「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「オオクワガタに人生を懸けた男たち」(野澤旦伸)

この本はいい。感動だ。今年は特に感動する本に出会うことが多いなあ。「人生を懸ける」なんて。しかもオオクワガタに!!!

 

「オオクワガタとは男なら一度は手にしてみたい憧れの虫であり、自然界で見つけるのは極めて難しい。本書は、オオクワガタ採集家集団「インフィニティ・ブラック」のメンバーたちと行動をともにし、その活動を追った著者によるノンフィクション。幻とまで呼ばれるような存在に、いかにストイックに向き合っているかを克明に書き記す。
解剖学者・養老孟司氏とチームリーダによる対談も収録」そのエッセンスを紹介しよう。

 

・たかが虫採りというなかれ。とんでもない凄腕のクワガタ・ハンターたちがいるらしい――。そんな噂が耳に入ってきた。マタギのような脚力で尾根から尾根へと移動し、人も通わぬ山奥に入っていく。人間離れした嗅覚をもち、真夜中でもスルスルと木に登る。熊どころか心霊現象にも怯まない。

 

・都市伝説みたいな話だが、この男たちは実在する。そして驚いたことに、彼らは苦労の 末に見つけた。獲物を「採ることが目的ではない」と言うのだ。虫を売ってお金に変える気はさらさらない。

 

・カリスマリーダーが束ねる集団名は「INFINITY ∞ BLACK」。仲間内には掟が存在し、裏切った者は破門となる。なんだか物々しい連中を想像してしまうが、素顔は虫好きなオッサンたちの集まりだ。ただ、彼らは常人には見ることのできない景色を知っている。メンバーが探し求めるものはただ一つ。昭和の少年が憧れ続けた日本昆虫界のトップスター、オオクワガタだ。

 

・「え?それってホームセンターに2000円で売っている虫でしょ?」と言うのはやめてくれ。確かに今では飼育が増えて、「王様」も安価になってしまった。 だがここで取り上げるのは、真の天然オオクワガタのことである。昭和の時代、それは 「黒いダイヤモンド」と呼ばれ、庶民には手の届かない存在だった。

 

・高級デパートの伊勢丹の当時の値段でも、小さなものが数万円、大きなものは10万円を超えるのが相場だった。筆者のような地方住まいの者には、王様の顔を拝むことさえできなかったのである。 当時市場に出回っていたのは、プロが山から採ってきた限られた天然個体だった。プロというのは、採ったクワガタを売って、生計の一部に当てていた人たちである。オオクワガタの実際の生態・生息地はほとんど知られておらず、採集は極めて難しかった。昆虫少年がいくら勇んで森に向かっても、その痕跡すら見つからなかったのである。 

 

・天然個体の価格が暴落するのは、1990年代中頃からのことだ。飼育技術の向上で量 産と大型サイズの作出が簡単になった。自然界では70ミリを超えるオスの個体は稀であるが、飼育では簡単に出せてしまう。現在の飼育レコードは90ミリを超え、これは天然レコードを10ミリ以上も凌ぐ。

 

・「この日本にはまだ人間が踏み入れたことのない自然林が多く残されている。その中でひ っそりと生き抜いているオオクワガタの姿を、自分の目で確かめたい」

 

・本書は今の時代に、人生を懸けて天然個体を探している男たちの物語だ。世間の価値基準に揺れることなく、自分の好きなことを貫ける大人が、今の時代にどれだけいるのか?彼らの言葉に耳を傾けてほしい。男たちを突き動かすのは、子どもの頃からのオオクワガタへの憧れと冒険心である。焦がれども、焦がれども、出会うことができなかった想いは、永遠に冷めない恋心になった。その気持ちは、もはや飢えといってもいい。夜、瞼を閉じると遠い山の中で、大木のウロから顔を出すオオクワガタの姿が 浮かぶ。そうなると明日が仕事であろうと、衝動を抑えることができない。

 

・「ちょっと山に行ってくる」ためら 妻にそう言い残して、愛車にキーを差し込む。どんな辺境だろうと、途中に何が待ち構えていようと躊躇いはない。中央道、東北道、関越道をひた走りながら、今夜会えるかもしれない相手に想いを馳せる。妻には「本当に虫なの?」と浮気を疑われながら。 彼らが山での実体験で得た知識、観察眼、思考には、驚きの連続だった。読者はどんな 図鑑にも、学術書にも書かれていない、オオクワガタの秘密に直面することを約束しよう。

 

