最近、読む本は名著が多いなあ……この本もスゴいわっ!グイグイ引き込まれていった!(╹◡╹)
「かつては除去不可能だった腫瘍を取り除き、死の淵の絶望に沈む患者に福音を告げる“光の奇跡”レーザー・メス。このレーザー光線を利用した世界でも最先端の手術装置の登場により、外科的手術の可能性がまたひとつ広げられた。本書は、レーザー・メスの開発に情熱を燃やす医師とエンジニア、そして救われた患者たちの熱い日々を感動的に描く。大宅壮一ノンフィクション賞受賞作」そのエッセンスを紹介しよう。
・昭和44(1969)年、人類初の月着陸の二日前の新聞朝刊「月面照射へ秒読み 緊張するレーザー実験」の記事。宇宙飛行士が月面にレーザー光線反射装置を設置し、それに向けて地上の天文台からレーザー光線を照射し、光が戻ってくるまでの時間によって、月と地球の正確な距離を測定しようという実験計画だった。「すごい実験だね。月と地球は38万キロメートルも離れいてるのに、そこに光を当てて、跳ね返ってくるなんて。レーザーという光は、それほどまっすぐ進むものなんだろうか」
・これをなんとか脳外科手術に使えないだろうか。他の組織を傷つけることなく、腫瘍だけを除去できないものか。レーザーという光の直進性と強いエネルギーをどうにか利用して、地上から月面のターゲットをねらうように、壊滅することはできないものか。
・臨床医としての一週間は、まず手術が週平均3回はある。短いものなら6時間ほどで終わるが、長く困難な症例の場合は、16時間以上といういのも珍しくはない。そのあいだ飲まず食わずでトイレにも行かないのはもちろん、手術台のところで立ち通しで、腰を下ろす暇などない。手術の終わった患者を手術台からストレッチャーに移し、廊下へ運び出していくときに、ようやく医師たちも解放される。こうした手術が一日おきか、ときには二日つづきである、その他の日はすべて朝から外来の診察、午後は入院患者を診てまわる回診となる。「タフで行動的で、強烈な個性の持ち主」でないと務まらない。
・医療機器というのは、いかに業界の大手メーカーでも、そうたくさん販売できるものではない。ユーザーとなる病院の絶対数が、決まっているので、量産というシステムは困難。したがって単価も高くなる。それでいて莫大な開発費をかけて製造し、さらに安全性の試験に長期間を費やしても、万が一の場合には会社全体の信用を失墜し、最悪の事態につながりかねない。だからメーカーが新しい手術装置などに手を出したがらぬのは、むしろ当然のことであった。
・「あんな不都合な、使い勝手の悪い装置で実用機を作ろうなんて、とんでもない!いまのままで出せば、はじめは売れるでしょうが、すぐにレーザー・メスなんて名前ばかりで全然だめだ、といわれることになりますよ。レーザー・メス自体の信用を失墜し、結果的に、私もあなた方も大ダメージを被ることになる。それではサルカニ合戦の、サルだ。目先の“おにぎり”をとって、“柿の種”を捨てるんですか。それでもいいんですか!2号機は絶対にだめだ、と社長に伝えてください」
…やっぱり新しい技術の誕生には感動的なドラマがあるんだねえ…。感謝、感謝だねえ。超オススメです。(╹◡╹)