遅ればせながら最近気に入っている、中島らもさん。「躁鬱病は父親から、アル中は伯父から受け継いだ」という天才肌の文章を書くよね。
「冗談にもほどがない」「長いものには巻かれない」「残りものには福がない」。『今夜、すべてのバーで』を書き終えた頃、30代の中島らもが綴ったエッセイ集。男に好かれる男、女に好かれる女とは。学生時代になすべきこと、結婚について、食へのスタンス、文章の書き方など、笑いの奥に深淵がのぞくコラムの数々」そのエッセンスを紹介しよう。
・「この前、変な秘密パーティに呼ばれてね・ マンションの一室なんだが、 入り口で紹介者の名前を言わないと絶対に中にくれない」「ふむ」 「で、入るとね、全裸の男女がいっぱいいて、 それが全員体中にオロナインを塗りまくっているんだ」「 オロナインを?何なのそれ」「なんこうパーティだって……」
・大阪駅前第三ビルというでっかいビルがあって、 そこに使い捨てカメラの安売りやがある。 ワゴンにドテドテッとカメラが山積みになっていて嘘みたいな値で 売られているのだが、そのワゴンの上に貼り紙があって、 そこに広告コピーが書いてある。いわく「う・つ・る!!」
・中之島公園のタコ焼きの屋台。「おいしいタコ焼き。 200円でどやっ!?」「どやっ!?」と言われると「買います」 か「いりまへん」の二つの反応のどちらかをせざるをえない。 もし、これを本職のコピーライターが書いたらきっと、「 低脂肪なのに高タンパク、減る・シーフード、タコ焼き!」
・食堂でラーメンを食べていた友人が、 ラーメンの中に油虫の子供が浮かんでいるのを見つけ、 店のおばちゃんを呼んで文句を言った。と、 おばちゃんはその友人の背中をバシッと叩いて、「 若いもんが好き嫌い言ってどうするの!」
・「だいとくじはなぞのようちえん」=「大徳寺は謎の幼稚園」
・どおくまんのマンガ。青田赤道のクラスに転校生がやってくる。 どんな奴だろうというので興味津々の番長グループが頭を寄せ合っ てヒソヒソ話をしている。「おい。きいたか。 今度転校してくる奴な……」「なんや、どないしたんや」「ぶ…… 分数ができるらしいぞ」「えっ!?ほんまかっ」
・この前、 テレビのインタビューを受けてずいぶん困ってしまったことがあっ た。 受験なのに女の子に恋をしてしまって勉強が手につかなくて困って いる高校生の男の子にアドバイスをしれくれ、と言うのである。 これに答えるのはむずかしい。
「運が悪かったですね。 もし彼女を捨てて勉強ができるものならばそれに越したことはない 。ただ、それは結局恋ではなかった、ということです。 ほんとうの恋というものは、自己保存の本能をも突き破って、 ときには自分を死に至らしめるほどの、 あらがいようのなり力を持ったものです。制御できるとすれば、 それはつまり恋ではなくて、“性欲”とか“道場” とか他の言葉で代替できるものなのです」という風に答えた。
恋に一番似ているものをもしひとつだけ挙げるとするならば、 それは「病気」だろう。 それは人間を判断不能の状態になるまで熱であぶり、 好むと好まざるとにかかわらず人に襲いかかってくる。 受験期にそういうものに襲われた人に対しては、「 運が悪かったですね」 というよりほかにどんな言いようがあるだろう。
恋愛はたしかに「病気」で、 それはときには死に至る病であるけれども、同時にそれは「 世界で一番美しい病気」でもある。 かかった人は災難とも言えるし、幸運だとも言える。 恋愛が人間の魂を運んでいく高みというのは途方もないものだ。 そこまで人間を運んでくれるものといえば他には「宗教的法悦」 があるのみなのだ。高いところは怖いが気持ちがいい。 そこからは美しいものも醜いものもすべてが見渡せる。 一度そこまで昇った魂を地上へ引きずりおそせるのは、「失恋」 だけである。「受験」だの「親の説教」だの「自分の将来」 だのでは決してない。
その他、「冗談にもほどがない」「生きていた化石の話」「 これは日本語ではない」「男はなぜ女を見るとすぐ「したがる」 のか」「女はなぜ「させない」のか」「いまどきの格闘技」「 水テレビ」「日本で唯一の「デブ・フケ専門」のホモ雑誌『 サムソン』」「食へのスタンスについて(調香師)」
いいなあ、笑えるなあ。この破滅的(?)は発想、こんなふうになりたいなあ(笑)オススメです。(・∀・)