「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「銀河ホテルの居候 満天の星を見あげて」(ほしおさなえ)

ワタシの大好きなほしおさなえさん。描写がすごすぎて、ノンフィクションかと思ってしまう。軽井沢の銀河ホテルに行きたいわ。手紙室、行きたいわ。手紙、書きたいわ!♪ (=^・^=)

 

「失くしたはずの夢の欠片を再び手にした夜。二十歳になる息子を思う昼下がり。結婚式当日、期待と不安で胸いっぱいの朝。人生のワンシーンを彩る、銀河ホテル名物 手紙室へようこそ!」そのエッセンスを紹介しよう。

 
・俺にとって、音楽と指は密接に結びついている。だからいまも、文字を書いているときに音楽を感じる。はっきりした旋律じゃない。曲の気配みたいなものだ。メロディでありリズムであり、生きていることそのもの。たぶん俺は、指を使っているときがいちばん生きている実感を持てるのだと思う。
 
・「そうなんだよ。保育園から家に帰るまで、ふつうに歩けば五分もかからないのに、子どもを連れていると三十分以上かかるときもある。なにひとつ計画通りに進まない。までも、たしかにたいへんだけど、楽しくもある。自分じゃ絶対に思いつかないことをするから」
 
・「人間、年をとると知ってることばかりになるだろう? なにを見ても新鮮さを感じなくなる。でも子どもができてみると、自分も別になんでも知ってるわけじゃないんだ、 って思うんだ。たとえばてたとえば雨の日に蝶々がどこにいるのか、とかさ」
 
・「人間、頭のなかだけで書く内容を決めることはむずかしいと思うんです。手を動かし、 自分で書いた文字を見ながら、自分が書きたいことを考える。書くことで自分の思いを掘り下げて、自分がほんとうに書きたかったことと出会う。色に触発されることもあると思います。いつもとちがうものを見ることで、心の底にしまっていた記憶を思い出したりね。旅と同じです」
 
・「ここにある手紙は、芸術作品とはちがいます。だれかひとりに宛てた手紙です。多くの人に届くわけでも、歴史に残るわけでもない。でも書いた人にとってはきっとなによりも大切な気持ちなんです。わたしにはそれがここにあることがとても尊いことに思えるんです。ここにあるだけでいい、と」
 
・目の前に長い一本の線がのびていた。線の両端を見つめる。かぎりのある長さの線。数学ではこれを「線分」というらしい。それに対して「直線」というのは、かぎりなくのびるまっすぐな線を指す。直樹が中学生のころ、試験勉強をしているときに聞いた。ペンで線を引くとき、わたしたちに書けるのは「線分」だけだ。ある点ともうひとつの点のあいだに引かれた線。はじまりがあって終わりがある、かぎられた線。無限にのびる線というのは、概念としては存在するが実際に書くことはできない。
 
人生とはこういうものかもしれないと思う。誕生から死までのかぎられた線。人の人生はある点からはじまり、ある点で終わる。その両端から先には白紙が広がっている。 そう思うと、線以外の紙の白い部分がえらく広く見えてくる。人はみな、ある長さの時間を生き、やがて死ぬ。生きていることの両端に、自分のいない時間が存在する。だが、実際にはそこも虚無や空白ではなく、ほかのものたちが生きている。
 
・わたしが生まれる前にも父は生きていた、父が死んだあともわたしは生きている。誕生から死まで。心のなかでそう唱えながら、もう一本線を引く。ここからここまでが、人に与えられた時間。その外には出られない。人にできるのは、このかぎられた線分のなかでじゅうぶんに生きることだけ。人はやりたいことをするために生きてる。父の声が耳の奥でよみがえった。
 
・絶対的に正しいことなんてない。絶対に正しいと思っても、それは自分の「絶対」にすぎない。こうするべきだ、と人に押しつけることはできない。人はみんな、自分がやりたいことをしているにすぎない。むずかしいことだ。生きるというのは、いくつになってもむずかしい。人間、うまく生きることなんてことは、死ぬまでできないのかもしれない。
 
・自分の生まれる前の世界、死んだあとの世界。線分の外の世界。手元の紙に引いた茶色の線を見る。
 
 
・「手紙室、やっぱりいいですね。ここは銀河ホテルのなかでも特別な場所、って気がします。聖域、っていうか・・・・・・」苅部が目を丸くした。「それはずいぶん大仰な」苅部が笑う。「いやいや、その通り。聖域だよ、ここは。人々の心が詰まっているんだから」
 
・「その泣いていた人は、心に穴が空いたような状態だったんじゃないですか。ここの料理はそういう人にとくによく効く。食べることで、生きていていいよ、と言われたような気持ちになる。だから涙を流しても、別におかしいことじゃないと思いますよ」 わたしの目をじっと見て、苅部は真面目な顔でそう言った。苅部自身がカレーライスを食べて感じたことのように聞こえた。やはり、あれは苅部だったんじゃないか。苅部は認めていないけれど。
 
・「リレー競技だとバトンタッチは一瞬ですけど、人間の社会ではそうじゃない。ひとりで走る時間なんてほとんどなくて、いつも前後の世代といっしょに走っている。小さな人間が必死に歩いて、次の世代にバトンを渡して、そうやって続いてきたんだ。ただ、リレー競技だとバトンタッチは一瞬ですけど、人間の社会ではそうじゃない。ひとりで走る時間なんてほとんどなくて、いつも前後の世代といっしょに走っている」
 
・「だからインクはオレンジにしたんだ。俺にとって、オレンジは真奈の色だから。 なんでだろうな、大学で最初に会ったとき、オレンジのカーディガンを着てたからかも。
だから、オレンジを見ると真奈を思い出す。真奈の色だって思うんだ。あったかくて、安心する色なんだ」
 

オレンジも出てくるし、歌も出てくるし。ワタシの人生の集大成をガイドしているみたい。じわじわ響くなあ……苅部の正体も少しずつ明らかになっているし。自作が楽しみ。超オススメです。(=^・^=)