「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「「名コーチ」は教えない プロ野球新時代の指導論」(高橋安幸)

著者の高橋安幸さんって、野球本の中でもちょっと変わった、ユニークな本、書くんだよね。『伝説のプロ野球選手に会いに行く』は、感動したなあ!(・∀・)

 

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そしてこの本。現代のコーチ論。

 

大谷翔平佐々木朗希など、野球界にはかつての常識を覆すような才能が次々と現れる。彼らを成長へ導くのは、従来のコーチング論とは一線を画した、新しい指導スタイルだ。本書は、すぐれた職能を認められているプロ野球の現役指導者6人──石井琢朗鳥越裕介橋上秀樹吉井理人平井正史大村巌に取材。新世代の選手とどう接するのか。どんな言葉をかけるのか。6人のコーチの実践は、野球界のみならず、若い世代を「指導」「教育」する立場の職務にも有効なヒントを与えてくれる」そのエッセンスを紹介しよう。

 

なぜ、監督と選手だけに光が当たるのだろうー。筆者がプロ野球の取材をするようになってから、ずっと思ってきたことだ。なぜ、監督でもない、選手でもない、コーチには、光が当たらないのだろう。
 
戦前の1リーグ時代、本当に専任のコーチはいなかったチームには監督と選手がいるだけで、その監督も選手と兼任が多かった。これは各チーム、まだ選手が30人弱と少なく、二軍という育成システムが出来ていなかったこともあるだろう。
 
・監督と選手の間に挟まれたコーチ。それだけに中間管理職の悲哀さえ感じてしまうが、ひとつお断りしておくと、ここまでは一軍の話。これが二軍となると若干、話しが違ってきて、チーム成績に関して、一軍ほどの責任は二軍の首脳陣には負わされない。そのかわり、将来のある若い選手をしっかり育成していく上での責任は重い。重いのだが、二軍の首脳陣に光が当たることはゼロに等しい。選手にしても、二軍から一軍に上がって結果を出すまでは注目されないのも同然だ
 
慶應義塾出身の新田恭一は、ゴルフスイングからヒントを得た新田理論」で知られ、ゴルファーでもあった。プロでプレイした経験はないが、社会人野球で活躍しており、52年に松竹で監督、53年に大洋松竹で総監督をつとめたあと、巨人の二軍監督、近鉄のヘッドコーチ、技術顧問などを歴任した。この新田の指導を受け、球史に名を残す選手に小鶴誠がいる。戦前の42年から5球団を渡り歩いた右打ちの強打者で、松竹でプレイした50年にシーズン51本塁打、161打点、143得点を記録。史上初の年間50本超えを果たし、打点と得点は2021年現在の歴代最高記録である。
 
 
・もうひとり、王貞治一本足打法を指導した巨人の打撃コーチの荒川博だ。王はそのとき、プロ入り3年間で合計37本塁打まだ素質が開花していなかっただけに、荒川コーチへの期待は大きかったようだ。「びっくりしたのは、川上さんが『王は素質はいいんだけど、なまけものでいけねえ』って言うんだよ。オレ、全然、知らなかったんだ。王は真面目だとばかり思ってた。そんなに酒飲むってことも知らなかったの。ただ、それは努力に仕方を知らないだけで、やり方を教えてやるのがコーチなんだから、一概に『なまけもの』って決めつけてもいけないんだ」
 
僕はいつでも人を教えるときにね、この子にいかに野球を好きにさしてやるか、そこから始めるの。そのためには大きな夢を持たせる。夢があって、努力するんであって。だから、3年間なまけて遊んじゃった王にやる気を出させるためにね、あのベーブ・ルースの記録を抜けるのはおまえだけだよ』と。これ、ホラだよね。3年間で40本も打ってないんだから。でも、ホラは決して嘘じゃないんだよ。夢なんだよ、目標なんだよ」
 
「僕はもちろん、巨神おときは長嶋にも教えていたわけだし、王のほかに、僕のところに毎晩、習いに来た選手もいたよ。だけど、その選手たちに、一本足打法はさせなかった。なぜかといったら、一本足にしても飛ばないもん、そんなに。だから、バッティングっていうのはその人に合うものじゃなくちゃいけない
 
西鉄の主軸打者として活躍した中西太当時の三原脩監督について中西に尋ねると「ワシにはほとんど何も言わなかったね。ワシがバットを振っておるのを見とるだけだった。あとで聞くと中西がうまく当たらんようなことがあっても、いらんこと言うな』と先輩に話してっくれていたらしい。この子には技術論を言うと、気にして余計悪くなると。打撃コーチなどいないような時代やからね。とにかく、ワシに限らず、若い人が入ってきたときはまず思い切りやらせていた。それで本当にうまくいかんときは言うと。ワシも選手を指導するときはそうだけどね」この時代の監督は、技術指導はもとより、育成を兼務する必要があったと言える。
 
