図書館にずっと前に予約していて、忘れていて、やっと届いたのがこの本。「餃子のガイドブック」だと思ったら、小説だった!(笑)
国民的グルメ「餃子」はどうやって生まれたのか!?その起源が、いま明らかになる。首相暗殺に失敗した陸軍中尉のグンゾーは朝鮮半島にひん死の状態で流され、焼餃子を食べて生き長らえた。未体験の幸福感と美味――この究極の食べ物を世に広めるのが新たな使命だと気づいたグンゾーは旅に出る。マンドゥ、蒸餃子、ボーズなど様々な餃子に中国大陸で出会い、仲間も増えていく」そのエッセンスを紹介しよう。
・香ばしいにおいが漂ってきた。油で、 小麦の生地を焼くにおいだ。 肉の油が溶ける香りや香辛料に野菜が混ざった、複雑なにおいを、 男は感じ取ることができた。そのにおいを嗅いでいると、 長い時間をかけて黙らせた腹が、悲鳴を上げ始めた。
味わったことのない、うまみの広がりだった。肉の味がする。 野菜のうまみも混ざっている。ショウガのようなにおいに、 こしょうのツンとして風味も感じられる。それらは、 渾然一体となって一つの食べ物を形成しており男の記憶には存在し ない味だった。なんだ、これは香ばしさに、 段階を経て変わっていく風味。あふれるようなみずみずしさに、 もっと食べたくなる挑発性。空腹や恐怖を忘れ。 男は無我夢中で口の中のものを咀嚼したかったが、 まるで胃の奥から手が伸びてくるように喉を通って、 役者たちは舞台を離れていった。体が熱かった。 これまでになり複雑で豊潤な味わいは男を興奮させた。 一口食べただけで額に汗がにじみ、欲望が抑えきれなくなる。
・「オレは餓死寸前で、胸も撃たれていた。 生に執着するつもりなどなかったのに、 それを食わせてもらった途端、死ぬわけにはいかないと、 俺の中で何かが目覚めた。この焼いたまんじゅうを、 もっと食いたいと、心の底から願った。そんな風に、 何かを望んだのは、生まれて初めてだ。 さっき食わせてくれたのは、何という食いものだ?」
「餃子……決めたぞ!俺は、究極の餃子を見つけ出す!俺は、 あの餃子に命を救われた!あんなにうまいものは、 もっと多くの人間が食わなければならない! 究極の餃子を探し求め、広く普及することこそ、 俺が新たに与えられた使命なのだ!」
・「餃子は、俺の心を強く揺さぶってくれた。 あれを食ってはじめて、 何かに熱中するという気持ちが理解できた。餃子は、自由だ。 人の数だけ、正解がある。中にどんな食材を入れてもいいし、 焼いても茹でてもいい。餃子を知った今、 国同士の争いなどちっぽけなものだ。縄張り争いをやりたければ、 飽きるまでやっていればいい。だがな。 究極の餃子への道を阻む者は、誰であろうとブチのめす」
・「この餃子には、 今まで餃子を作り続けてきた人たちの記憶が詰まっている。 多くの人の知恵や経験が、 餃子という形になって俺に恵みを与えてくれる。俺は、 この餃子を超えるような究極の餃子を作りたい」
特に第二部の、町中華の来香園、チェーン展開のミロク亭とシベリア食堂、タミオの冷凍餃子の攻防は一気に読ませるっ!!!あ〜〜餃子、作りたーい!!!食べたーい!!!読むのも超オススメです!(・∀・)