この本はいいっ!!!まったく期待していなかったのもあって感動もひとしおっ!!!一気読みしてしまったー!!!想像を超える展開、タイトルからはイメージできないラブストーリー!展開は違うけど『はいからさんが通る』の玉緒と伊集院少尉を思い出してしまったっ!!!
「ハウスクリーニングのバイトをして学費を稼ぐ大学生、谷本佳乃。ある日彼女が、とある豪邸の厨房を清掃していたところ、その屋敷の使用人頭が困り顔でやってきた。聞けば、主が急に帰ってきて、夜食を所望しているという。料理人もとっくに帰った深夜の出来事。軽い気持ちで夜食づくりを引き受けた佳乃が出したのは、賞味期限切れの食材で作り上げた、いい加減なリゾットだった。それから1ヶ月後。突然その家の主に呼び出されたかと思うと、佳乃は専属の夜食係として強引に雇用契約を結ばされてしまい……。ひょんなことから始まる、一風変わった恋物語」そのエッセンスを紹介しよう。
職務内容は「厨房付き料理人補佐」実のところ夜食係である。
・「俊紀様は、谷本さんの作ったリゾットがいたくお気に召したらしく、どうしてもあのリゾットを作った人間を連れてこいと…」「舌がどうかしてるんじゃないですか?ケチャップと粉末コンソメと粉チーズですよ!プロのプライドが邪魔していなければ誰にでも作れます」
・ただ本を読んだり、人から聞いたりしただけではドイツのマヨネーズが甘いことなど知り得ない。ましてやコーラをオレンジジュースで割ることなど……。
・「今日あるお金や地位が明日もあるとは限らない。自分で生きていくために最低限必要なお金は、自分で稼げるようになりなさい」
・想像でしか知らなかった彼の唇がこれほどまでに熱いと知っただけでも、佳乃の心は千々に乱れる。あの腕の熱さを覚えてしまった、それを失うとき、佳乃は心そのものを失うだろう。このまま逃げ出したら佳乃は住居も仕事も失う。けれど、数カ月後に心ごと崩壊するよりは遥かにましである。
・「喪服はそそられると聞いたことはあったが……」
「え……!?」
「あれほどまでだとは思わなかった。危うく葬儀場で押し倒すところだった」
「な……何言ってんですか!?」
・「舞浜……って例のネズミ王国があるところじゃないのか?そんなところでなにやってるんだ、あいつは!?」
「俊紀様……あの場所にいる人間は、働いている人間をのぞいて全員遊んでいるかと……」
・覚悟はしていたものの、予想を超えて俊紀は激しかった。ディズニーワールドというファンタジーの世界におよそ似つかわしくないほどに佳乃を翻弄する。達しても達しても許されず、幾度も官能の世界に引き戻された。俊紀の手で、彼の愛撫にだけ馴染むように教え込まれた体に、対抗する術はない。ただ啼かされ、彼を乞わされ続けた。絶え間ない愛撫の中で、佳乃は言葉を紡ぐこともできない。口をつくのは、これが自分の声かと思うような喘ぎ声ばかりである。その声にさらに俊紀は煽られる。官能に喘ぐ佳乃を追いつめ、悪魔のあように勝ち誇った顔で彼は問う。「なにが欲しい?」「あなたを下さい……」耐えきれずとうとう懇願した佳乃は、押し入ってきた俊紀によって、より一層激しい嵐に引きずり込まれた。
・六年前の夏の日、疲れ切って帰宅した俊紀の胃に妙に馴染んだあのリゾット。その熱さが胃の腑に染みた。あっという間に食べきると、疲れが溶けたような気がした。翌日再び厨房にリゾットを……と注文したが、出されたのは、昨夜とは全く違う正しすぎるリゾットだった。確かに美味だったら、それは俊紀が求める味ではなかった。何度作らせてみても違う。とうとう宮野を問い詰めて、作ったのは山本ではないと知った。ハウスクリーニング会社に問い合わせ、やっと呼び出した谷本佳乃という学生。
・五年という歳月をかけ、たった一言の宝石のような言葉を得た二人は、ただお互いの存在を感じるためだけに抱き合い。ゆっくりと眠りに落ちていった。
・「結局、なんで俊紀様はあんなに佳乃様のリゾットがお気に召したんだろうな」「いい加減な味だったから、かもしれません」「なんだよ、それ……」「あんまりにも、正しいものに慣れすぎていたんですよ、俊紀様は」
・あの頃の俊紀は、あらゆるものに疲れ、無意識に逃げ口を求めていた。突破口が自分の暮らしの中にはないとわかっていたからこそ、口にしたこともないような、適当な味のリゾットに堕ちた。もっといい加減でいいんだ。肩の力を抜いたって構わないんだと、佳乃のリゾットは俊紀に教えたのだろう。全部を自分でやらなくていい、既成のものを上手く活かして戦っていくやり方だって、あるのだ、と。
・佳乃は、俊紀の力を最大に活かすことができる「既製品」だった。その既製品を自分の中に取り込んで五年かけてアレンジし、本来の彼らしく生きる術を学んだ。結果として今がある。自分の責任が大きすぎると感じたとき、少しは休みたいと思ったとき、安心してその身を委ねられる存在。それを得ることで、俊紀は人間らしさを取り戻したのだ。
マンガにもなっているみたいだね。シリーズにもなっているんだね。今年読んだ本のベスト10間違いなし。超オススメです。(^^)