「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「人類史のなかの定住革命」(西田正規)

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冬になるといつも思うんだけど、ノラネコや野良犬はどうしているんだろう!?と。食べ物とか寝るトコロとかどうしているんだろう。いつもマンションの裏にくるニャンコが最近来ない。寒くなると暖かいところへ移動しているんだろうけど。生きていくって大変だよね。
 
さてこの本。人間も狩猟採集生活から定住生活になったのはなぜなんだろう。「霊長類が長い進化史を通じて採用してきた遊動生活。不快なものには近寄らない、危険であれば逃げてゆくという基本戦略を、人類は約1万年前に放棄する。ヨーロッパ・西アジアや日本列島で、定住化・社会化はなぜ起きたのか。栽培の結果として定住生活を捉える通説はむしろ逆ではないのか。生態人類学の立場から人類史の「革命」の動機とプロセスを緻密に分析する」そのエッセンスを紹介しよう。
 
定住社会とは何かという問いかけは、縄文時代の生活戦略を考察する中から生じた。秋の温帯林に豊かに実るクリやドングリ、クルミなどを大量に蓄えて冬を超す縄文時代の生活戦略は、定住を強く促したに違いなく、あるいは、定住生活を前提としてはじめて機能する生活戦略である。それは、年間を通じて獣を追い、狩りを続ける旧石器時代の生活戦略とは大きく異なっている定住生活の本質に迫るには、その対極にある、頻繁なキャンプ移動をくりかえす遊動社会との比較研究がなによりも有効な手段になる。
 
サルや類人猿たちは、あまり大きくない集団を作り、一定の遊動域のなかを移動して暮らしている。集団を大きくせず遊動域を防衛することで、個体密度があまりに増加するのをおさえ、そして頻繁に移動することによって環境の過度の荒廃を防ぎ、食べ物にありつき、危険から逃れるのである。このようにして霊長類は、数千年にもわたって自らの生きる場を確保してきたのである。
 
人類は、今からおよそ一万年前頃、人類以前からの伝統であった遊動生活を捨てて定住生活を始めた。その後、人類史の時間尺度からすればほんの一瞬ともいえる短時間の間に、食料の生産が始まり、町や都市が発生し、道具や装置が大きく複雑になり、社会は分業化され階層化された。定住生活はむしろ遊動生活を維持することが破綻した結果として出現したのだ、という視点が成立する。
 
・アンダマン島に住む狩猟採集民、アンダマン島人を調査したラドクリフ・ブラウンは、彼らがキャンプを移動させる理由として、①死者の出た時、②狩や猟に便利な場所への移動、③季節風を避けての移動、④ゴミの蓄積による環境悪化による移動の四つをあげ、また理由の明らかでない移動のあることを示唆している。
 
定住生活の維持には、集落の近くに年中使える水場があり、必要な薪が採集でき、そして、そう遠くない範囲のなかで必要な食料のほとんどが調達できなくてはならないのである。その範囲は、資源の密度、獲得の技術、人の運搬能力や移動能力などにかかわることである。
 
「遊動と定住の人類史」「狩猟民の人類史」「中緯度森林帯の低住民」「歴史生態人類学の考え方(ヒトと植物の関係)」「島浜村の四季」「「ゴミ」が語る縄文の生活」「縄文時代の人間ー植物関係ー食料生産の出現過程」「手形動物の頂点に立つ人類」「家族・分配・言語の出現」など。

 

なかなか画期的な視点だね。じっくりと読み返したい本。オススメです。(・∀・)

 

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