昔、友人と約束をした。「オレたちが60歳になったときにそれぞれ自叙伝を出版するんだ。その時までにどんな人生を歩んできたのか!誰の本がベストセラーになるのか、競争しようぜっ!」……あと4年かあ……間に合うかなあ……(笑)
「人は自らを道端の小石のように感じる時、どのように自分を支えるか?『友がみな我よりえらく見える日は』で静かなブームを呼んだ上原隆、安らぎと感動のコラム・ノンフィクション第二弾」そのエッセンスを紹介しよう。
「キャッチ・セールス」
笑顔+両手敬礼「スイマセン。学生さん?」女性たちは逃げる。 出原はこわい顔になる。表情がクルクル変わる。走り回り、 笑顔を作り、断られ、怒り、つぶやき……その繰り返し。 女性に声をかけ、アンケートに答えて下さいっていって、 ビルに連れていき、 女性のカウンセラーのいるカウンターに座らせる。 美容の話をして、化粧品や美顔器などを売りつける。 25万から50万の商品で、ローンを勧める。契約金額の7% が取り分。
「渋谷で働けると思うとね、なんかうれしかったですね。 詐欺じゃないですよ。 ボクらいっさい嘘はついてないですよ。それにお客さんが解約したい っていえば、すぐ解約になるんですから。 月収は50万は下らないように努力してますね。貯金はゼロ。 酒を飲む。キャバクラとか行って、ワッと騒ぎたくなるんですよ。 この仕事ストレスがたまるから。この仕事、嫌いですよでも。 ボクらみたいな中卒がいまぐらい稼げるとしたら、 こういう仕事しかないんです」
「実演販売の男」
「どんな商品を扱ってようが、売れる売れないは場所なんです。 一に場所、二に場所、三に商品。 売り子の技量はその後くらいです」 日本中で一番売れる場所は新宿のデパートで。 そこで売っている人がトップクラスの実力者なのだというい。 売り子の技量とはどんなことをいうのだろう?「話術がひとつ。 もうひとつは手先の技ですよね。 こういう調理器なら上手に使ってみせることが大事だし、 包丁だってうまく使えなきゃダメです。でも、最後は気力なのね。 不思議なことに気力が入ってないと、 どんなに上手に説明しても売れませんね。話してて、 完全にコミュニーケーションができた時はね、たとえ「あ、 この人買って帰っても使わないな」と思っても、それに相手も「 これを買っても使わない」と思っていても、 それでも買って下さる方がいるんですよ」
・「お客が集まってきたなかで『これ家にあるけど使わない』 という人を無視してたらダメなんです。 せっかく集めたお客さんが「そうよねー」 ってムードになったら絶対に売れませんから、『 買ってって使わないの?買ってったけど使い方を知らないの? どっち?』っていうんです。そうすると『まだ使ってない』 とか答えるわけです。ここで負けると、 せっかくお客さんを抱き込んできた努力が全部無になりますからね 。」
その他、障害を持った子供の生死を語る「小さな喜びを糧に」、 職探しの天国と地獄「我にはたらく仕事あれ」、 黒人のウエイターの幸せとは?「ブロンクス生まれのウエイター」 、いじめにあった14歳が23歳になって振り返る「 タイムマシーンに乗って」、離婚した父からのプレゼント「 ロボットの部屋」、元近鉄・小野和義の「復讐のマウンド」、 赤裸々な利根体験「リコン日記」、中国と日本の狭間、「 天安門から遠く離れて」、 世間からは変態と言われた悪しき自分の欲望「 わたしはリカちゃん」、何度も何度も恋をする「 六十八回目の恋愛」、「インポテンスの絶えられない重さ」、 子殺し裁判ばかり膨張する女性「子殺し」、 大晦日に絵を描いて過ごす「大晦日」など。
どんなに平凡な人にもドラマがあるんだよね。このシリーズ、いいわー!オススメです。(・∀・)