「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「クスノキの番人」(東野圭吾)

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全作品を読破している東野圭吾。この本も感動だなあ。あれっ!?殺人事件が起きない展開って珍しいよね!?新たな境地にたどり着いたようなカンジだね〜!いつもながら、さまざまなテーマや社会問題が盛り込まれているなあ。今回は、犯罪と社会復帰、認知症成年後見と相続、ビジネスの世代交代、親子と教育、世代交代、デジタルとアナログ、効率と伝統、後悔と懺悔と挫折、目に見えないスピリチュアルな力が盛り込まれている

 

その木に祈れば、願いが叶うと言われているクスノキ。その番人を任された青年と、クスノキのもとへ祈念に訪れる人々の織りなす物語」そのエッセンスを紹介しよう。
 
・「豊井社長がいってたよ。欠陥のある機械は、いくら修理してもまた故障する。あいつも同じで所詮は欠陥品。いつかもっと悪いことをして、刑務所に入るだろうって。どうかこれからの生き方で、その予言が的外れだったことを証明するように
 
・何かが動き出しているのを玲斗は改めて感じた。その何かを人生の歯車」といってしまうのは、少々大げさかもしれないが。
 
・「たぶん、あれは遺言のようなものだ自分が生きているうちに、子供とからに何らかのメッセージを残す手段なんだと思う。念じるんだと思う。念じたことがクスノキに残るんだ。コンピュータでいえば、クスノキ記憶媒体みたいなものなんだと思う。で、血の繋がりのある者だけが、それにアクセスして記憶されたメッセージを取り出せるそうとしか思えなくなった」
 
・「言葉の力には限界があります。心にある思いのすべてを言葉だけで伝えることは不可能です。だからクスノキに預かってもらうのです。具体的には、新月の夜、クスノキの中に入って伝えたいことを念じます、そのことを私共は預念と呼んでいます。預念する人のことを預念者といいます。クスノキは預念者の思いのすべてを記憶します。そして満月が近づけば、それを発します。クスノキに入ればその念を受け取ることができます。ただしそれが可能なのは血縁者だけです。こういうお手紙を残しておられたということは、お兄様はお母様に受け取ってもらいたかったようですね」
 
・この旋律はー。愕然とした。この曲の意味がわかったからだ。これは喜久夫から貴子への贈り物なのだ。耳が聞こえない中、喜久夫は再び音楽への道を探し求めていたもちろん演奏などできない。しかし頭の中でなら、旋律を生み出せる。記憶にあるピアノの音を蘇らせ、この曲を作ったのだ。貴子にために、これまで自分を支え続けてきた母親に捧げるために。
 
「きくおの……きくおのピアノ……きくおの……」何かに取り憑かれたように繰り返している。かあさん、といって佐治が立ち上がった。「きくおが弾いてる。きくおだ。ああ、喜久夫だ。ああ、きくお、ああ……」貴子は両手で口元を覆った。やがて彼女の目からぼろぼろと涙が溢れ出した。佐治が母親の肩に手を置いた。「ああ、そうだ。これは兄貴の曲だ。お袋、兄貴の曲なんだぞ。兄貴がお袋のために作った曲なんだ。耳が聞こえなくなったっていうのに、頭の中で、頭の中だけで作った曲だ。しっかりときいてやってくれ」
 
・「忘れるってことは、そんなに悪いことでしょうか。不幸なことでしょうか。記憶力が落ちて、日々のいろいろなことを覚えていられなくたって、別にいいんじゃないですか」
 
「一つだけ、どうしても自分を許せないことがあるのです。それは唯一の妹に姉らしいことを何ひとつしてやれなかったことです。私は本当に愚かでした」自分は何と愚かだったのかと嘆かずにはいられなかった。何者にも代えがたい妹に、手を差しのべてやらなかったのだ。姉妹らしく接したかったのだ。幼い妹の服を選び、髪型を整えてやりたかった。自分好みにかわいく着飾った彼女と町を歩き、おいしいものを食べ、楽しいことに出会い、二人で笑いたかった。できなかったのではなく、しなかっただけだ。
 
・「あなたのはわからないと思います。若いあなたには。覚えておきたいこと、大切な思い出、そうしたものが指の間から砂がこぼれるように消えていくんです。その恐ろしさがわかりますか。知っていた人の顔さえ、次々に忘れていくんですよ。いつかきっと、あなたのころも忘れてしまうでしょう。それどころか、忘れたという自覚さえなくなるのです。それがどれほど悲しいか、辛いか、あなたに分かる?」
 
・「たしかに俺にはわかりません。でもそこがどんな世界なのか、千舟さんだって今はまだ知らないでしょ?忘れたという自覚さえないのなら、そこは絶望の世界なんかじゃない。ある意味、新しい世界です。次々にデータが消えるなら、新しいデータをどんどん書き込んでいけばいいじゃないですか明日の千舟さんは、今日の千舟さんじゃないかもしれない。でもそれでもいいじゃないですか。俺は受け入れます。明日の千舟さんを受け入れます。それじゃいけませんか
 
後半の5ページから涙が止まらない。そしてラストの一行で涙腺崩壊……(T_T) 場面を思い出すだけで涙があふれる……人の想いって、念って、親子愛、肉親愛って美しいねえ……。東野圭吾作品の中でもベスト10入りしちゃうな。超オススメです!(・∀・)  

 

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