ドラえもんの声を演じ続けて26年の大山のぶ代さん。芸能生活50年の節目に書かれた自伝がこの本。すべてのドラえもんファンに捧ぐ。そのエッセンスを紹介しよう。
・51年間の役者生活のうち、半分以上をあの子と過ごせた、楽しい思い出や裏話。そんなことを一年かけて綴ってみました。あの子、ドラえもんを愛して、長い間番組をご覧くださった皆さんの思い出と一緒に、楽しんで読んでいただけたら、とてもうれしいです。
・27年前、ドラえもんのパイロット版「勉強べやのつりぼり」を見せていただいたとき、「一目惚れ」なんて言葉があるけれど、あの子はそんな言葉で表現するより、もっと力強いパンチを私に与えました。まさに心をギューッと掴まれてしまい、私の中に入ってきました。じつは私、それまで、「ドラえもん」って知らなかったんです。あんなに可愛い、愛嬌のある子がいたなんて…。そしてわかったんです。あの子は見た目の可愛さだけでなく、正確の可愛さ、心の可愛さ、やさしさ、すべてを持っている子なんだーッ、て。
・ある日、録音スタジオに、藤子・F・不二雄こと、藤本弘先生がお見えになったのです。「先生、あのー、私、あれでいいんでしょうか…」すると、先生は私のほうを見て、そしてすぐスクリーンに映っていたドラえもんのほうを見て、「ドラえもんって、ああいう声だったんですねえ」とおっしゃったんです。うれしかった。こんなうれしい褒め言葉はありません。役者冥利につきます。
・「私がなにか言うと、みんな笑うの…。声がおかしいって、ヒソヒソみんなで私の方を見ながら笑うの…」母は、しばらく黙ってから、言いました。
「あのね、目でも、手でも、足でも、そこが弱いと思って、弱いからといってかばってばかりいたら、ますます弱くなっちゃうのよ。弱いと思ったら、そこをドンドン使いなさい。声が悪いからって、黙ってばかりいたら、しまいに声も出なくなっちゃうわよ。あなたらしくもない。明日からドンドン声を出すように、何か声を出すようなクラブへ入りなさい。そこで声をたくさんだして、いくらかでも人様が聞き取りやすい声の出し方、お話の仕方を覚えなさい」
声のコンプレックスからドラえもんの声優になったなんて、「災い転じて福となす」だよね。オススメです。(・∀・)