「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「評伝 小室直樹「上」学問と酒と猫を愛した過激な天才」(村上篤直)

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評伝 小室直樹(上):学問と酒と猫を愛した過激な天才

評伝 小室直樹(上):学問と酒と猫を愛した過激な天才

 

若い頃、週刊プレイボーイでよくみかけた名前が天才学者、小室直樹。ご縁がなくて一度も著作を読んだことがないのだが、この本で思い出した。

 

表紙の鋭い、いかにも賢そうな学生服の写真。栴檀は双葉より芳し」と言われるようにその天才の片鱗は小さい頃からあった。その天才の生涯のエッセンスを紹介しよう。

 

・平成22(2010)年9月3日。ひとりの天才がこの世を去った。
名前を小室直樹という。

 

・母チヨは幼い頃から直樹の才能に気がついていた。隆吉やチヨが話した言葉や国民学校で聞いた話をすべて記憶する
どこで聞いて覚えたのか、チヨの知らない言葉するしゃべっている。年を重ねる毎に直樹の使える語彙の量は、どんどん増えていった。
頭の回転もきわめて速い。直樹のいう理屈にかなわず、言い負かされることも度々であった。
チヨは、直樹はきっと立派な人間になると確信していた。
「この子は頭がいいんです。きっと立派な大人になります」
外で知人に会う度に、そういって直樹を紹介した。

 

国語、数学、社会、あらゆる分野の知識量において、小室は級友と比べ群を抜いていた。ただ非常識ぶりもまた群を抜いていた。
小室の文才の秘密は、そのおそるべき読書量にあった。
部屋に閉じこもって、あらゆる書籍を繙き、その世界に没頭した。
愛読書は『少年講談』(大日本雄辯會講談社)その影響で征夷大将軍」になりたいと思うようになる。
小説を読み切ってしまうと、国語辞典を読んだ。辞典も読み切ると、さらに読んだことのない本を探して母屋の本棚を漁った。
そこにあった大量の漢籍も熟読して、しまいには暗記してしまった。
こうして小室の語彙力、言語感覚は養われていった。

 

小室直樹です。理学部一回生。物理学科志望です。高校は会津高校です。日本は戦争には勝っていたが、原子爆弾で敗けました。だから湯川(秀樹)さんの研究室に入って原子力を研究し、もっとすごい爆弾をつくって、“アメリカ征伐”に行く。そのために京都大学に来ました」

 

人生かけての目的。それは世界に冠たる大日本国の再興、これである
それは英雄によって成し遂げられるであろう。その英雄こそ自分であると確信していた。
戦前の輝ける大日本帝国アメリカに敗けたのはなぜか。
それは「科学」の力が圧倒的に劣っていたからである。だから日本の栄光を取り戻すためには、西洋文明の精華である科学、とりわけ社会科学を体得し、理論的不備を補い、完成させる。それが“社会科学の方法論的統合”である。

 

・「先日から断食を始めました。期間は二週間程度を考えています。頭をすっきりさせて、いい論文を書くためです」

 

 学問に生きるということはこういうことなのだろう。こういう学者がいなくなったのではないだろうか。下巻が楽しみです。オススメです。(・∀・)

 

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評伝 小室直樹(上):学問と酒と猫を愛した過激な天才

評伝 小室直樹(上):学問と酒と猫を愛した過激な天才