「酒にも色々あるけれど、飲まずにいられないのは皆同じ。今日も酒場を漂流する“あたし”こと、なぎら健壱のおかしさと哀しみに彩られた呑兵衛エッセイ。出会いがしらに「山!」と合言葉を発する見知らぬ男に対し、咄嗟に「川!」と答えると「あのことは万事うまくいった。心配するな」。うまくいったならいいか~と思った次の瞬間「よくねぇよ。あのことって何だよ」。そんなエピソードが満載。アルコールの匂いがムンムンの酒場写真、オリジナル〈蔵出し〉原稿も収録」そのエッセンスを紹介しよう。
【漢(おとこ)、ジミー時田!】
芸能界で酒豪がピッタリあてはまる人間に、故・ ジミー時田氏がいる。日本カントリー界の第一人者である。 そのジミーさんが世界中のカントリー歌手が一堂に会して唄を競う という、アメリカの大きなイベント招かれ、 なんとジミーさんの唄が世界の競合を抑えてNo.1となった。 本場のアメリカにおいて、文句なくジミー時田の唄は、 世界一とお墨付きをもらったのだ。その凱旋ライブが、新宿『 ウィッシュボーン』というライブハウスで行われた。 ジミーさんは酒に酔うほどにご機嫌になり、歌いまくった。 何回目かのステージで地味ーさんは、No. 1の症状を取り出した。「みなさん、 これがその時にもらった物です」それを頭上に掲げ客に見せる。 客はヤンヤの喝采である。ところが何を思ったかジミーさん、 おもむろにその賞状を破き始めたのである。客は一様に「あっ!」 と息を呑んだ。時すでに遅し。賞状は細かくちぎられ、 それを花吹雪よろしくステージにばら撒いた。「 私はこんな紙切れをもらうために歌ったわけじゃない」 そういい放つとバンドに眼を送り、再び歌い始めた。 あたしはジミー時田に男を見た。自分もこうありたい、 あたしは思わずうなってしまった。
それから三ヶ月のほど経った頃であろうか、 ジミーさんのお宅へ遊びに行った。部屋に入った途端、 壁に眼が吸い寄せられた。 そこにはビリビリに破られた賞状がセロテープで補修され、 額に入って飾られていた。さすが漢!
「ハムエッグな夜」「天抜きで一杯」「食堂車」「カウボーイ」「ホヤのお代わり」「シュールはシュール」(シュールストレミング)「神聖な酒」「バーボンをロックで」「ハシゴ酒」「今の唄、満点!」「おじいちゃんの四合ビン」「減らない魔法のボトル」(紹興酒のカメ)「悪魔の酒」「洋酒、カムス」「先輩!なんだ後輩!」「死んだ親父に」「寡黙なお父さん」「ジョン、見てみろよ」「一曲数万円」(イーグルスライブとトイレ)「食べ物は残しません」「部長すみません」「ポップアート」「名曲に酔う」「チンカチンカ」「魚の王様」「論されれました」など。
いいなあ!ワタシは、やっぱりフォークシンガーとしてのなぎらさんが好きだなあ!♪オススメです。(・∀・)♪