さあ、すっかり秋の気配が出てまいりました!秋です、仏教です。(笑)
「今日は何の日?」に仏教の教えで答えます。10/1~12/31、なるほどなっとく日めくりエッセイ。そのエッセンスを紹介しよう。
・仙厓義梵(せんがいぎぼん)は江戸後期の禅僧。 あるときなにか芽出たいことばを書いてくれと頼まれた。 そしていきなり「祖父父死子死孫死」の八字を書いて与えた。 依頼人は顔をしかめる。「死」 が四度も繰り返されていては腹が立つ。「いくらなんでも、 これはひどすぎます」しかし、仙厓はこう言った。「いや、 これが芽出たいのじゃ。いいか、まず爺さんが死んで、 それから父が死ぬ。そして、子どもが死んで、 そのあとで孫が死ぬ。 この順番で人が死ねるほと幸福なことはない。 この順番がちょっと狂ってみなされ。 親より先に子どもが死んだら、親はどれだけ悲しまねばならぬか… …そこのところをよく考えてみなされ」なるほど。そのとおりだ。
・ある檀家の新築祝いに仙厓が招かれ、お祝いの揮毫を頼む。 そして「ぐるりっと家を取り巻く貧乏神」と書く。主人は渋い顔。 しかし、仙厓はにこにこしながら下の句をつづけた。「 七福神は外へ出られず」たしかに、これなら芽出たり文句だ。 主人が喜んだのは言うまでもない。
・曾我量深(そがりょうじん) は阿弥陀仏信仰に徹した近代の仏教学者であった。「 言葉のいらぬ世界が仏の世界。言葉の必要なのが人間界。 言葉の通用しないのが地獄」。 その仏の世界と地獄の中間にあるのが、 われわれ人間の世界である。だから、 われわれには言葉が必要なのだ。 われわれの住むこの世界を地獄にしないために、 赦し合うための言葉、喜びをわかち合うための言葉である。 仏教の用語でいえば「愛語」である。「愛語」によって、 われわれは人間になれるのだ。
・仏教は貯蓄といったことに反対である。 人間は財を所有することによって、ますます欲望が増大する。 そこで釈迦は、財の所有を戒められたのである。 毎日の食事も出家者は托鉢によって得ていた。托鉢は乞食( こつじき)ともいう。その托鉢も午前中に行い、 午前中に食べねばならなかった。 托鉢によって余分の食事を得たから、 これを翌日に食べようということはできない。つまり「貯える」 といったことがいっさい許されなかったのだ。
・死は布施である。なぜなら、 もしも過去の人間は死なずに生きているとしたら、 地球上は人間だらけになって、新しい生命は誕生できない。 だから、われわれが死ぬことによって、 新しい人間が誕生できるのだ。その意味で、「死は布施である」 と、わたしは断言したいのである。
・「先生、インドの牛は、どうしてあんなに痩せているのですか? 食べる草はいっぱいあるのに……」「あのね、 牛は痩せているのがあたりまえなんです。日本の牛は、 食肉用に品種改良して太らせたものです。日本の牛が異常で、 インドの牛のほうが当たり前なんですよ」「先生、見てよ。 子どもたち、かわいそうに裸足だわ」子どもというものは、 裸足でのびのび遊んでいるものだ。 そんな子どもの姿こそ本当である。 日本の子どものほうがどこかおかしい。上等の靴を履き、 重い鞄を下げて塾に通っている。 そんな日本の子どもたちのほうが異常である。 まるで子どもの品種改良である。
・浄土経典の『阿弥陀経』に「青色青光、黄色黄光、赤色赤光、 白色白光」とある。これが教育の基本である。すなわち、 青い子は青く、黄色の子は黄色に、赤い子は赤く、 白い子は白く光らせるのが教育なのである。臆病な子もいる。 怠け者の子もいる。乱暴な子もいれば、優等生もいる。 その臆病なことが臆病なままで、怠け者が怠け者のままで、 乱暴な子が乱暴なままで、優等生が優等生のままで、 幸福になれるように援助してあげるのが本当の子育てであり、 教育ではないか。子育て、教育は「人間改造」ではない。 臆病な個を勇敢な子に改造することが教育ではないのだ。
・われわれは、オオカミはシカの敵だと聞かされてきた。だが、 実際は違うのだ。オオカミがいてくれるおかげで、 シカは餓死しないでいられるのだ。もちろん、 シカのおかげでオオカミは生きられる。オオカミとシカは、 お互いに支え合って生きている。仏教的には、そのようなあり方を ーご縁の世界ー という。この世界にあって、 すべての生き物は互いに他を支え合って生きている。 仏教者は世界をそのように見るべきだ。だとすれば、 シカはオオカミに自分のいのちを布施しているのである。 オオカミがシカを殺すのではなく、 シカのほうから布施をしているのだ。そう見るべきである。
その他、「袈裟に供養する」「あっさりとした生き方(至道無難)」「 病気を楽しんで生きる」(『人と精』の糸毬の話)「笑えぬ猩々( しょうじょう)の愚かさ」「地獄の沙汰も金次第(六文)」「 わたしを抱くがよい(慧春尼(えしゅんに))」「 まずくて高い店がよい」「小鳥の消火活動」「デタラメの決断( ビュリダンのロバ)」「恩讐の彼方に」など。
仏教は深い……なあ……。オススメです。(・∀・)!