「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「辞書はジョイスフル」(柳瀬尚紀)

 


辞書はジョイスフル (新潮文庫)


ワタシは「酒場のギター弾き」でもあり、歌や詩や詞を作るので人一倍、若い頃から、日本語やコトバについて関心を持っているのだ。(・∀・)このブログでもこんな本を紹介したよね。


「辞書になった男 ケンボー先生と山田先生」(佐々木健一
http://d.hatena.ne.jp/lp6ac4/20171118


BOOK〜フシギな辞書の話!…『新解さんの謎』(赤瀬川原平
http://d.hatena.ne.jp/lp6ac4/20100227


さて、この本。またまた辞書についての本。「私は、おそらく人の5倍は辞書を引く。そして人の2倍は辞書が好きだ」という著者が、さまざまな辞書をひきながら、思うままに書きつづる。辞書は読むものである。辞書好きの全国民に捧げるエッセイ。そのエッセンスを紹介しよう・


まず、おそろしくものを知らない。だからしょっちゅう辞書を引く。そして翻訳をしていると、しょっちゅう知らないことに出くわす。だから辞書を引く。文字というものの片隅で仕事をするようになって以来、日光に浴さなかった日はかぞえきれないが、辞書の恩恵に浴さなかったった日は一日としてないだろう。


・とりわけ7年半の時間とエネルギーをつぎこんだジェイムズ・ジョイスフィネガンズ・ウェイクの全訳作業中は、連日連夜、寝ても醒めても、言葉を探しに探さねばならなかった。だから辞書を引きに引いた。引きに引いたー


・それにしてもいまもってわからないのは「動詞連用形+に+同じ動詞」といいこの言い回しがどういう動詞にに限って使われるのか、あるいは、つかわれないのか。そのへんが動詞てもわからない


遊びに遊ぶ 弄びに弄ぶ 飛びに飛ぶ 滅びに滅ぶ 綻びに綻ぶ 運びに運ぶ 叫びに叫ぶ 噎びに噎ぶ 結びに結ぶ 荒びに荒ぶ 転びに転ぶ 寝転びに寝転ぶ


以上のどれが正しくて、どれが間違いなのか、どなたかの教えを請い、学びに学びに学びたい。


ジェイムズ・ジョイスの言葉遊びはすごい。そのすごさを理解してもらうのは、まず、この種の言語の遣い方を、たかが言葉遊びだ、ただの語呂合わせだ、駄洒落だと、あっさり侮蔑する態度を改めてもらわなければならない。そういう傲慢な姿勢をくずさない人は、なんというか、精神が貧しい。心が闇に閉ざされている。心に闇がない。


旧約聖書では要所要所が言葉遊びによって書かれている。たとえばイサクの双子の息子の話。弟ヤコブは兄エサウの踵(かかと)につかまって胎内から出てくる。踵につかまれば踝(くるぶし)をもつかんだわけで、踵とは、つまり足首のこぶ、やッ、こぶにつかまって出てきおったというわけで、ヤコブと名づけられた。のちに父親イサクの祝福を受け取った兄は、こうなげいている。「あいつはさすがにヤコブだよ。おれより親子触(おやこぶ)れ合いがうまいもんなあ」


日本語と英語の両方を考えてコトバの韻を踏むってムチャクチャむずかしいよねー!すごい、深い!辞書好きな方にオススメです。(・∀・)


 


辞書はジョイスフル (新潮文庫)