「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「久世光彦vs.向田邦子」(小林竜雄)

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夫が縁側で爪を切った時、その爪を踏むと痛いというものだった。男の爪は硬いということだが、こういう視点は男の脚本家でも思いつかないことだった。それを家庭の中に宝石が落ちている」シーンと久世は褒めた。すぐに役者たちも、「脚本(ホン)が面白い」と言い出した。それで久世たちスタッフは向田起用に自信を持ったのだ。
 
・一晩カーテンを閉めないままの窓が白みかけていた。街路樹の木の葉が風に舞う向こうに、青山墓地が見えて私はドキッとした。ドキッとして振り返ると、向田さんはソファに端然と坐ってきれいだった。疲れた顔だったが、伏し目がちできれいだった。私と目が合うと、どうしてかニコッと笑って台所へお湯を沸かしに立って行った。ボッというガス野音がする。長い夜が終わろうとしていた。こうやってなんでも終わるのだ。とにかく終わることは終わるのだ。私はそれでいいが、向田さんはいろいろ忙しくなる。入院の支度とか、猫の預け先の算段とか、約束していた原稿の断りとか、黙って考え込む暇もないことだろう。それをあの人は、順序よくテキパキとやってのけるだろう。まるで友人の入院の段取りをつけるみたいでー。そう思ったら急に涙が出てきた。私は、少なくともあの一夜だけは、あの人を愛していたのだと思う。
 
さびしい恋をしていた。あの人の恋は、みんなそんな恋だった。ここで自分の気持ちを通したら、きっと誰かが一人不幸になる。そういう赤提灯の歌謡曲の世界で泣いていた。ちっともおしゃれでない殺伐とした風景の隅っこで、じたばたしていた。なんとなく、私は知っていた。なんとなく私が知っていることを彼女も知っていた。
 
通俗的な言い方だが、棺桶の蓋を閉じて人生が終わるときには、みな辻褄が会っているのではないか向田邦子とは長いつき合いだったが、やはりあれ以外の死に方はなかった気がしている。辻褄が合っているなと思う。彼女は昭和に生まれて昭和に死んだ。ひばりや裕ちゃんと同じように、あれはひとつの形なのだろうと思う。
 
さくらの唄なかにし礼三木たかしせい子宙太郎-忍宿借夫婦巷談、主題歌:さだまさし「桃花源」音楽、清須邦義さんだったんだねー!懐かしいなあ。普段はドラマを観ないワタシだけど、向田作品だけは別。観てみたいわ。オススメです。(・∀・)

 

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