戦前の伝説の投手、沢村栄治。「沢村賞」に名を残しているよね。わずかに映像が残っているけど、実物を観たかったなあ!(・∀・)
さてこの本。投手ではなく、兵士としての沢村はどんな人物だったのか!?
・本書は、これまでのヒーロー像とは一味ちがう、 人間沢村栄治を描いている。そして、戦時下、 軍から抑圧されたといわれてきた職業野球連盟が、 逆に軍を欺くことでおのれの存在をかけたという真実の物語である 。戦争に翻弄され続けた職業野球選手たちに、 せめて本書のなかではおもいっきりプレーさせてあげたい。 そして、軍と戦った野球連盟の男たちを知ってほしい。 そうした思いで書いた作品である。
・沢村「 僕は自慢ぢゃないが人一倍強い腕をもっていますからボールの代り に手榴弾を投げるときでも普通の者より遠くまで投げることができ 、また僕が投げればコントロール百発百中間違いないのです」 と答えると兵舎に消えていった。
・金鯱軍内野手の濃人渉は、 はじめのうちは野球をしたくてたまらなかったが、 だんだん日が経つにつれて忘れ、兵隊の生活に馴染んでいった。 内堀ですら、 思っていたより軍隊も悪いところではないと感じるようになってい た。沢村も「出征してから野球のことはまるで忘れてしまった」 のである。「二年兵になってからは軍隊性加圧が楽しい」 と思うようになり、「今の自分の生活こそ、 私にとっては一番華々しい、そして一番印象深いもの」だとした。 沢村は兵士になっていた。
・さつま芋やかぼちゃが植えられている球場での試合は、 どう考えても具合が悪い。案の定、南海軍戦で騒動が起きた。 飛んできた球が野菜畑にまぎれ込み、 外野手が野菜をかきわけているうちに三塁打になってしまったので ある。なんとも笑えない珍事だ。 街の空地は戦場農園と称して国民に奨励していたが、 これではまるで球場農園である。
・ 名古屋軍にいた石丸進一が理研工業にいた赤嶺の前にひょっこり現 れた。軍服の石丸は休暇をもらい、 筑波の隊から東京駅まで出ると、 そこから焼け跡になった街を二時間もっかけて歩いてきたのだとい う。「新しいボールを下さい。 死ぬ前に思う存分ピッチングをして死にたいんです」 赤嶺はボールを手渡した。粗末なボールだったが、 石丸は嬉しそうにした。「おい、生きて帰れよ。 また野球をやろう、待ってるぞ」「赤嶺さんもお元気で」 そいうと石丸は姿勢を正して敬礼をすると、 赤嶺のもとを後にした。
・石丸の手紙「 苦しみ以上に野球生活と云ふ物により楽しみを得ました。 是にて亦親兄弟を喜ばす事が出来二十四才としての私には何も悔ゆ る所御座いません。 是も赤嶺様の御盡力にて得た事と感謝致して居ります。 明五月一日夕暮必ず敵艦に命中致します。「忠孝」 私の人生は此の二字にて終わります」
……まるで今の「緊急事態宣言」は第三次世界大戦だね。野球を思いっきりやらせてあげたい。野球を観たい。開幕はいつになるのだろうか!?オススメです。(・∀・)