- 作者: 香山リカ
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2008/10/24
- メディア: 単行本
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ウチ(SA)では、音楽家が自分の声や楽器の音色に気をつかうのと同じように、私たちが普段使う言葉にも気をつかおう、というメッセージを提案しているが、香山さんもこの本で同じことをいっている、。何気なく使っている当たり前の日常の言葉を掘り下げて会話力を身につけようという趣旨だ。そのエッセンスを紹介しよう。
・あのひとことが忘れられない。何十年も前のひとことへの怒りを胸に、精神科の診察室を訪れる人がいる。かと思うと、こちらが何気なく言ったひとことなのにあとから「先生のあの言葉で生きよう、という気持ちになれました」と教えてくれる人もいる。言葉は人の一生を破壊することもできれば、人の命を救うこともできるのだ。本当に不思議なものだな、と思う。そして、その言葉をレントゲンやメスのかわりに使って人間の心に迫る精神科医という仕事は、面白いけれど恐ろしくもあるな、といつも思う。
・もちろん、私たちの毎日も言葉抜きでは始まらないのであるから、知らないうちに私たちは人を傷つけたり、また自分が癒されたりしているのだ。あのひとことがもしかしたら彼の一生を変えてしまったかも、と後から気付いて身震いした、といった経験を持つ人もいるのではないだろうか。
・おはよう、こんにちは、ありがとう。基本の言葉を的確に使うだけでも、思わぬよい影響を相手に与えることだってあるのだ。なんだ、こんなことならよく知っているよ、ということばかりが書かれているかもしれない。しかし、もう一度基本に戻って、「言葉ってなに?私は日々、どんな言葉をどうやって使っているだろう」と考えるのは、悪いことではないはずだ。古くておなじみの言葉の世界へのちょっぴり新しい旅に、これからゆっくり出かけてみることにしよう。
・【きっとうまくいきますよ】
という他人からのひとことは、前向き思考へのスイッチが入るよいきっかけになることがある。、この場合、根拠や理由などいらない。「大丈夫、うまくいきますよ」と笑顔で言ってもらえるという、その事実だけが大切なのだ。それだけで心強く思い、気持ちを前向きに変えていくことができるだろう。その場合も、笑顔や温かいまなざしは欠かせない。しっかり相手の目を見て、暗示をかけるように「きっとうまくいきます」と確信を持って伝えるのだ。「言葉には言霊が宿る」と言ったように、人が口にする言葉には、その字面の意味を越えて相手に何か伝える力がある。
・【お待ちしてました】
自分を歓迎してくれる人、待っていてくれる人がいる、といううれしさ。それを相手に実感させることから、円滑な人間関係が生まれます。「あなたがいらしてくださるのを待っていたんですよ」という気分になり、相手を受け入れるような表情になって、やわらかいムードが漂うことが期待されるのだ。声に出さなくても、心の中でつぶやくのだ。
・【お荷物になりますが】
死後になってしまったかもしれないが、さりとて相手に気を遣い、自分が少し下がるときには他に適切な言葉が見つからない品格のある言いまわしです。「能ある鷹は爪を隠す」、へりくだりすぎるのも問題だが、自信過剰にならないような注意も必要なのではないだろうか。