・「たかが虫」という認識が、大きく変わっていくはずである。「日本が世界からとり残されつつある時代に、なんで虫採り?」と言わないでくれ。しばし、筆者と一緒に愛すべきドアホウたちの背中を追いかけてほしい。

 

・「東北の冬山はマジでキツいですよ。下手したら遭難するかもしれませんが、いいんですか?」

 

・「手当たり次第に見ていたら、人生がいくらあっても足りませんよ」広大な山の中で虫を見つけるには、何よりも判断力とスピードを重視するという。1日にどれだけの面積を歩けるか、その中で何本の木を調べられるか。インフィニティーのメンバーが目指しているのは、新たな生息地の発見だからである。もし、オオクワガタを欲しいだけなら、多産地と呼ばれる有名ポイントに行けばいい。彼らの採集技術と知識をもってすれば、ほぼ確実に見つけることができるだろう。だがそれは望むことではないと言うのだ。

 

・虫を探して三流

材を探して二流

空間を探して一流

風を感じて超一流

 

・「オオクワガタはエサを食べるよりも、身を隠すことを優先する虫です。体がすっぽりと潜れるウロや大きな樹皮のめくれがあり、そこから樹液が出てい ることが絶対条件になります。

 

・「オオクワガタは常に一等地を目指すんです」なんとタワーマンションの高層階にしか住めないらしいのだ。とにかく棲む場所に異常なこだわりをもつ。同じ潜洞性のクワガタでも、コクワガタやヒラタクワガタは入る穴がなければ、小さな窪みでも身を寄せているが、オオクワガタは決して妥協しない。人間でいえば間取りの良い部屋(ウロや樹皮めくれ)が 空いているだけでなく、そこが昔からの高級住宅街(二次林ではなく自然林)でなければならない。食事(樹液)は外食せずに家の中に限る。さらに家の前に目障りな建物があるとダメ (開けた空間が好き)で、日当たり、風通し全てが条件となる。強いていえば3階建て以上(木の高い場所)が好きで、周りに竹林があるとさらに良い。

 

・サイズは約60ミリで、無駄のないスリムな体のラインに目を奪われる。それは自然界が研ぎ澄ました究極のフォルムだ。「混じりけのない、純粋なこの産地の形状だと思います」「混じりけのない」というのは、放虫されたオオクワガタ、またはそれらと交雑した個体ではないという意味だ。 多産地である山梨県でも、この地域は分布が薄く、採集例をほとんど聞かないという。

 

・キクリンは一度のめり込むと徹底してやらないと気が済まないタチである。妻には最初に「必ず採れるまでやる」と宣言した。採れないのは自分の力不足でしかないから悔しくて仕方がない。周りからは、仕事が終わって毎晩山梨に向かう様子に「そんなにしてまで 欲しいの? 採って売るつもりなの?」と呆れ気味に言われた。いや、お金なんかじゃない。オオクワガタが欲しいだけならホームセンターに行けば簡単に買えるし、山梨に行く交通費の方がずっと高い。

 

・「本当にクワガタ採りに行っているの? 浮気しているんじゃないの?」

 

彼女にしてみれば、もっともな疑問である。むしろ、よくそれまで許していたものだ。 キクリンは自分のオオクワガタへの熱烈な想いを語った。妻は信じてくれたが、こう言っ「そこまで頑張っても見つからないんだから、いないんだよ。もう諦めなよ」確かに自分も存在を疑いたくなって いた。でも、こう言い聞かせた。

 

・「すげえ・・・・・・、本物だよ・・・・・・」子どものように純粋な感動を見せる様子に、男は好印象をもったようだ。

 

・「人間は体力的にも精神的にもつらいと感じると、自分でブレーキをかけてしまう。もう一歩踏み出すことで見えてくるものがあるのに。運がなかったと言う人もいるけど、そうじゃない。運をいかに引き寄せられるかは、自分の行動にかかってくる」 

 

・「彼はいい意味で壊れている(笑)思い立ったら夜中であっても、急な朝であっても即行動する。この先にオオクワがいるんじゃないかと思ったら、どこまでも止まらない。それでいて、家庭のこともちゃんと何も言わせずにやっているんですよ。当時から結婚して いて子どももいましたから。とにかく吸収力が高くて、応用力もすごい。最初はライバル 心もありましたけど、だんだんなくなりました。リスペクトですね。僕はあまり年下とかは認めたくなかったんだけど、こいつ、すごいなって思えたんです」

 

