「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「数学者列伝 天才の栄光と挫折」(藤原正彦)

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数学者列伝 天才の栄光と挫折 (文春文庫)

数学者列伝 天才の栄光と挫折 (文春文庫)

  • 作者:藤原 正彦
  • 発売日: 2008/09/03
  • メディア: 文庫
 

ワタシは明治大学農学部を受験するときに、英語、化学、国語で受けて、数学を選択しなかったというくらい苦手な数学。(だって、数学を選択しなくても受験できるのよ、農学部はっ!(笑))

 

数学や論理的思考がホント、苦手。でも数学的な発想とか数学者の人生や功績について読むのは好きなんだよねー!♪
 
さて、この本。自らも数学者である著者が、天才数学者―ニュートン、「主君のため、己のため関孝和」、「パリの混沌に燃ゆ エヴァリスト・ガロワ」、「永遠の真理、一瞬の人生 ソーニャ・コワレフスカヤ」「南インドの魔術師 シュリニヴァーサ・ラマヌジャン」「国家を救った数学者 アラン・チューリング」「真善美に肉迫した異彩 ヘルマン・ワイル」「超難問、三世紀半の激闘 アンドリュー・ワイルズ」―9人の足跡を現地まで辿って見つけたものは何だったのか。この世にいて天国と地獄を行き来した彼らの悲喜交々の人生模様を描くノンフィクション大作」そのエッセンスを紹介しよう。

 

・神の声を求めた人アイザック・ニュートン
 
・幼少期のニュートンの胸の内は、彼が二十歳の時に記し告白に表れていている。そこには暗号代わりの速記体で、それまでに犯した58の罪が箇条書きされている。その一つに義父と母を殺し、家を焼いてしまうと脅したこと」というのがある。10歳以前の少年が、このような憎悪に駆られていたということから、ニュートンの受けた傷の深さが読み取れよう。ハイティーンの頃のラテン語練習帳は、恐怖、不安、疑惑といった否定的な内容の文例ばかりが目立つそうである。余りに辛い経験を通して、ニュートンはすでに暗く内省的で、猜疑心の強い人格を形成してしまっていたのだろう。彼は生涯、友人と言える人を持てなかったのである。
 
・力学については20年後になってやっと『プリンキピア』の中で全容を明らかにした。数学と光学に関してはなんと38年後になって初めて公表した。最高の数学者が初めて数学論文を公表したのは61歳の時だった。自然科学の歴史において『プリンキピア』の出現ほど重大な事件は他にない。アリストテレスプトレマイオスコペルニクスガリレイケプラーデカルトと、人類の築き上げてきた力学、物理学、天文学が一変したからである。
 
 
・独特の教育観を持ち、大学で古典を専攻したためか語学に達者な叔父の下で、ハミルトンは早熟な才能を発揮する。5歳までに、英語、ラテン語ギリシア語、ヘブライ語を読解することができるようになったのである。10歳までにはこれにイタリア語、フランス語、ドイツ語、アラビア語サンスクリット語、ペルシア語が加わる。美しい景色を前に、高揚した気分を表現するのに英語では不十分とみると、ラテン語で即興詩を作ったりする。一方、10歳でユークリッドの『原論』を読み、12歳でニュートンの『プリンキピア』を読み、天文学に魅せられる学校には一切通わず、すべての基礎教育を叔父の指導と独学により完了した。大学に入り、あらゆる試験で一番をとったうえ、大学では20年来誰にも与えられなかった大賞を、数学と古典でもらい、英詩でも学長賞を二度獲得する。まさに寵児だった。大学4年生のとき、卓抜なる業績により、ケンブリッジ大学教授をはじめとする有力候補者の中から、ハミルトンはなんとダンシンク天文台長兼天文学教授に推された。学部学生が教授就任を要請されるとは前代未聞である。ハミルトンの初恋」
 
・ここに登場する9人の数学者は、私が数学に足を踏み込んでから、っと神様のように思ってきた存在だった。少し大げさに言えば、本当に自分と同じように眠って食べて出していたのだろうかとさえ思っていた人々である。それがいつの頃からか、どんな天才でも神様であるはずはない、と思うようになった。若さを失った頃からだったかもしれない。と同時に、人間であるならどんな人間だったのか、きらびやかな衣の下に隠れた生身の人間を知りたくなった。自ら現地に足を運んで、生まれ育った風土、自然、歴史、民族、文化、風俗が、天才の人間性ばかりか数学まで、そういったものの産物であることがわかった。その天才がその時そこに生まれたがの、まったくの偶然でなく、当然あるいは必然とさえ思えるようになった。我々と同等、いやそれ以上に人間臭い人間であることもわかった。
 
・これら天才を追う中でもっとも胸打たれたのは、天才の峰が高ければ高いほど、谷底も深いということだった。栄光が輝かしくあればあるほど、底知れぬ孤独や挫折や失意にみまわれている、ということである。人間は誰も、栄光や挫折、成功や失敗、得意や失意、優越感や劣等感、につきまとわれる。そしてそれは自らの才能のなさのため、と思いがちである。否。天才こそがこのような両極を痛々しいほどに体験する人々である。凡人の数十倍もの振幅の荒波に翻弄され、苦悩し、苦悶している。天才がこのようなものと知ってから、天才は私にとって神ではなくなった。自ら進んで創造の苦しみを肉底にそして骨にくいこむほどに背負って歩いた人。たまた運良く、あるいは運悪く選ばれたたため、この世にいて天国と地獄を見た人といってもよい。

 

いや〜憧れるなあ……いいなあ数学って。オススメです。(・∀・)

 

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数学者列伝 天才の栄光と挫折 (文春文庫)

数学者列伝 天才の栄光と挫折 (文春文庫)

  • 作者:藤原 正彦
  • 発売日: 2008/09/03
  • メディア: 文庫