落語やお笑い、芸人が好きだ。その生き方が好きだ。何度かプロの芸人にお会いしたがプロとアマチュアの差を思い知らされた。プロのおもしろくない人と、アマのオモシろいヤツだとプロの方がオモシロイっ!!!(・∀・)
さてこの本。「落語立川流。実力者揃いの精鋭集団である。その中にトンでもない落ちこぼれがいた。前座生活は実に16年半。その間、破門は3回。それでも諦めずに談志にくらいつき、ようやく二つ目に昇進。立川キウイ。落語史に永遠に名を刻むであろう(違う意味で)この男の前座時代を、余すところなく描いた一冊。蹴られても突き放されても、決して談志の弟子をあきらめない。愚直な男の人生に、きっと貴方は涙を流すでしょう......情けなくて。世知辛い世相を吹き飛ばす、爽快感と笑い、そしてちょっぴり涙の詰まった一冊!」そのエッセンスを紹介しよう。
・関東では、落語界の団体は「一党一流二協会」 だなんてこと言いまして、まず「一党」。 これは三遊亭圓楽師匠率いる圓楽党で、 今の圓楽一門会でございます。で「一流」。 ここが私が所属しております、談志率いる立川流。「二協会」 とは、落語協会と落語芸術協会。 これが関東の落語家の勢力図といいますか、分布図でございます。 わが立川流は、「落語界の北朝鮮」と呼ばれておりまして、 だから「師匠」とういうよりは「将軍様」 といったほうがいいかもしれません。なので「破門」ではなく「 脱北」みたいな。ちなみに、私は過去三回、脱北したんですけど、 その都度、戻ってきましてね、 実に将軍様に従順な人民なわけでございます。
・前座時代は修行期間ですが、立川流では懲役、いや、あの『 蟹工船』の匹敵する、地獄の日々が待っております。 十六年半も前座をやりました。 あのスケートの浅田真央ちゃんが生まれて世界選手権で優勝する、 この期間、私はずっと前座だったんですね。まあ、 同じ人生の時間、色々な使い道と成果があるわけですが、 長いんだか、あっという間なんだか……ま、長いんですけどね。
・師匠と一緒に都庁に行きまして、 ロビーでエレベーターを待っていたんです。年配の方が、「 すみません、このエレベーターは上に行きますか、 それとも下ですか」と師匠に聞いたんですよ。そうしたら「 横には行かねぇな」そういう人です師匠は。
さて、都庁からの帰り道ですけれども、「キウイ、 お前に寿司を食わせてやる」店に入ると、「 お前はバカだから教えてやる。あれが板さんでな、 これがカウンター、これが椅子だ」で「板さん、 こいつはキウイっていうんですが、人間で、俺の弟子なんです。 こいつに寿司を二人前、握ってやってください。こいつは前座で、 一番下の身分なんで、ネタはなしで頼む」なので、 私の前にズラズラズラーっとシャリだけが二人前、並びました。 カラスが白いといわれれば、白い。そういう世界ですからね、 食べましたよ。
この時、初めて知りました。寿司というのは、 シャリとネタが一緒になってるから、美味しいんだって。 でどうにかこうにか食べ終えたら、師匠は「キウイ、 どれが一番美味かった?」みんな同じですよ。で、私、 ウニが好きなもんですから、「師匠、ウニが美味かったです」 すると師匠、「えっ、どこにあった。お前、 俺にナイショでウニ食ったのか」
・突然「キウイ、サウナに行くぞ」そう言われて、 一緒にてくてく歩いていきますと、「これがサウナだ」 と師匠が指差したのが、何と電話ボックスですよ。 確かにカンカン照りの中、 締め切った電話ボックスの中はサウナ状態です。すると、 師匠は中に入って電話をかけ始めるんです。待っている間、 日射病で倒れそうでした。 しばらくして師匠はボックスのドアを開けて、 気持ちよさそうな顔をして「キウイ、お前もいい汗かかないか?」
・兄弟子方にしたら、 師匠も昔に比べたら丸くなったというかもしれません。でも、 研ぎ澄まされた日本刀の刃先に、 虫がとまっただけで二つになってしまうような、 そんな感覚的な怖さを師匠に感じるのは僕だけではないはずです。
・タレントと芸人の違いは「楽屋のにおいがするかしないか」。 雰囲気というか空気、 その人らしさといってもいいかもしれません。やはり、 タレントは仕事。しかし、落語家や芸人は違います。生き方です。 タレントは、自分のやりたいこと、いいたいことを我慢して、 抑えて、視聴者やファンの望む通りの存在であろうとする。 芸人は逆。自分の好きなことしか、基本的にやりません。 自分の世界の生きている者と、そうでない者が集まる場所。 芸人は楽屋、タレントは控室。 おのずと匂いが違ってくるのは無理もありません。その点師匠は、 ことさら自分の世界を曲げずに生きています。それ故、 なかなか理解に苦しむことを言う場合があります。
いや〜談志師匠、スゴいな〜!冒頭の師匠のエピソードだけで読む価値があるなあ。なかなか夢が実現できない人には勇気づけられる一冊。オススメです。(・∀・)