「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「女ともだち 靜代に捧ぐ」(早川義夫)

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「酒場のギター弾き」「流し」として数々の歌を聞き、歌っているワタシ。たまに「いちばん好きな曲は何かですか?」「いちばん好きなミュージシャンは誰ですか?」と訊かれるが「おそらくみんな知らないですよ」というのだが、それが、早川義夫だ。伝説のバンド・ジャックスのリーダー。23歳で音楽業界から引退をして、23年後に復帰。彼の音楽観、言葉、メロディーは共感を通り越して「そーそー!」と頷いてしまう。まさにワタシと一致しているのだ。彼の恋のハナシっていいなあ。こんなこと歌っていいんだ。歌詞にして、本にしていいんだ。こんなふうに歌が生まれるのだ。そうだ、そうだよ。ワタシもそうだもん。
 
さてこの本。待ってましたよー!最新刊!
ある日から、音楽活動も執筆も全てやめた。妻の病気が判明したから。早川義夫が妻に贈る鎮魂エッセイ」そのエッセンスを紹介しよう。

・恥ずかしい話である。バカみたいな話である。夫が浮気をしている最中に妻に「どうしよう」と相談する。そんなみっともない男がいったいどこにいるのだろう(ここにいる)。相談したのはこれ一度きりであるが、当然、しい子はあきれ返り、その後も時折この話を持ち出しては情けない男」としてからかわれる。
 
・23歳で音楽をやめ、その後本屋を長い間営んでいたわけだが、考え方や気持ちは若いころと何一つ変わっていない。何も変わっていない自分を表したかったけど、歌作りのおいて、ストレートな言葉はなかなか出てこない。つくづく中年男にラブ・ソングは似合わないなと思った。
 
・彼女との思い出はいっぱいある。ある女性シンガーからキスマーク付きのラブレターをもらったので自慢したら「やっちゃえ、やっちゃえ」とけしかけられた。そういう女の子だった。変わっている。ほかに好きな女の子ができたらどうする?」と聞くと悲しいけど、いいよ。我慢する」と言う。「どこに出してもいい」「やり逃げしてもいい」と言う。駆け引きのないその精神がキレイだ。あるのは「好き」という気持ちだけだ。圧倒された。「いやらしさ」と「美しさ」と「悲しみ」が全部同じ意味に思えて『H』という歌が完成した。
 
「好きになってしまったのだから、それをやめろとは言えないでしょ」がしい子の嫉妬しない理由だ。僕は違う。もしも、しい子に好きな人ができたら、おそらくいっぱい嫉妬してしまうだろう。
 
・昔、映画作家の原將人さんが「どうしたら作曲出来ますか?」と問うてきたので「音楽をいっさい聴かなければできます」すまーして答えたことがある。現に僕はいっさい音楽を聴かない。自分に必要なメロディー、自分が発したいメロディーは、無から生まれるからだ。
 
・人はみな、何かしら、人に言えない秘密を持っている。
 
「君の顔が好きからあそこも好き」と話したらそれを歌にしてほしい」と言われた。顔や髪型を褒めるのと同じように、あそこを褒めたい。みんな素敵だ。お嬢様なのに、すごい迫力だとか、意外性があるとさらにいい。好きな人は全部愛おしい。
 
娘がもうひとり生れたとでも思っているふしがある。彼女が喜んでくれれば、しい子も嬉しいのだ。どうして似合うのかどうかわかるのかというと、僕の女性の好みや服の趣味を市立っくしているからだ。そして、ワイシャツやTシャツ、ハンカチやパンツにまでアイロンをかけてからおじゃまんこしました」と言って、さらりと帰ってゆく。
 
「離婚して欲しいと頼んだら、しい子してくれる?」と尋ねてみる。すると最初はもらうものもらって行きますからいいですよ」とつまらない返事だったので、がっかりした。でも次からは違った。「いいわよ。じゃあ、今度は、私が愛人になるわ」とおかしなことを言う。冗談か本気かがわからない。その次は、「いいわよ。そのかわり、私をペットとして連れて行ってちょうだいね。ベッドのそばでもおとなしくしてるから」と健気だ。しい子は、僕を笑わせる係だった。唯一の女ともだちだった。
 
・しい子に「僕のどういうところが好き?」と尋ねたことがある。すると即座に「性格の悪いところ」と答えた。つまり、人間の長所なんていうのは案外とつまらないものであって、欠点こそ魅力を感じる要素が含まれているのだということである。僕もそう思う。好きになった人の欠点が愛おしい。欠点を好きになれなければ、好きとは言えないのではないか。
 
・「俺がもし、刑務所に入るようなことになったら、とても耐えられそうにないから、そのときは、しい子が犯人っていうことにして、身代わりになってくれる?」とお願いすると、「いいわよ、私、誰とでもうまくやっていけるから」と、いとも簡単に引き受けてくれる。「私がもっと若ければ、風俗で働いて、よしおさんにお小遣いあげるのになー」とも言ってくれた。しい子は、そもそも男が好きじゃないし、仕事の内容もわかっていないから、働くのは無理だと思うが、風俗への偏見はなかった。
 
僕はもう駄目だ。曲はできないし、文章も書けない。恋が終わったからである。伝えたいこともなければ伝えたい人もいない。それでも僕は呼ばれれば歌いに行く。歌にのせて今の自分の気持ちをあらわすことができる気がするからだ。その時だけ僕は生きている
 
浜田真理子さんと楽屋と恋の話をした。恋をすると最後はボロボロになってしまうでしょ。だから、わたし今は仕事に集中しているの。シャッターを下ろすと誰も寄って来ない」一途であればあるほど身も心もボロボロになってしまうことに僕は共感し「そうだね」と相槌を打った。
 
・よく、写真には撮る側の気持ちが写るって言われるよね。同じように、相手側の気持ちも写ってしまう。お互いがお互いをいいなって思わなきゃ、愛し合ってなくちゃ、いい写真は撮れないだろうな。恋愛と同じだ。文章も同じで、もし、いい文章が書けたときは、それは自分が書いたんじゃなくて、感動が書いてくれたんだ。自分が書いたんじゃない。歌もそう。自分が歌ったんじゃない。歌わせてくれたんだと思う。僕一人で作ったんじゃない。相手があってのものなんだよね。
 
・自己紹介からして僕は、「笑えること、感動すること、Hすること、それ以外に興味はありません」と書いている。それは今も変わらない。一つに絞るとすれば「感動」だと思う。感動」がなかったら終わりだ。「感動」さえあれば生きていける。そして、この三つは、意外性がなければ生れてこない。
 
・インタビューの最後に「早川さんの歌うエネルギーは何ですか」と尋ねられた。「もちろん、女の子です」と即答したかったが、悲しいことに、最近はそのエネルギーもだんだん薄れてきたから返事に困った。僕の生きていく歓びは何だろう。わからなくなってきた。
 
・しい子を抱きしめてあげたかった。思いっきり抱きしめてあげればよかった。ふざけてではなく、ぎゅっと抱きしめてあげればよかった。
 

もうナマで聴くことはできないのかもしれない。吉田拓郎は、永遠のヒーロー。早川義夫はなんだろう!?鏡の中のもう一人の小野塚テルなのかも。早川義夫ファンといろいろなこと話してみたいわ。超オススメです。(・∀・)

 

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