「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「食堂かたつむり」(小川糸)

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([お]5-1)食堂かたつむり (ポプラ文庫)

([お]5-1)食堂かたつむり (ポプラ文庫)

  • 作者:小川 糸
  • 発売日: 2010/01/05
  • メディア: ペーパーバック
 

 

いいなあ!映画にもなったんだよね。以前からタイトルから惹きつけられてましたっ!こんな食堂があったら行ってみたいっ!

 

「おいしくて、いとおしい。同棲していた恋人にすべてを持ち去られ、恋と同時にあまりに多くのものを失った衝撃から、倫子はさらに声をも失う。山あいのふるさとに戻った倫子は、小さな食堂を始める。それは、一日一組のお客様だけをもてなす、決まったメニューのない食堂だった」そのエッセンスを紹介しよう。
 
食堂かたつむりはどうかしら?と、ひらめいた。あの小さな空間をランドセルみたいに背中にせおって、私はこれからゆっくりと前に進んでいくのだ。私と食堂は一心同体。一度殻の中に入ってしまえば、そこは私にとっての「安住の地」以外のなにものでもない。
 
・誰から教わったわけでもないのに、気がつくと私は、料理をはじめる前、いつもこの儀式をするようになっていた。顔を近づけて鼻を寄せ、彼らの「声」に耳を傾けるのだ。クンクンと匂いを嗅いで、それぞれの状態を確かめ、どう料理してほしいのか?を尋ねる。そうすると、食材たちが自ら、どう調理するのが一番ふさわしいのかを、語りかけてくれる。もちろん気のせいかもしれないけれど、私には確かに、彼らの発するかすかな声が聞こえるのだ。そして私は、心の中でひざまずき、料理の神様にお祈りした。どうか、無事においしいカレーが作れますように。
 
料理を作る、ただ、それだけで、私の中の一個一個の細胞が恍惚とした。誰かのために料理を作れるだけで、本当に、心の底から幸せなのだ。ありがとう、ありがとう。真冬の夜空に何回叫んでも足りないくらい、全世界の人々に聞こえるような大声で、心の声が枯れるまで、みんなに、この気持ちを伝えたかった。
 
イライラしたり悲しい気持ちで作ったりしたお料理は、必ず味や盛り付けに現れますからね。食事を作る時は、必ずいいことを想像して、明るく穏やかな気持ちで台所に立つのですよ。祖母が、よく言っていた言葉だった。私は再度深呼吸して、気持ちを落ち着かせた。
 
春の匂いをふんだんに含んだそよ風が、心地よく私の体を抱きしめてくれる。私にとって、料理とは祈りそのものだ。おかんと修一さんとの永遠なる愛への祈りであり、体を捧げてくれたエルメスへの感謝の祈りであり、そして、料理を作ることの幸せを恵んでくれた料理の神様への祈りでもあった。
 
巻末の「チョコムーン」もいいね。やさしい気持ちになれる。オススメです。(・∀・)

 

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([お]5-1)食堂かたつむり (ポプラ文庫)

([お]5-1)食堂かたつむり (ポプラ文庫)

  • 作者:小川 糸
  • 発売日: 2010/01/05
  • メディア: ペーパーバック