「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「ジョークなしでは生きられない」(阿刀田高)


私の大好きな作家、阿刀田高氏。小説新潮「カラーページ」に掲載したジョーク集。その代表的なものを紹介しよう。


・ニュマ氏には四人の子どもがいた。上の三人は顔立ちも美しく、よく似ていたが、末の一人だけはガラリと印象がちがっていた。妻の死期が近づいたときニュマ氏は年来の疑惑を問いただしてみようと思った。「お前。本当のことを教えておくれ。一番下のジャンは、ボクの子じゃないのとちがうかい」妻は瀕死の息の下で答えた。「心配しないで。ジャンだけはあなたの子です」


・さるところの赤ん坊、生まれてすぐからにいろいろのことを話すので、大人がめずらしがって「これさ、おまえ。お腹のなかのことを覚えているだろう。どんな心持だった?」するとその子が答えて「お腹の中は秋のようだ。暑くもなく、寒くもなく、ときどき下からマツタケはえてくる」


・パリの理髪店に髪の毛がたった一本しかない紳士がやって来た。紳士はその髪を洗わせ、油をつけさせ、カールをさせ…だが床屋がウッカリその毛を櫛に引っ掛けて抜いてしまった。紳士はガックリと肩を落とし、「ああ、キミ。ひどいことするなあ。とうとうハゲ頭になってしまったじゃないか」


・社長がタイピストに口述筆記をさせている最中、どうしたはずみかプッと一発漏らしてしまった。だがタイピストは気がつかないのか素知らぬ顔でタイプを叩いている。社長は「やれ、よかったわい」と安堵の胸を撫でおろしたとたん、気がゆるんだのか、もう一発プッ。タイピストがニッコリと笑って、「おそれいりますが、二度づつ繰り返していただかなくても大丈夫でございます」


・年若い新婚夫婦。ホテルの寝室に入ってみると、ベッドが二つ並んでいる。花嫁が不満そうに、「まあ、いやだ。せっかくの夜だというのに、だれかもう一組。お隣りに来るの?」


・パリの裏町。デュポン氏が歩いていると、華麗な衣装をつけたマドモアゼルが近づいて来て、「ねえ、どんなサービスでもするからサ、どう?」デュポン氏がジロリと見つめて首を振り、「いくらサービスしたって、うちの女房にはかなわない」「あら、奥さんはどんなサービスをするの?フルート?」「いや、何回やってもタダだ」


・ここはフランスの片田舎。裁判長が承認台の男に尋ねた。「証人は、暗い夜道で100メートルも離れたところから、被告の顔を見たと言うけれど、証人は夜どのくらい遠くのものまで、ハッキリと見ることができるのですか」証人は首をかしげながら、「まだ計ったことがありませねえだが…お月様までは何メートルありますだ?」


・ある男がチャーチル卿に尋ねた。「政治家にとって一番大切な能力はなんですか」チャーチル卿は葉巻きをくゆらせながら「政治家にとって一番大切な能力は、明日なにが起るか、的確に予測する力だ」「なるほど」「そして、それが起こらなかったとき、なぜ起こらなかったうまく言いのがれる才能だ」


・工場の昼休み、毎晩成人学校に通って勉強しているギネが得意そうに言った。グーテンベルクを知っているか」仲間たちは、「いや、知らん」「印刷機を発明した男さ。成人学校に来れば教えてくれるよ。じゃあメンデルはどうだ?」「知らねえなあ」「遺伝の法則を発見した男だよ。みんなもっと世界のいろんな人間について知識を深めなくちゃ人に馬鹿にされるぞ。夜学は本当にためになる」すると仲間の一人が、「じゃあ、尋ねるけど、キミはデュスカルを知ってるか」「デュスカル?知らんなあ。なにをした人だ」「うん。キミが夜学に行ってるあいだに、キミの奥さんと寝ている男だよ」


ライン川の川岸に学者風の男がやって来て、渡し守の少年にむこう岸まで舟を漕いでくれるように頼んだ。舟の中で男は、みすぼらしい少年をつくづく眺めて、「キミは字が読めるかい」「読めない」「おやおや、キミは一生の四分の一を無駄にしてしまったね。じゃあ計算はできるかい」「できない」「これは困った。キミは一生の半分を無駄に使ったと同じことだ」舟が川の中まで来たとき大きな流木が舟底に当たった。少年は学者風の男を見上げて、「あなたは泳ぎができますか」「いや、できない」少年は首をすくめ、上着を脱ぎながら、「ああ、あなたは一生を全部無駄にしてしまった」少年は川に飛び込むと舟底の水がみるみる溢れて来た。


・サムが酒場のカウンターで酒を飲んでいるとバーテンダーがもう一人の客と話しているのが聞こえて来た。バーテンダー「本当にうらやましいですよ、あなたがたの商売は。毎日大好きなものをいやと言うほど見たり触ったりして……」「とんでもない。いくら触ったって自分で使えるわけじゃないんだから」サムは怪訝に思ってバーテンダーにそっと尋ねた。「あちらの方、銀行にお勤めかな」バーテンダーが片眼をつぶって答えた、「いいえ、婦人科のお医者さんでさあ」