・普通の人ならまず歩きやすい場所を探し、その周辺から調べていくのだが、白村は最初 から山の尾根を見て何かを感じているようだった。樹層を見ながら方角と照らし合わせて、「ここを登ろう」と人が踏み入れたことのない場所に入っていく。 「この地形ならこの方角、標高、斜面の向きというのが瞬時にわかるようです」 白村の歩くスピードは速い。途中に立ち枯れがあっても、ほとんど見向きもしなかった。僕は木を見ている。でも白村さんは山を見ていた。

 

「なぜここにいたのかを考えろ。そしてこの場所の風景を覚えていけ」 オオクワガタが産卵するには必ず条件がある。材となる木の種類、それに合った菌類、腐食具合などが挙げられるが、それらを満たす朽ち木は山の中にいくらでもある。一つ一つ調べていたのでは、何年経ってもたどり着かない。この日を境にキクリンの中には、それまで見えていなかった世界が広がっていく。

 

「虫たちの視界に最もよく入る場所はどこか?周囲の山からの力が、合わせ鏡のように集められているのはどこか? そこに最高の産卵木があって、それでもオオクワガタが入 っていなかったら、この一帯には生息していないことを意味する」

 

・彼と行動を共にして、オオクワガタと対峙するということは、大自然に挑むドン・キホーテのように思えた。人間が自然相手に残せる足跡は、小さな1点にすぎない。無力、打ちひしがれる日々。それでも明日には、また見知らぬ地へと心が馳せていく。

 

・虫仲間が彼を認める一番の理由は、とにかく自力にこだわることだ。誰かに場所を教えてもらうのではなく、自分の力で生息ポイントを見つけ出す。採集者の多くは空振りを避けるために、実績のある場所を選ぶが、虫オタは虫をゲットすることが目的ではない。誰もたどり着いたことのない生息地を、自分の力で見つけたいという想い。その探究心は初期から強く、一匹狼のスタンスを築いていく。

 

・「よくSNSとかにオオクワガタをたくさん採った画像をアップしている人がいるんです けど、それは採れるところに行っているのだから当然だと思う。むしろ開拓にかけて、10連敗、20連敗、食らっている人の方がよっぽどすごいです」

 

・そこまでして、オオクワガタの新規開拓は捨て難い魅力があるのか?「もうやばいっすよ!初めての場所で見つけたときって、涙出るくらいの感動です。キターー って一人で叫びますね」

 

・虫オタはグループを跨いだ交流をもっているが、それぞれの情報を外に漏らすことは決してない。採集家にとって最も恥ずべき行為とされるのが、人から教えてもらったポイントに勝手に入ったり、その場所を第三者に教えたりすることだ。それらは「場を荒らす行為」とみなされ、軽蔑される。インフィニティーではそうした行動をとったものは破門され、その後の交流は絶たれる。

 

・彼らの言うレア産地は、一般の採集者に伝わっても、まず見つけることはできない。だが、トップクラスの者が気づけば、限られた個体数で生き延びてきたオオクワガタが、採り尽くされる可能性がある。“場が荒らされる”というのは、限られた高いレベルの中での話なのだ。

 

・「よくクワガタで家庭を壊して離婚する人がいるって聞きましたけど、典型的な例ですよ」

 

・「 えっ、えっ?」かき出し棒で手繰り寄せ、夢中で指先でつかむ。がっしりとした横幅、黒く美しい光沢。紛れもない天然のオオクワガタだった。

 

「おった、ほんまにおった・・・・・・」

 

頭がカーッと熱くなり、心臓が破れそうなほど脈打つ。夢中でその個体をポケットにしまうと、ズルズルと幹を下りた。ロープを解くと、足がふらふらになって尻もちをついた。 汗でズボンが濡れ雑巾のようにベトベトだ。ポケットからオオクワガタを取り出して眺める。信じられない。言葉が出ない。 次の瞬間には目から熱いものがこぼれ、わけのわからない呻きが漏れた。誰もいない山中で、自分一人だけが味わう達成感。これまでの人生で、たどり着いたことのない至高の感情に支配されていた。自然と涙があふれ出た。汗で体の水分は出し尽くしたと思ったの に、涙はまだ出るのか。もうこんな経験はできないだろう。一生に一度の、ファースト・オオクワガタだった。

 

・「ほんまにおった、もうその想いだけですね。中型のオスで、本当にいい虫だった。これが野外のオオクワガタなんだって。あのときを思い出すだけで、目頭が熱くなる。それまでは何度も幻を追い求めているんじゃないかって迷うこともあったけど、やっと確信がもてた。

 

