「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「パイプのけむり 選集 話」(團伊玖磨)

f:id:lp6ac4:20190427082700j:plain

パイプのけむり選集 話 (小学館文庫)
 

 

意外や意外、團伊玖磨さんのベストセラーパイプのけむり」を読むのは初めて。

ホテルは泊まったことあるけどね。(笑)

 

いや〜〜!このハナシは笑った、笑ったっ〜〜!!日常の挨拶をすべて「ずどん」

に変えようとという一大プロジェクト!そのエッセンスを紹介しよう。

 

「ずどん」

 

挨拶の言葉などは、何(ど)うせ言葉の本来の意味は消えてしまっていて、言いさえすれば良い訳で、大体、挨拶というものは、挨拶のためだけにあるのだ。そこで、これらの意味のある語を挨拶として用いるのを全廃して、余り意味を持たぬ一語を撰定した上で、それを以って、挨拶の総べての当てたら何(ど)うであろうと考えた。一つの語を「お早う御座います」から始って「お寝みなさい」に至る、一日中の総べての挨拶に当てれば、挨拶も、従来のものよりも遥かに能率的になるに違い無い。撰ばれる語は、折角言うのだから、印象的でなければならず、そして、こちらの趣味上、力強い表現力を具えたものでなければならない。大分骨を折った結果、僕は新挨拶語を「ずどん」と決定した

 

「ずどん」これは音である。従って、余り意味を持たぬ点、印象的ではある点、力強い点、全く挨拶には打ってつけであると僕は考えた。そして、口の中で「ずどん」「ずどん」と呟いてみて、益々これが気に入り、満足して、これを実行に移す事にした

 

然し、物事の実行には細心の注意が肝要である。そこで、先ず、十日間を試験的な準備期間と定め、一般社会の反響を研究した上で、恒久的な実践に移るか何うかを決定しようと考えた。何しろ、何百年続いた社会通念を打ち毀して、新らしい発意を通年させようというのだから、この位の慎重さは必要である。

 

その朝、知り合いの評論家の後ろ姿を発見した。そこで、実行に移す可く。後ろから彼に近付いて「ずどん」と声を掛けた。「やあ、お早う。何だね、一体全体」と言った。そこで、もう一度言った。「ずどん」彼は、益々変な顔をした。そこで、僕は、従来の挨拶の語を使うのを止めて、今度から「ずどん」を以ってその総べてに当てる事にした事、又、その理由を彼に説明した。「そういう訳で、僕は今後、あらゆる場合に『ずどん』と言おうと思うんだ。朝、起きた時も『ずどん』と言う。食事の前にも『ずどん』食事が済んだ時も、叮嚀に『ずどん』夜寝る時も、静かに『ずどん』と言う。いい考えだろう」「女に逢った時にも『ずどん』と言うのかね」「無論だよ。恋人や美人の類に逢った時には、そっと寄って行って、耳許(みみもと)に唇を触れんばかりにして、優しく、小さな声で『ずどーん』と囁くのだ。色々骨を折って考えた末に、『ずどん』に決めたんだよ」

 

その他、「化石」「そうすっとお」「釣れますか」など。笑えるっ!GWはこんな本を読んでもいいかもね。超オススメです。(・∀・)

 

 

 

f:id:lp6ac4:20190427082700j:plain

パイプのけむり選集 話 (小学館文庫)