「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「大遺言書」(森繁久彌・久世光彦)

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大遺言書 (新潮文庫)

大遺言書 (新潮文庫)

 

 

国民栄誉賞も受賞した国民的名優・森繁久彌。96歳で大往生したよね。元NHKのアナウンサーだったって知ってた!?

 

「新聞は毎朝八紙、煙草は一日30本、酒と同じくらい甘いものが好物で、女は79の秋が最後だったかな…。ドラマ七人の孫で付き合いが始まって、つかず離れず40年以上。向田邦子の思い出や、映画、舞台の芸を語り合い、愛唱歌を一緒に口ずさむ。93歳を迎える稀代の名優・森繁久彌が振り返る波瀾万丈の人生に久世光彦が懐深く入り込み軽妙洒脱な文章で綴る聞き書きエッセイ」そのエッセンスを紹介しよう。


向田邦子さんは若いころ、親から「時分どき」によそ様に伺ってはいけないと教育された。「時分どき」とは、「食事時」ほどの意味だが、関東大震災が起こったのは、ちょうど時分どきだったので、火を使っている家庭が多くー」という風に使われる。だから向田さんは終生「時分どき」に人の家を訪ねたことはなかったし、そんな時刻までよそのお宅に長居することはなかった。これが躾であり、お行儀というものである。

 

新聞はね、朝、毎、読、産経、東京ー日経はどうだったかな?それにね、スポニチとスポーツ報知。だけどこのごろの朝刊、やたら厚くなりましたね。重くて持ち上がらない。ページが多すぎます。一日のうちに40ページのことが世間に起こるわけがない。つまり、どうでもいいような記事ばかりだ。こういうことは、新聞として恥ずかしいことじゃないですか?

 

女は79の秋が最後だったかな。何だか怖くなりましてね、やってるうちにー。あれは女というものが怖くなったのか、死ぬのが怖くなったのかーその辺はわすれました。

 

長生きするということは、人と一人また一人と、別れてゆくことです。代われるものなら、代わってやりたいと思うことが、幾度もあります。天は酷(むご)いことをなさる。この年になると、悲しいというのと違う。ー辛い

 

・森繁さんが「あの子」と呼ぶ女優さんとしばらく懇談していたと思ったら、突然その女優さんに向かって「ちょいと伺いますが、ぼくはあなたと寝ましたっけ?」その人はほんとうに怒って行ってしまった。森繁さんは、私に片目をつむってみせる。ー馬鹿馬鹿しくなった。後で訊くと、あのときは遊びだったが、まんざら嘘でもないらしい。

 

・煙草は吸います。この年齢にしてはヘビー・スモーカーでしょう。昔はかなり強い葉巻を愛好していました。いまはウィンストンを日に20本と言っていますが、ま、こうして客がきて喋っていると、つい30本を超えます。医者には30年前から止めろと言われてきましたが、その医者が諦めて十年になります。

 

私はいつも体中で芝居をしているつもりです。それなのに顔ばかり撮りたがるのは、無礼です。アップさえ撮れば喜ぶと思っているのでしょうか。たとえば、人間は転びます。大きくつんのめったり、ちょっと躓いたりーそんなとき、人間の可笑しさや哀しさが正直に出るものです。転ぶという動作は、顔を撮ってもわかりません。かと言って、足元だけ撮ってもしょうがありません。つまり、全身の芝居なのです。うまく転んでみせるでしょう。


特に「足は二本ある」「アッ、そう」などの下ネタは森繁さんならではだね。オススメです!(・∀・)

 

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大遺言書 (新潮文庫)

大遺言書 (新潮文庫)