「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「みかづき」(森絵都)

   


みかづき


いや〜〜良かった!胸に沁みました〜!感動、感動っ!今年のベスト10入り間違いなしだねー!(・∀・)!


営業マン教育に関わっているワタシにとっては考えさせられました〜!


熱い教育論が飛び交う、戦後史にして大河ロマン。日本における学習塾の変遷、その塾の経営者三代の奮闘、女系家族の確執、理想の教育。昭和三十六年。教員免許はないが、抜群の教える「才」を持つ大島吾郎は、小学校の用務員室で生徒の補習を行っていた。ある日生徒の蕗子の母・赤坂千明から自分の立ち上げる学習塾へ来て欲しい、と頼まれる。千葉の一軒家を借りて始めた塾経営は、半年ほどで波に乗り始める。吾郎はあくまで補習、千明は進学と目的地がはっきりとしている」そのエッセンスを紹介しよう。


同じ教科書を使っていても、大島さんに教わると子どもたちは変わる。それは、あなたに待つ力があるからです。子どもたちが自ら答えを導き出すまで、あなたはよけいな口出しをせずにじっと待つことができる。簡単なようでいて、多くの教員にはこれができません。


・大島さん。私、学校教育が太陽だとしたら、塾は月のような存在になると思うんです。太陽の力を十分に吸収できない子どもたちを、暗がりの中で静かに照らす月。今はまだ儚げな三日月にすぎないけれど、かならず、満ちていきますわ。


・知らないことを知りたいって思うのは人間の性かもしれないけど、知ったあとで、さびしくなっちゃうこともあるでしょう。遠くにある憧れは、遠い憧れのままにしておきたいっていうか。


お母さん。理想の教育ってなに。理想理想ってお母さんはいうけど、本当にそんなものがあるんですか。あるとしたら、どこに?私にはわからない。ままならない現実から目をそらすために生みだした、それはお母さんの幻想じゃないの?


・吾郎さんは、よくやってくれた。塾がここまで大きくなったのは、吾郎さんの努力、そして人徳のたまものよ。あの人は、いつだって自分を犠牲にして、今も、一番に、家族のことを考えようとしてくれている。でもねえ、吾郎さん自身は、それで幸せなのかしら。最近、思うのよ。私たち家族が、吾郎さんを巻き込んで、彼の人生をのっとるみたいにして、ここまで来ちゃったけど、はたして、それはあの人にふさわしい道だったのかしらって。あのおおらかさや、心根に明るさを生かせる道は、もっと、ほかにあるんじゃないかしらって。今からでも、私たちにかまわず自由な身にさえなれば、もっとのびのびと、大きく、羽ばたける人なんじゃないかしらって。


君はけっして丸くなどならない、営利な切っ先みたいな人だ。こうと狙いをつけたらどこまでも飛んでいくナイフのようなものでもあるし、けっして満ちることのない月のようでもある。


常に何かが欠けている三日月。教育もそれと同様。そのようなものであるかもしれない欠けている自覚があればこそ、人は満ちよう、満ちようと研鑽を積むのかもしれない。教育に完成はありません。満月たりえない途上の月を悩ましく仰ぎ、奮闘を重ねる同志の皆さんに、この場をお借りして心からの敬意を評します。


壮大な学校教育と塾の歴史に昭和、平成という時代の変化が二重らせんのように絡み合う。登場人物の個性がキラリと光る!「吾郎」っていいよね。こういう人になりたい。超オススメです。(・∀・)


   


みかづき