「ひょっこりひょうたん島」「吉里吉里人」で有名な井上ひさし氏。中学のとき「ブンとフン」を読んで夢中になったなーあ!(・∀・)
「現代の戯作者・井上ひさしが30年以上にわたり書きついだエッセイの中から、とりわけユーモアに富む珠玉を取り出し一冊にまとめる。人生の転機になにをしでかしたか?時代を映す鏡は本当は何処にあるのか? なにげなく使っている日本語の意味は?文字通り抱腹絶倒体験の中から幾多な「世の中」が見えてくる。エッセイで綴る鬼才の半生」そのエッセンスを紹介しよう。
・私の場合、まず「ギャグ(笑わせる工夫)は逆(ぎゃく)」 という語呂合わせみないた方法がある。たとえば、 一人の男が椅子に腰を下ろし、 ポケットからリンゴとナイフを取り出し、 ゆっくりとリンゴの皮をむきはじめる。 やがてリンゴの皮は一本の紐となって長く垂れ下がる。 男は黄金色の実をぽいと背後に放り捨て、 皮を美味しそうに食べ始める、 というのがその古典的基本パターン。 医師が健忘症で患者が診察する、恋人同士が、じつは女が男で、 男のほうが実は女だった、など。
・表なら裏、上とくれば下、右と声が掛かれば左、 前といわれれば後、黒なら白、肯なら否、善なら悪、山なら川と、 逆へ逆へとはなしをねじ曲げる。この「逆」説によるおかしみは、 日常の、常識の世界とばからしさに還元された世界とを、 だしぬけに結びつけることのによって見物人から笑いを引き出す。
・ふとしたことから浅草のストリップ小屋で働くことになった。 文芸部員、というと格好はいいが、その実体は雑役で、 踊り子たちの注文したラーメンを上げ下げしたり、 舞台の袖に陣取って緞帳を上げ下げしたり、 舞台中央のマイクを袖からスイッチで上げ下げしたり、 暗転の間に素早く舞台の小道具を上げ下げしたり、というように、 いやに上げ下げする仕事が多かった。
・原稿遅延常習犯の言い訳もわれながら可愛らしかったと思う。「風邪を引きました」「腹をこわしましました」「 懐かしい友人が訪ねてきまして」「 母親が上京してきたものですから」「 乗るべきバスとそうでないのを取り違えまして」「 自動車事故を見物しているうちについ」「 大家の飼い犬が靴を咥えて行ってしまいまして」「 大家の猫が原稿の上にとび上がりインクを飛ばしましたので、 書き替えに時間をとられまして」「 大家が家賃の値上げを申し渡しに来ましてので、 それは強欲だと喧嘩になりまして」「大家が小火(おや) を出しまして」「大家が危篤になりまして」「 大家が見合いをすすめるので、 それに乗って相手の娘に逢いましたので」「 大家の夫婦の大喧嘩の仲裁に入りましたところが、 これが結構揉めまして」という具合で、 大家を悪者にしておけばたいてい事が済んだのである。
「接続詞「ところが」による菊池寛小伝」「池波さんの振り仮名」はオモシロイ!古典的だけど、いまでも使えるユーモアの実例、満載。オススメです。(・∀・)