・おふくろの書棚にある医学書の、 数々の女性器の写真がおれの性の目覚めを促した。 中学生になって、とある本に書いてあった「女の子の場合、 生まれたときから卵巣の中にはすでに卵子のもとになる数百万個の 原始細胞が詰まっている」という文章におれはショックを受けた。 ゴキブリをたたきつぶしたときに、 腹の中から卵が飛び出てきたのを見るような、 そんな気持ち悪さを感じた。 大好きだったイクラの醤油漬けが食べられなく鳴った。 教室で隣に座る女子の腹にはつぶつぶの卵がびっしり、 と考えた途端、口のなかにすっぱいものがこみ上げてきた。 半年くらいは性欲も失せてしまった。
・いつの間にかそんなことも忘れていたのに、おれは今、 松永の腹いぱいに詰まった小さなつぶつぶをふと想像してしまい、 ため息をついた。男も女も、やっかいなものに体を抱えて、 死ぬまでいきなっくちゃいけないと思うと、 なんか頭がしびれるようにだるくなった。 そのだるさを消すように、松永に激しくキスした。
・「好きな人のこと考えていたでしょ? 責めてるわけじゃないんだ。そんなこと……多分、 誰だってするんだから」と言いながら、 日向さんはティッシュペーパーを丸めて、ゴミ箱に投げ入れた。「 正直に言えば……、ぼくにも好きな子がいて、 七奈ちゃんに触れながら、その子のこと考えてた。 七菜ちゃんがその子だったらいいなって」
性描写がリアルだなあ。そうだよなあ。そうだったよなあ。あの時代のことがよく表現できたなあ。オススメです。(・∀・)