へー!こんな本があったんだっ!向田邦子さんの弟さんの本だよー!赤裸々だなー!身内だけにこんな見方をするんだねー!(・∀・)
「姉に似た達意の筆で弟が描く作家の素顔。好奇心が強くお転婆で、おだてに弱くせっかちで、やさしい人。生き生きと甦えるなつかしい面影――好奇心旺盛でお転婆で、おだてに弱くせっかちで、人には見せない地道な努力家、家族思いのやさしい長姉……。実弟が遠慮なく、あたたかく語る、素顔の向田邦子像。いきいきと甦(よみがえ)る、早世した稀有な作家の、なつかしい面影。姉に似た達意の文章で、もの書きという愉快な変てこ人間を描く、しみじみ楽しい好著」そのエッセンスを紹介しよう。
・他人(家族も含めて)の前では、 自分を単純でオッチョコチョイと思わせる演技をしながら、 あるいは優雅に水に遊ぶ水鳥の姿を見せながら、その実、 水面下で命がけで水かきしていたのではないか、 と思われてならない。もっと、これだって私の勝手な想像で、 本人はもっと気楽にやってたかもしれない。いったい何人の人が、 何本の尻尾を掴んでいるのだろうか。中には、 本人がそっと引っ込めた尻尾もあっただろう。 いちばん多くの尻尾を掴んでいたのは、父ではなかったろうかー。
・姉がひとの物をねだる手つきは、女にしては幅の広い手、 短い指が、まるでガラス窓に吸い着くヤモリの指そっくり。 指先に吸着盤があるかのように、吸い取っていった。
・姉が本当に嫌いだったのは、 もっと人間のうちにあるものー折り目、けじめ、 礼儀のないこととか、本当の価値がわからないのに、 ただ物だけの物欲とかー。
・もし、姉が長い間病床に……考えてみる。確かにそれは、 時間をかけて死を少しずつ周りに納得させてくれる。でもこれは、 エエ格好しいの姉には似合わない。といって今度のように、 突然消えてしまうのは、 いくら他人をびっくりさせるのが好きな人とはいえ、 度を超えている。動いている時と、動かなくなった時の、 両方見ているのは私だけ、ということになる。
・「私は小物だから」というのも、姉の口グセだった。 デッカイことができないというのである。 大人物よりも小人物に興味があり、歴史上の名だたる人物より、 路地裏の無名の人物のほうに興味をひかれるというのである。 その後きまって、私は小物だからーとなる。
・何か、あたらしく始めようとする時、姉は、事前に、 独りひそかに練習しておいて、ある程度サマになってから「☓☓ やりたいんだけどー」と言う。では、と教えてくれる人がいると「 今日はじめてなんです」と言う。「はじめて?すごいですねえ」 褒められて、得意気に鼻をふくらませ、 わざとガニマタで歩いてみせたりする。ゴルフも、 ボーリングもそんな風にしてスタートしている。 地道な努力をしない怠け者、と自分では言っているが、 それは一種のポーズで、完全主義者には、 いつだって地道な努力が、どこかにひそんでいるのである。 他人さまに、ぶざまな、みっともない姿はお見せできない。 つまり、エエカッコシイの姉である。 ひとさまにカッコイイ姿をお目にかけるまでの努力は、 カッコ悪いのである。
いいねえ。向田邦子さんのような姉貴が欲しかったな。オススメです。(・∀・)