「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「メロンの丸かじり 29」(東海林さだお)

   


メロンの丸かじり 丸かじりシリーズ29


時々読みたくなるんだね、東海林さだおさんの文章。ゆるゆるできるんだよねー。よくまあひとつの食材にこれだけ書けるものだね。あーオモシロイ!(・∀・)


「果物の王様メロンに突如、マンゴーが挑戦!「甘いだけのひ弱な奴」の運命やいかに?アスパラガスは腰のあたりをマヨネーズで隠してあげるのがエチケット。行ってみました、「インスタントラーメンを食べさせる店」。あったらいいな佃煮バー。フワフワ、トロトロドーナツの悪魔的な香り。ああ、こうしてメタボになっていく……。朝9時の居酒屋でいじけられるか?抱腹絶倒の『週刊朝日』人気エッセイシリーズ第29弾」そのエッセンスを紹介しましょう。


ローストビーフは、パーティでも最重要料理に指定されている。ローストビーフの後ろには、やたらに背の高い帽子をかぶったなんだから偉そうな人が偉そうに立っている。彼は料理人というよりも、ローストビーフのガードマンとして立っているのだ。客が固唾をのんで見守っていると、彼は偉そうに包丁を取り上げ、その包丁には偉そうなリボンが結んであり、その偉そう包丁を偉そうに肉を当て、わざとゆっくり偉そうに切る。偉そうなくせしてうすーく切る。「もっと厚く切ってください」と言えばいいのだが、そう言えない雰囲気があの場にはある。日本のパーティ史上でも、多分、「もっと厚く切ってください」と言った人はこれまで一人もいないと思うな。


アスパラガスには気品がある。姿、形に威厳がある。野菜のくせになんだか自信にあふれている。だって名前からして辺りを払うところがあるじゃありませんか。アスパラ、ときて、ガスですよ。ガスを持ってこられたんじゃあ、こっちはもうどうすることもできない。


・ピーマンを二つに割って、その空洞をジット見ていると「この空洞をどげんかせんといかん」と思う。ぼくだけじゃなく、世界中の人がそう思う。ピーアンの中の空き地はまるで遊休地のように見える。遊休地に対する日本人の目は厳しい。たぶん、世界中で一案、あれこれせっせとピーマンにいろいろ詰め込んでいるのは日本人だと思うな。


・ふだんとても身近なお付き合いをしているにもかかわらず、わざとかどうか知らないが、魚偏を付けてあげない魚がある。穴子である。魚偏に穴子でいいじゃないですか。登録しちゃえばいいじゃないですか。どこへ登録するのか知らないですけどね。


・人間界のみならず、果物界でもメロンの評判はよくないらしい。ミカンやリンゴや柿や梨が集まって井戸端会議をしている。そこへメロンが通りかかると、みんな急にシーンと押し黙るといわれている。お友達と思っていないのだ。メロンはお嬢様育ち、文字どおりの温室育ちであるからその場の空気が読めない。


佃煮は暗い。まず色彩が暗い。ほとんど全員が黒か暗褐色。情況が暗い。箱に詰めてある小女子の佃煮なんか見ているとだんだん暗い気持ちになっていく。死骸なわけですよ、死屍累々、無名戦士の墓地。生きて泳いでいるときはあんなに柔らかそうだった体が、こんなにもカチカチに硬くなっちゃって……。こんなに腰が曲がっちゃって……。こんなに真っ黒になっちゃって……。とても気の毒。だけど食べるとおいしいんだよねー、これが。


・テレビのドキュメント風の番組に「大家族もの」というのがありますね。エノキ茸にはこの番組を思い出させるものがある。とにかく大家族。人前に出るときは常に大勢、一家総出演。ほかの茸をごらんなさい松茸なんかいつだって一本でどこへでも出る。エリンギだって一本でやっていける。椎茸も一本だけで勝負できる。エノキ茸はそうはいかない。大家族は御多分にもれず家計が苦しい。当然エノキ家も家計は火の車。食事も十分というわけにはいかないらしく、みんな痩せてヒョロヒョロしている。


これ孤独のグルメみたいに映像化にならないかな。ウケると思うよ。オススメです。(・∀・)


   


メロンの丸かじり 丸かじりシリーズ29