問をさせてしまうのではないか。
このあいだネットを見ていたら、 高校生が世界的な大発見をしたという記事が出ていた。 足の裏を消毒して雑菌を殺すと、 蚊に刺されにくくなるのだそうだ。
彼は、妹が自分の何倍も蚊に刺されやすいことを不思議に思い、 原因を究明するべくさまざまな実験を行った。その結果、 蚊が妹の脱いだ靴下に激しく引き寄せられることを発見した。 そしてついに、蚊に刺されやすい体質の人の足の裏には、 人より多くの雑菌が生息していることを突き止めたのだという。
すばらしい。生活の役に立つうえに、誰にでも手軽に実行できる。 彼の妹が学校でからかわれないかだけが少し心配だが。 蚊に刺されやすいあの人やこの人に教えてあげたい。でも教えない。カバディの二の舞はごめんだ。 みんな蚊に刺されるがよい。
きしもと・さちこ(翻訳家) 「ちくま」10月号
やっぱり「何をいうか」じゃなくて「誰がいうか」だよねー!オススメです。(=^・^=)

