「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「兵隊になった沢村栄治 戦時下職業野球連盟の偽装工作」(山際康之)

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戦前の伝説の投手、沢村栄治沢村賞に名を残しているよね。わずかに映像が残っているけど、実物を観たかったなあ!(・∀・)

 

さてこの本。投手ではなく、兵士としての沢村はどんな人物だったのか!?

 

ベーブ・ルースをきりきり舞いさせるなど活躍し、将来を嘱望されるも、三度も出征し落命した悲運の投手・沢村栄治彼は何を考え、戦地に赴いたのか。本書は人間・沢村を描くとともに、当時の野球関係者の興味深い動きを描き出していく。表向きは時局に迎合し戦争に協力するかのように「偽装」しつつ、職業野球連盟は沢村の悲劇を繰り返さぬよう、野球界や選手らを守ったのだ。その工夫とはいかなるものだったか。知られざる戦時下の野球界を、資料の綿密な分析から再構成する」そのエッセンスを紹介しよう。
 
・本書は、これまでのヒーロー像とは一味ちがう、人間沢村栄治を描いている。そして、戦時下、軍から抑圧されたといわれてきた職業野球連盟が、逆に軍を欺くことでおのれの存在をかけたという真実の物語である。戦争に翻弄され続けた職業野球選手たちに、せめて本書のなかではおもいっきりプレーさせてあげたいそして、軍と戦った野球連盟の男たちを知ってほしい。そうした思いで書いた作品である。
 
・沢村僕は自慢ぢゃないが人一倍強い腕をもっていますからボールの代りに手榴弾を投げるときでも普通の者より遠くまで投げることができ、また僕が投げればコントロール百発百中間違いないのですと答えると兵舎に消えていった。
 

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金鯱内野手濃人渉は、はじめのうちは野球をしたくてたまらなかったが、だんだん日が経つにつれて忘れ、兵隊の生活に馴染んでいった。内堀ですら、思っていたより軍隊も悪いところではないと感じるようになっていた。沢村も「出征してから野球のことはまるで忘れてしまった」のである「二年兵になってからは軍隊性加圧が楽しい」と思うようになり、「今の自分の生活こそ、私にとっては一番華々しい、そして一番印象深いもの」だとした。沢村は兵士になっていた。
 
さつま芋やかぼちゃが植えられている球場での試合は、どう考えても具合が悪い。案の定、南海軍戦で騒動が起きた。飛んできた球が野菜畑にまぎれ込み、外野手が野菜をかきわけているうちに三塁打になってしまったのである。なんとも笑えない珍事だ。街の空地は戦場農園と称して国民に奨励していたが、これではまるで球場農園である。
 
名古屋軍にいた石丸進一理研工業にいた赤嶺の前にひょっこり現れた。軍服の石丸は休暇をもらい、筑波の隊から東京駅まで出ると、そこから焼け跡になった街を二時間もっかけて歩いてきたのだという。「新しいボールを下さい。死ぬ前に思う存分ピッチングをして死にたいんです」赤嶺はボールを手渡した。粗末なボールだったが、石丸は嬉しそうにした。「おい、生きて帰れよ。また野球をやろう、待ってるぞ」「赤嶺さんもお元気で」そいうと石丸は姿勢を正して敬礼をすると、赤嶺のもとを後にした。
 
・石丸の手紙苦しみ以上に野球生活と云ふ物により楽しみを得ました。是にて亦親兄弟を喜ばす事が出来二十四才としての私には何も悔ゆる所御座いません。是も赤嶺様の御盡力にて得た事と感謝致して居ります。明五月一日夕暮必ず敵艦に命中致します。「忠孝」私の人生は此の二字にて終わります」

 

……まるで今の「緊急事態宣言」は第三次世界大戦だね。野球を思いっきりやらせてあげたい。野球を観たい。開幕はいつになるのだろうか!?オススメです。(・∀・)

 

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