この本の出だしから感動っ!!!ヒッピーの中にいたスティーブ・ジョブズと佐々木正が出会うシーン。これ、ホント!?フィクションじゃない!?こんな出会いってマンガの世界だよー!!!!まるでトーストを口に加えて遅刻しそうな高校生が、ぶつかった相手が転校生みたいな!(笑)
「こんなスケールの大きい日本人が本当にいた!電子立国・日本の礎を築いたスーパー・サラリーマンの物語!敗戦から高度成長期にかけて、デジタル産業の黎明期に、常に世界の最先端を突っ走ったスーパー・サラリーマンがいた。シャープの技術トップとして、トランジスタからLSI、液晶パネルと当時のハイテクを導入して苛烈な「電卓戦争」を勝ち抜き、電子立国・日本の礎を築いた佐々木正。インテル創業者が頼り、ジョブズが憧れ、孫正義を見出し、サムスンを救った「伝説の技術者」の痛快評伝」そのエッセンスを紹介しよう。
・高校三年生の夏、 正は台北帝国大学で植物の研究をしている教授のところへ実習に行 き、ある研究テーマを与えられた。「接ぎ木」だった。 熱帯で育った木同士、 あるいは北方で育った木同士は容易に接ぐことができる。 しかし熱帯で育った木と北方で育った木は容易にはつながらない。 原因は樹液が流れる管の太さがまるで違うことがわかった。 二つの異なる太さの管をどう接ぐか。正は、 管の細いリンゴの枝を斜めに切って表面積を増やした。 得意の数学で二つの管がぴったり合うように計算した。 すると熱帯のマンゴーと北方のリンゴが見事に繋がり、 リンゴのような計算した。「リンゴマンゴー」の実を結んだ。「 そうか、異質なものでも工夫をすれば接ぐごとができる。 違うものを接げば、そこから新たな価値が生まれるのか」 台湾というコスモポリスで育った正は、 人種や民族や国境の壁にとらわれない感覚を身につけた。 正自身も明治・大正という時代が生んだ「リンゴマンゴー」 だった。
・素直に頭を下げれば、たいていの人は教えてくれる。 人間とは自分の知っていることを教えたい生き物である、 教え合い学び合いながら進歩していくものである。「 わからなければ聞けばいい」佐々木には、 無知を恥じるところがない。この大らかさが、 知識を吸収していく時の武器になった。
・「これからは人を殺す道具ではなく、 人を幸せにする道具を作る。我々の技術はそのためにあるはずだ」
・早川電機(シャープ)創業者の早川徳次は「 皆さんに使ってもらったらいい。良い技術であれば、 他者にも使ってもらい、お客さんにどんどん使って貰えばいい」 それが信念だった。 気っ風の良いいい徳次は業界で大いに男を上げた。
・「いいかい、君たち。わからなければ聞けばいい。 持っていないなら借りればいい。逆に聞かれたら教えるべきだし、 持っているものは与えるべきだ。人間、 一人でできることなど高が知れている。 技術の世界はみんなで共に創る『共創』が肝心だ」
・「戦闘機のスピードではササキには追いつけない。ロケット・ ササキだ」
・海外に出かけたり、海外から訪ねてきた要人に、 佐々木は必ず贈り物をした。決して高価なものではなかったが、 心の籠った贈り物だった。 海外に送るクリスマスカードは5000枚を超え、 そのすべてに直筆のメッセージを添えた。 取締役20人で接待費が年間に2000万円とい質実剛健のシャー プにあって、佐々木が使う交際費は群を抜いていた。 社長の佐伯をはるかに上回る交際費を、佐伯は「 ドクターだけはしゃあない」と目をつぶった。 佐々木の人脈によって会社にもたらされる利益もまた桁違いだった 。
・「日本人はイノベーションが苦手」そんなことはない。 我々の先達は資金も設備も何もない状態で、 ゼロからイチを生み出し、世界を驚かせてきたではないか。 日本の電機産業には「ロケット・ササキ」がいたのである。 会社はいつか消滅するし、国家が永遠に繁栄することもない。 だが人類の進歩に終わりはない。