・その境地に達するためには、「オオクワガタにどれだけ飢えているか」ということ、そして「見つけても所有したいと思わない」ことが前提だという。

 

「そこから技術、感性、時間、プライベート、仕事などが複合して、その条件がクリアされた人だけが初めて臨める領域。自分はまだまだ、その域に達していない」

 

・どんなに疲れていても、クワガタの姿を見れば力が蘇るという。 

 

・「少しでもなめてかかったら、オオは採れないんですよ。キクリンさんも言ってますが、本当にそうやなと思う。ビビるくらいでやっていかないと。願を懸けるわけじゃないですけどね」

 

・僕が2頭目のオオクワガタを採った一帯が、もうすぐなくなってしまいます。始めるのが5年遅かったら、その場所で出会えていなかったし、生息していたことを推測することもできなかった。そう思うと、年々ハードルが上がっているのを感じます 」

 

・最初の頃は、苦労して見つけた感動をいろいろな人に共有してもらいたかった。でも99.9%の人には、わかってもらえないんですよ。これだけ歩き、死にそうな経験までして採ったものを、『すごいね』の一言で片付けられたら、『本当はわかってないだろう?』って気持ちになる。でも今思うと、それが当たり前なんですよね。その人たちの中にはない経験であり、価値観なんですから。インフィニティーの人たちに出会って、本当にわかり合える存在ができた。そして自分がまだまだだということにも気づいて、これまで何を恥ずかしいことしていたんやと思いました」

 

 ・「採集とは、ひたすら歩くことです。あまり歩かない人は採れないし、最初に車に戻ってきてしまう

 

・虫オタ 9割以上負けですね。でも、90%以上負けていても、見つけたときの感動がすごい。その1発だけで今までの負けを全部忘れる。あと、別にそんな苦とも思っていない。 人を大好きになる気持ち、トキメキがずっと続く気持ち。

 

例えば人間で言えば、彼女と付き合い始めた感じですよ。 恋愛でよくあるのはやっぱり最初の頃は、盛り上がるじゃないですか。でも、ある程度過ぎると落ち着くんですよね。それをずっとトキメキ続けられるっていうのは、ぶっちゃけビックリしました。

 

・気持ちを病むのは、だいたい人が原因なんですよね。虫採りってそういう意味では、対虫だから、それに向かってアプローチしていくと 周りの人を気にしないじゃないですか。仲間で行くこともあるけど、結局は個人種目みたいなところがある。だから精神衛生上すごくいいと思うし、山に行くといろんなことを学 べるから。空気の匂いとかで、季節がわかるじゃないですか。オタさんたちと関わっているときは負のオーラを感じない。

 

・人それぞれだと思うんですけど、好きなことをやっていると人生が豊かになりますよね。やりたいことのために仕事を頑張る。そしてやりたいことにお金を使う。それが、一番人生を豊かにすると思うんですよ。お金だけ持っててもしょうがない。その稼いだお金を何に使うかっていうのが一番大事なところなんですよね。今、趣味としてやってるオオクワガタ採集というのは、自分にすごく合ったものを見つけることができたなって。

 

・オオクワ採集やったことによって、年齢も性別も違う人と出会えた。例えば大企業の社長さんとかには、オオクワやっていなかったら絶対知り合うことも、なかった。老若男女、さまざまな方、どんな人にも合わせられるような人生としてのスキルが身につけられましたね。自分はオオクワガタに育ててもらってるんですよ。 永遠に恋してる、ときめいているんですね。

 

・本当に常に勉強させてもらってる。こうやっていろんな人と話せるのもすごい楽しいし、虫以外のことでもなんでも勉強になる。仕事であったり、美味しい食べ物だったり。でもそうなんですよ。本当に人生が豊かになる。

 

・いろんな人の考えを聞けるというのは、虫の世界に入って思いました。 虫オタ それまでは井の中の蛙じゃないですけど、狭い世界の中で人の話を聞いてました。 でも虫をやったことによって、いろんな意見やこういう考え方があるんだと気づかされた。あとコミュニケーション力がついて、仕事上のお客さんとか、どんな人にも対応できます 本当に勉強させてもらってます。感謝しかないですね。

 

・人生勉強ですよ。これやってなかったら、何やってたんだろう?っていう。

 

・私は思うんですけど、やっぱり死ぬときは死ぬんですよ。死ぬときは、どんな状況でも死ぬ。生きているってことは、まだ生きてていいんだと思ってる。 だから、なんか日頃の徳を積むために、一生懸命日々頑張って生きています。

 

