「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「イシ 北米最後の野生インディアン」(シオドーラ・クローバー)

この本は、胸が締め付けられる……自分が、もし誰も日本語で会話をする相手もいないまま、日本人の最後の一人になってしまったら?どう思うだろうか!?
 
カリフォルニア州に先住していたヤヒの最後のインディアンのひとり、イシの生涯とは!?そのエッセンスを紹介しよう。
 
 
イシが偶然石器時代から迷いこんで来て現代の世界を驚かせてから、もう半世紀近くになる。ここに今から述べられることは、彼について知られている確実なことのすべてである。彼が現代の世界で、 また以前彼自身の世界で、信じ感じ行なったことが彼の物語の結節点である。このいわばビーズ玉のようなものをつなぎ合わせて、一連のネックレスを再現することが私の仕事であった。驚くべきことに、彼の生涯というネックレスは、多くの欠けたところがあるにも拘らず、何とか円をなし得ているようである。
 
・イシと彼の部族の歴史は否定しようもなくわれわれ自身の歴史の一部となっている。われわれは彼らの土地を吸収して自分たちの所有地にしてしまった。それに応じて、われわれは彼らの悲劇をわれわれの伝統と道徳の中にとりいれ、それについての責任ある管理人とならねばならない。
 

 
イシの物語はロビンソン・クルーソーの物語を逆にしたようなものである。イシの物語は一九六一年の初版以来、アメリカ人の心を強く捉えてきた。無人島のクルーソーの姿よりも、道徳的な意味合いにおいて、イシの姿のほうがアメリカ人の心に強く迫るものがある 。
 
での嵐という自然力の猛威によってもたらされたのであったが、イシの場合は、同じ人間である筈の白人の卑劣な集団的残虐行為によるのだから。イシは、皆殺しにされた部族の最後の生き残りとして、家族の惨死を悲しみつつ何年間もひっそりと身を隠して暮らしていた。その間に彼の周囲では侵入した白人の町や農園が次々に出来ていったが、彼は足跡を一つも残さなかった。山の中にまだ「未開人」「野生インディアン」が生存しているのをさとられぬようにと、 一歩あるくごとに足跡を掃いて消していたのである。何という孤独であったことか!クルーソーの味わったよりもずっと悲痛な孤独である。
 
・けれども、彼が孤独で悲惨な暮しにもはや耐えられなくなって白人の世界に迷い出て来た時、 彼の見出したのは、皮肉なことに、覚悟していた死ではなく、思いやりと友情と理解であった。 そして「未開」から連れ出されると、すぐに近代都市の真中で残りの生涯を送ることになった。
 
イシは有史前の石器時代とあわただしく工業化した二十世紀の間に横たわる巨大な溝をたった一歩で跨いでしまったのであるその一歩は品位のあるもので、人間としての尊厳を少しも失わぬものであった。この事実からも、「文明」と「未開」の間に存在するといわれる溝は、実は単に無知と偏見と恐怖心の溝に過ぎぬことが判明する。
 
 
・大量殺戮が完了する以前に、少しでも多く蒐集するというのが、何年にもわたる父の仕事であり、このため父は殺戮の目撃者となったのだ。ナチによるユダヤ人大量殺戮に等しいインディアン撲滅の生き残りであるイシは、父の親しい友人かつ教師になった。
 
・イシの物語を書くことになったのは、私の母シオドーラ・クローバーであった。母は
イシにじかに会ったことがないので、父の味わった激しい感情を直接感じなくて済んだのだ。執筆中、母は父の助力を仰いでいたが、本の出版を見ずに父は他界した。カリフォルニア征服の身の毛のよだつ物語を語り、人間が「文明、進歩、明白な天命」の美名のもとに行う悪事を再確認するというのは、母にとって困難で時間を要する仕事であった。しかし母は、ひるむことなく、客観性を重んじ、しかも深い共感をこめてイシの物語を語った。イシその人も母の仕事に協力したと思う。彼の寛大で聡明な精神が暗い道を進む母の行く手を明るく照らしてくれたのであろう。本書の読者にもイシは同じようなことをしてくれていると思う。
 
・イシの足は「幅広で頑丈、足の指は真直ぐできれいで、縦および横のそり具合は完璧で」った。注意深い歩き方は優美で、「一歩一歩は慎重に踏み出され・・・・・・まるで地面の上をすべるように足が動く」のであった。この足取りは侵略者が長靴をはいた足で、どしんどしんと大またに歩くのとは違って、地球という共同体の一員として、他の人間や他の生物と心を通わせながら軽やかに進む歩き方だイシが今世紀の孤島の岸辺にたった一つ残した足跡は―――― もしそれに注目しようとしさえすれば――おごり高ぶって、勝手に作り出した孤独に悩む今日の人間に、自分はひとりぼっちではないのだと教えてくれることだろう。
 

 

よくぞ、残してくれました。我々、人間の悪行を。二度と繰り返さないように。戦争も。オススメです。