・ヤクルトで通算2173安打の若松勉阪神の「史上最強の1番打者」の真弓明信を指導した中西。ワシはこれまで一度も選手を教えたと思ったことはないよ。人はワシのことを『どこでも教えに行く』と言うが、ワシが選手に教わりに行ってるんだ。選手が持っとる宝物を教わりにな。もともと、プロ野球に入ってきた選手はどこかしら、必ずいいものを持っておるんだから。理屈と理想論だけかざして、教えてやる、という感覚を持ったらね、指導者じゃないということ。経験と体験、それがあればいい。理屈なんてあとからついてくる、自分に合うものを見つけ出してくれるのがコーチであり、そういうコーチだからこそ選手が聞く耳を持つ。選手と一緒になってやらなきゃ。誰もひとりじゃできない」
 
・通算2452安打、465本塁打、1400打点の土井正博引退後は西武、中日のほか、指導者人生は16年におよんだ。西武でも清原和博秋山翔吾を一人前の打者に仕立て上げたと伝えられる。「恥をかくこと。選手に聞かれて、僕がわからんかったら、例えば、名球会で知ってる人に聞いて、答えを出してあげる。選手もそうですけど、コーチだって恥をかいて聞きに行って、的確な答えを出すことが大事と思っています。西武で松井稼頭央スイッチヒッターにしたときに、スイッチで成功した人に会わせて、どうするかと話したこともありました。あとは左バッターの人ですね。右打ちの僕ではわからないところもありますから、会わして、教えてやってくれと。だいぶ、みなさんにお世話になりましたよ」
 
・「以前に比べて、フロント、監督の顔色を見るコーチが多くなっています。クビになったらどこも働き場所がないから、ということで。そういうコーチは選手がミスしたら怒るのが精一杯なんですけど、怒ったら何も返事はないわけですよ。教えるということは根気がいるし、間違ったことは言えないし、ちゃんとした理論を教えないことにはダメなんです。そこでもう選手の伸びが止まってしまいますから」
 
根本陸夫「日本のコーチというのは、やる機会は多いけれども見る機会は少ない。やる以前に、自分の観察眼をどれだけ養うかが問題なのであって、観察力がアップすれば、その選手の欠点やよいものが、どこにどれだけあるのかが見えてくる。が、とかく最近のコーチは、自らが動いて、すごい指導をしたと思い込む、自己満足に浸っている人が多い」
 
 
橋上秀樹「選手には、『練習は量でもないし、時間でもない。結局、どれだけ自分をよく知って、役割を知って、目標設定しているかどうかだよ』と言ってたんです。まずは『己を知れ』ということですよ。極端な話、それだけでいいと思うんです。練習量じゃなくて。結局、自分が現役のころを振り返ってみても、本当に身になる練習ができたのは、自分をよく知ったあとでしたから。ヤクルト時代、野村克也さんが意識を変えてくれました。まさに『己を知れ』は野村さんから言われた言葉なんです」
 
・「選手はみんな個性があります。何事も一度に、全員にしっかり伝えるのは難しいものです。そこで個別に、この選手には少し話を多めに、とか、この選手にはあまり言わずに、逆に聞きたいと思わせるように、とか。強弱、メリハリをつけられたのも、接客業の経験が生きたと思うんですね。だから、あのゴルフショップでの4年間がなかったら、私は長くコーチをできなかったと思いますし、そもそも球界に復帰することもなかったんじゃないか、と思います」
 
・「その選手に眠っている能力があれば、目覚めさせてあげる。それが私のいちばんの仕事なのかな、と思います。もともと持っている能力は高いわけですから。プロ野球に入ってきた以上は。ただ、その中で一流になっていく選手と、そうでなくなる選手の境は、やっぱり意識の問題。自分自身を、己のことをどれだけ理解できるかだと思っています」
 
吉井理人「当然、コーチもチームの勝利を目指してやっているんですけれども、コーチとしてのひとつの軸はまた別のところにあると思います。その軸というのは、チームの勝利よりも選手の幸せを考えてやることです」。選手自身「自分はコーチのおかげで成長できた」とは思わずに、「自分でできた」という感覚に持っていくのがコーチのいちばんの役目なのだと。すると逆に、コーチが「この選手は自分の指導のおかげで成長できた」つまりは、オレが育てた」などと言うことはあり得ないわけだ。
 
大村巌『あなたはどんなタイプ?』『どういう練習をしてきたの?』と聞くことから始める。聞いて、その選手のプロセスを知ったからこそ、自分が言う言葉を用意できる。選手もこの人は僕のことを多少なりとも知ってくれている』といった安心感があると、口を聞いてくれる。だからまず。心を開かせて、今、何に取り組んで言えるのか、どう思って取り組んでいるのか、というところは徹底的に聞いて、こちらはその取り組みをサポートするような感覚でしたね。それでうまくいかなかったら、じゃあ、こういう方法があるね、と。違う引き出しを与えて『やってみたらどうだろう』って、うながすんです」
 
 
石井琢朗」「鳥越裕介」「平井正史」「指導者のライセンスが存在しない野球界」

など。

 

時代も変われば教育も教え方も変わっていくんだね。オススメです。(・∀・)