・世間一般からしたら、僕たちがやっているのは虫っすからね、本当に。でも、その世間一般が虫の偉大さをわかってない。虫がどれだけ重要な役割をもっているかを世間がわかってなさすぎると思う。人口より虫の数の方が圧倒的に多いんですからね。 比べものにならない。我々は自然に生かされていることを、人間様じゃねえんだぞって、いつも思ってる。災害が来るたびに、どんなに無力かって思いますよ。

 

・虫ケラなんて呼んじゃ、失礼ですよ。

 

・「山に行くと五感が冴えるんです。疲れるんですけど、体の状態がいいんですよ。瞬発力が上がるというか。役者としてはもってこいな状態になる。小さな生き物を見る目、虫の羽ばたきや鳥の声を聞く耳、樹液や菌類の香りを嗅ぐ鼻、全てが研ぎ澄まされる。夜空を見上げても、本当はこんなに星の数はあるんだって。僕にとってはすごい大事な時間なんです。間違いなく芝居にも良い影響を与えてくれています」

 

・「知りたいんでしょうね。そこに本当にいるのかどうかを。今まで人間が一度も出会うことなく、何千年何万年という時間を生き抜いてきた生物が、この森のどこかにいるかもしれない。それに遭遇できたなら、もうヤバいです。脳内麻薬みたいなものがドッと吹き出して、言葉にならない感動に全身が震える。小さいときからずっと抱いてきた渇望が一気に噴出する。

 

・「1日山を歩いても、マップで見たら『たったこれだけか』と思う。行きたい場所を全て 巡るのには、いったい人生が何度あればいいのだろうか。そうした中で、1頭のメスが飛んだ軌跡に出会い、幼虫が育った木に自分がたどり着くことを考えたら、奇跡のような確率です。でも偶然だけではない。経験とインフィニティーのメンバーから教えてもらった

 

・知識で、推測して導き出した結果なんです。オオクワガタを探していて、一番の感動はそ こじゃないでしょうか。地図を広げて、自分が信じた1点に向かっていく。永遠の宝探しなんです」

 

・「正直、僕はオオクワガタはいらないんですよ。標本もやらなければ、ブリードもしない。採れた個体を売ることもしない。見返りを求めないから、続けられてきたんでしょうね」

 

・30年間、この男は山にどれだけの時間を注ぎ込んできたのだろうか。それでも手元には 残していない。あるのは脳裏に刻まれた記憶だけである。

 

・何も 情報も記録もない全くの新産地を当てられるのは、一生に一つか二つです。でも15年通 って、ある日バン! とオオクワの食痕が現れたときの興奮は、言葉にならない。それを追っていくときには顔が真っ赤になる。現実に現れるまでは『まさか、まさか』という気 持ちです。そして目の前に現れた瞬間は・・・・・・。あれ以上のものはない。自分の推測を信じ てやり遂げた想い。もう一つの目が、カッと見開くような恍惚感。手が震えて鳥肌がたち、桁違いの感動に襲われる」その記憶が、何度でも自分を山に呼び寄せるという。

 

・今日の虫は、たまたま出たのではなくて全て計算してのこと。

 

・オオクワガタを採る技術だけをいえば、トップクラスといえる採集人は全国で20人くらいだと白村は言う。「だが新産地を当てるということになると別の話です。それをやっているのは自分たち以外では全国に3人いるか、いないかだと思う」

 

過去に記録がなく、これまでの産地とは全く関係ないエリアで、分布ルートから自分で 予測して当てるということ。これをやっている採集家は本当に少ない。インフィニティーのメンバーの中でも限られたものだけである。さらに厳しく見れば、オオクワガタの明確な記録がない都道府県で、完全な新規の生息を確認したのは白村でも1県だという。

 

・ 「僕は分布ルートを予測するときには、地図から人間と街を消すんです。頭の中に、まだ 人工物が何もなかった頃の地形・風景を思い浮かべる。街で分断されている地形に、かつて人が住んでいなかった時代には川が流れてヤナギの原生林が広がっていた。広いエリアが原生林で繋がっていたとしたら、どこかに残された天然林もしくは古い二次林に、わずかに生息している個体がいるのではないかと考える」

 

・「若い奴らが探索心を忘れかけているようなら、圧倒的な力を見せてやる。骨のある奴は本気で俺に挑んでこい 」

 

……すごいなあ……これほど夢中になれるものがあるなんて。ワタシにとっては音楽だね「流し」だね。オオクワガタを見つけにいきたくなりました。超オススメです。(^^)