「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「二十世紀(上)(下)」(橋本治)

f:id:lp6ac4:20200309055419j:plain

二十世紀(上) (ちくま文庫)

二十世紀(上) (ちくま文庫)

 

f:id:lp6ac4:20200309055435j:plain

二十世紀(下) (ちくま文庫)

二十世紀(下) (ちくま文庫)

 

早いもので二十一世紀になって20年。早いよね。ワタシも来月56歳。一世紀の半分を生きてきたのだ!2度目の東京オリンピックももうすぐだから、ここで二十世紀を振り返ろう。ということでこの本。

 

二十世紀は戦争と革命の時代だったとも言える。一方で、一年ごとに見ていけば、意外にも大事件の起こった年は少ない。そんなふうに私たちは毎日を普通に生きているのだ。しかし、普通が激動に結びつくことは理解されにくい。一体、この百年で、何が変化し、何が変わらなかったのだろう?生活レベルのことから、芸術、経済、政治まで、橋本治が、歴史の全体像を身近なものへと手繰り寄せる」そのエッセンスを紹介しよう。
 
・1901年ー二十世紀最初の年の1月22日、一人の女性が死んだ。十九世紀ヨーロッパの繁栄そものを象徴するような、大英帝国の元首ヴィクトリア女王である。在位は64年間ー64年目の1月に死んだ。偶然の一致だが、これは日本の昭和天皇と同じである。昭和天皇も、在位64年目の1月に死んだ。彼女の死とは無関係に、ヨーロッパの繁栄を支えた体制はゆっくりと崩れていく。
 
昭和天皇を象徴としていただいていた日本は、やがて空前絶後の繁栄を誇るようになり、そしてその日本は、昭和の終焉と共にガタガタになる。なぜなんだろう?我々は、二十世紀に関して大きなカン違いをしている。確かに二十世紀は新しい世紀だった。しかしそれは「いままでとはまったく無関係に新しい世紀」ではなかった。二十世紀は、まだまだ十九世紀的な古さを引きずっていた。「王様」のいた十九世紀的な古さを。
 
1903年、この年、ライト兄弟が空を飛んだ。「飛行機」なるものの誕生である。彼らがやったことは最初にガソリンエンジン付きの飛行機を飛ばした」だった。エンジンの付いていない飛行機なら、その50年前の1853年に、イギリスでグライダーが450mばかり空は飛んでいる。(ライト兄弟の飛行機は、高度3mで12秒間、360mしか飛ばなかった)最初の内燃機関は、石油ではなく石炭ガスを使ったものだが、これが完成したのは1860年だった。その後、1883年にドイツ人のダイムラーがガソリンを使ったエンジンを発明する。1885年には、ベンツというドイツ人が、世界で最初のガソリンエンジン付きの四輪車を走らせているこれが自動車の始まりだが、しかしこの頃の自動車には、まだゴムタイヤがなかったゴムのタイヤは、1888年にイギリス人の獣医ドクター・ダンロップによって発明されるのだが、これは子供の三輪車用の発明だった。自転車用になり、自動車にゴムタイヤが取り付けらるのは、1892年のフランスでのこと。飛行機が空を飛ぶわずか11年前のことだった。1903年ライト兄弟の作った機械はろくに空を飛べなかったけれども、1909年になると、もう飛行機はドーヴァー海峡を横断して、1914年に勃発した第一次世界大戦では、空中戦を演じられるようになっていた。
 
二十世紀になって発明されたものは、そんなにもない。飛行機とラジオをテレビと原子爆弾ぐらいで、あらかたのものがもう十九世紀に発明され、想像され、完成してしまったいるのである。1886年にコカコーラが発売。パンチカードシステムによるコンピューターの誕生、エジソン白熱電球の完成は1879年、電機が一般家庭に送電されるようになったのは1885年と十九世紀生まれなのだ。十九世紀は、とんでもなくいろんなものが空想され、必要とされ、利用され、その結果、様々な発明発見がなされた時代なのだが、この十九世紀に目覚ましさに比べれば、二十世紀はろくな発明発見をしていない。
 
・1907年、アメリカのボストンの海外では、オーストラリアから来た一人の女子水泳選手が逮捕された。彼女は、腰回りにスカートのついていない普通のワンピース水着を着ていて、それが風俗紊乱(びんらん)になったのである。アメリカでは、腰回りにスカートのついていない水着はいかがわしいもので、この後まだ四半世紀も「禁止」のままなのである。
 
・1972年、後のニューミュージックの女王、荒井由実こと松任谷由実が歌手デビューする。全共闘の時代の痕跡がまだ残るキャンパスの風景を、ただ「汚い」と見た。新しい時代のヒロインは、まだ残る古い男性の姿を、あっさり一蹴した。
 
・日本人にとっての1980年は山口百恵引退の年」である。日本のメディアは山口百恵一色」になった。彼女は「貧しさから抜け出すこと、愛を得て幸福になることはイコールである」という、それ以前の日本人の常識ーあるいは幻想、または理想を、公然と達成してしまった最初の人物である。またその「公然」を得ることによって「日本人の幻想を達成した最後の人物」にもなってしまった。
 
1989年1月7日、昭和天皇は世を去った。64年の長さを持つ「昭和」という時代も終わった。2月「マンガの神様」手塚治虫、4月「経営の神様」松下幸之助、6月「歌謡界の女王」美空ひばりが死んだ。「人が死ぬ」ということと「一つの時代の終わり」が、こんなにも直接的に重ねられ語られた年は、そうそうないだろう。
 
この20年だっていろんなことがあったのに、100年を振り返るって壮大なストーリーだね!!!この世紀を振り返るのもいいかも。オススメです!(・∀・)

f:id:lp6ac4:20200309055419j:plain

二十世紀(上) (ちくま文庫)

二十世紀(上) (ちくま文庫)

 

 

f:id:lp6ac4:20200309055435j:plain

二十世紀(下) (ちくま文庫)

二十世紀(下) (ちくま文庫)