「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「生命式」(村田沙耶香)

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生命式

生命式

 

いや〜スゴいなあ!危険だなあ〜新しい価値観に引きずり込まれそうだなあ!!!村田沙耶香ってスゴいよなあ……。これ、百年後はこんなふうになるかもなあ…。

 

死んだ人間を食べる新たな葬式を描く表題作のほか、著者自身がセレクトした脳そのものを揺さぶる12篇。文学史上、最も危険な短編集」そのエッセンスを紹介しよう。
 
私が小さいころは、人肉は食べてはいけないものだった確かに、そうだったと思う。人肉を食べることが日常に染み付いた世界の中で、だんだんと自身がなくなってくる。30年かけ少しずつ、私たちは変容した。セックスというコトバを使う人はあまりいなくなり「受精」という妊娠を目的とした交尾が主流になった
 
・そして、誰かが死んだときには、お葬式ではなく「生命式」というタイプの式を行うのがスタンダードになった生命式とは、死んだ人間を食べながら、男女が受精相手を探し、相手を見つけたら二人で式から退場してどこかで受精を行うというものだ。死から生を生む、というスタンスのこの式は、繁殖にこだわる私たちの無意識下になった、大衆の心の蠢(うごめ)きにぴったりとあてはまった。
 
私は最近の人類の習性が、ゴキブリに似てきたような気がしている。ゴキブリは死んだ仲間を皆で食べるそうだし、死にかけのゴキブリは卵を大量に産むという話を聞いたことがある、もっとも、死者を皆で食べて弔うという部族はずっと昔からいたようなので、突然人間の中に生まれた習性というわけではないのかもしれなかった。
 
・夜、私と山本は連れだって、中尾さんの生命式へと向かった。生命式は生命の誕生を目的とするので、露出が激しい服や華やかな服装が好まれる。やっぱ派手にいかないとな、生命式は」
 
・山本の願い通り、皆が笑っていた。こんなにいろんな種類に、手間をかけて豪勢に料理されるのは世界中の人間の中でも山本だけと思った。
 
「なんだか、私たちって花粉みたいですね。一つの命が終わると、遠くまで飛んでいって、受精する」
 
「正常は発狂の一種でしょう?この世で唯一の、許される発狂を正常と呼ぶんだって、僕は思います」
 
 
「素敵な素材」「素晴らしい食卓=魔界都市ドゥンディラス」「夏の夜の口付け」「ポチ」「パズル」「街を食べる」「孵化」など。
 
……村田沙耶香の全作品を読もうと思ったけど、しばらく止めます。(笑)危険すぎる……。でもオススメです。(・∀・)

 

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生命式

生命式