「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「梅、香る 琴子は着物の夢を見る」(ほしおさなえ)

いいなあ。ほしおさなえさん。この間、トークショーに行って、最前列で聞いて、サイン会でサインいただいたけど、気の利いたコトバが出なくて無言だったなあ。(笑)初恋の相手に合ったみたいだったなあ!(笑)(=^・^=)
 
さて、注目の新シリーズだよー。今回のテーマは着物。
「八王子のリユース着物店「本庄の蔵」で着物査定を担当する本庄琴子は、出張買取のため店主・柿彦の運転する車で、横浜に住む日向菊子の家に向かった。「本庄の蔵では着物についた念を祓ってくれる」という噂が流れており、菊子はそれを聞いて依頼してきたらしい。着物の記憶が見えることを、柿彦以外には誰にも話したことのない琴子だったが、菊子の家で触れた振袖の強い「意志」に、つい……。繊細な手仕事で作られた総絞りの振袖が記憶していた恋の物語。シリーズ第二巻」そのエッセンスを紹介しよう。
 
・わたしが何度もくりかえしその着物の下で眠り、着物の気が済むところまで夢を見尽くすと、着物に宿った悪い記憶は消える。柿彦はそれを浄化」と呼んでいる。そうした着物は持ち主と強い結びつきを持っていることが多いため、浄化された着物はたいてい持ち主のところに戻ることになる。
 
・いまの時代、洋服というのはそう長く着るものではない。流行り廃りや気分の問題もあるから、一シーズンかニシーズン着ればじゅうぶんと考えている人が多いように思う。しかし着物はそうではない何年も何十年も、場合によっては子や孫の代まで着ることがある。
人が時間をかけて作ったものだからかもしれない。糸を紡ぐにも織るにも染めるにも間と手間がかかる。手描き友禅の柄は人が筆で描いたものである。一枚にかけられてい時間がちがう。着物を着るというのはその豊かな時間のなかに身を置くということ。そしたものと関係を結ぶということ
 
人の手で作られた器は何度見ても飽きない。使い慣れたものでもよく見ると毎回発見にあるし、使うたびに息吹を感じてほっとする。それと同じで、人の手で作られた着物は身にまとうたびになにかに守られている気持ちになる。
 
・かつては完全な分業体制が取られていた。着物がたくさん生産されていたころはそれでも職人たちに賃金を払うことができた。だが、生産数が落ちればそうはいかなくなる。廃業する人も増え、技術を継承しようという人はいなくなる。技術というのは人から人へ継承されるもので、携わる人がいなくなれば失われ、復活するのは至難の業である。
 
・「洋服とはなんかちがう。着ているとなにかに守られているみたいで」
 
「そうなのよ。わたしもいつも人前に出るときは着物に守ってもらってるの緊張する場所でもね、今日はこの着物を着てるから大丈夫 、って言い聞かせる。そうするとなんだか自分がしっかり見える」
 
・「着物の柄っていうのは、ただきれいなだけじゃなくて、ちゃんと意味があるんだよ。柄に祈りがこめられている。この着物の松竹梅もすごくおめでたい柄だからね」 「そうなの? 松竹梅っていうと、お寿司や鰻のメニューみたいだけど」真子が笑うと菊子も笑った。
 
「むかしからおめでたいと言われてきたものだからね。一年通して葉を茂らせる松は長寿や生命の象徴力強くまっすぐに育つ竹は成長や子孫繁栄の意味まだ寒い時季にほかより早く花を咲かせる梅は忍耐と強さの象徴
 
梅の花言葉は気品、忠実、高潔、忍耐だって、あのとき店員さんも言ってたよね。気品と高潔はいいとして、忠実と忍耐っていうのは苦しそうだなあって思ったけど」
 
世の中には物語というものがたくさんある。小説しかり、映画しかり。わたしたちはそのなかでほかの人の心に触れる。そうやって心というものを学びとる。結局、だれかの心からしか心というものは学べない
 
・「そうなんですけど、それだけじゃなくて。なんとなく着物には『神さま」みたいなものが宿っているように感じられるんですよ」
 
「神さま?」驚いて須崎の顔を見た。
 
「神さま」は変ですね。でも、単なる『もの』じゃない気がするんです。なにかが宿っ
ているっていうのかな。本庄の蔵にいるせいかもしれませんけど」
 
 
菱刺しって知ってるか?」
菱刺し?」真子が首を横に振る。
 「刺し子の一種だよ。うちの田舎に伝わっているもので、もともと作業着に刺したものだったんだ。いまはもうそんなことする人はあんまりいないけど、うちのばあちゃんは菱刺しでいろんなものを作ってた」
 
・「ばあちゃんの作る柄はきれいだったんだよなあ。その振袖も、だれかがどこかで気が遠くなるような思いをして作ったものだと思う。すごく、きれいだ
オクヤマの言葉で、また真子の胸がどきんとふるえた。
「真子も、きれいだ。着てきてくれて、ありがとう」
オクヤマは遠くを見たままそう言った。
 
・「ええ。梅のことはわたしもよくわからなかったんです。でも真子は、自分には忍耐も強さも足りなかった、と。だから人を傷つけてしまった。取り返しのつかないことをした、 とつぶやいていました。どういうことか訊いたんですが、首を横に振るばかりで、答えてはくれなかった。そのことがずっと気になっていたんです」
 
生きていくためには、お金を稼がなければならない。人が求めることをしなければ、お金は得られない。だが奥山はそれができない人だった描きたくないものを描くくらいなら筆を折って家の手伝いをした方がいい。そう考えたのだろう。
 
・「いえ、疲れはありますが、わたしも得るものがあるのです。話を最後まで聞いたあとは、着物が生まれ変わったようになる。その姿を見ると心が深く安らいで…… 」
 
 
主人公の真子は、ワタシと同い年だな、きっと。人には言えない、引きずっている恋があるんだなあ。誰にでも。ジーンとくるなあ……後半は、ウルウル来ちゃいました。このシリーズも長く続いてほしいなあ。超オススメです。(=^・^=)

 

 

第一弾も併せて読もう。(=^・^=)

 

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