・ジェット・パイロットのガスカル氏は、近ごろあのほうの精力が弱り気味だった。ガスカル夫人が不満を漏らすのも当然のことだ。外地では結構楽しくやっているらしいのに……。「ねえ、どうしてなの?あたしのこと、そんなにいやになったの」となじれば、機長は首を傾げて、「一種の職業病なんだよ」「まあ?」「外地に向かうときにはグングン機首は上をむくけど、家が近づくと下に下がってしまうのさ」


・若い警察官がガール・フレンドに言った。「犯罪者というのはネ、どういうわけか犯行の現場にもう一度戻って来るものなんだ」ガール・フレンドはいたずらっぽい笑顔で、「あら、そうなの。あなたの唇もそのせいなのね。きのうキッスを盗んだ現場へまた戻って来たりして…」


・先生が生徒に尋ねた。「ワシントンが“庭の木を切ったのはボクです”と正直に白状したとき、ワシントンのお父さんは少しも叱らずに許してやりました。なぜでしょうか?」「はーい。ワシントンがまだ手に斧を持っていたからです」


・女房に死なれたジャンが丘の上の墓地になきがらを埋めてひざまずいた。「カトリーヌ、おまえは一人で先に行っちまったんだなあ。オレはさびしくてたまらねえ。ああ、もう一度生きかえって来ておくれ」折しも土の中ではモグラが散歩の真っ最中。もくもくと土が動いて盛り上がった。ジャンの驚くまいことか。「カ、カ、カトリーヌ。バカなまねはよせ。今のはほんの冗談だってば……」


「世の中に奇蹟ってホントにあるものなのね」「どうして?」「うちの赤ちゃん不思議と主人に似てるのよ」


・組閣後の記者会見で記者が総理大臣に尋ねた。「あのう、総理は選挙の公約で老人福祉のテコ入れを訴えておられましたが、その点について意見をうかがいたい」「さよう。老人を優遇し、よい職場を与えることですな」「具体的には?」「わからんのかね。今度の組閣でも、老人を優遇しよい職場を与えているではないか」


・クビになった女中が奥さま相手に捨てぜりふ。「出て行けとおっしゃるなら出て行きますわ。ただ、その前に一言だけ言わせていただきます」「言いたいことがあるなら言ったらいいでしょ」「ええ、言いますとも。奥さまはいつも威張っていらしたけど、私のほうが奥さまよりきれいです。これは旦那さまがおっしゃいました。それに洋服のきこなしも私のほうがいいし、これも旦那さまがおっしゃいました」「言いたいことはそれだけ?」「いいえ、そのうえ、セックスのやりかたも奥さまより私のほうが上手です」「まあ!それも旦那さまが言ったの?」「いいえ、これは自動車の運転手が言ったことですけど」


「あら、シュザンヌ、すてきなコートじゃない」「主人に買わせたのよ」「ご主人て。気前がいいのね」「ちがうのよ。女中とキッスしているところを見つけたものだから…そのおわびにね」「まあ!大変。早速女中をクビにしたほうがいいわよ」「ええ。でも、おう一つ帽子がほしいものだから…」


越路吹雪さんの本名は、河野美保さんとおっしゃる。ところがイタリア語では、コーノが女性の秘所のこと。ミオが“私の”である。ああ、なんとしよう。偶然の一致ということもある。命名にはよくよく考慮しなければならない。


シモーヌが死んで、あの世に行くと聖ペテロが天国の入り口で婦人たちに訊問をしているところだった。まず初めの婦人に「ゴーチェ夫人ですな。あなたは何度ご主人の目を盗んで他の男と通じましたか」「ただの一度です」「では苦行として天国のまわりを一周しなさい」二番目の女が前に出ると、「あなたは何度ご主人を裏切りましたか」「二度です」「では苦行として二回まわりなさい」シモーヌの番が来て、彼女は聖ペテロがなにかを言い出す前に叫んだ。「あの……自転車をお借りしたいんですけど」


・新入りの秘書嬢が言った。「社長さん、困りますわ。口紅なんかプレゼントしていただいては」「いいんだ。気が引けるなら、毎日少しずつ返してくれたまえ」


・女子寮の一室。マギイのお腹にM字型のあざがついているのを見つけて、サリイが尋ねた。「それ、なーに?」「ああ、ボーイ・フレンドとキッスをしたのよ。彼のバックルの痕がついちゃったのね」「わかった。Mの字だから……ミネソタ大学の男の子よね?」「ううん。ワシントン大学なの」


・自家用車に乗った社長が白いシートの上にブロンドの長い髪の毛が一本落ちているのを見つけて運転手に尋ねた。「キミ、これはなんだね。わしの家内もブロンドではないし、キミの奥さんだってブロンドではない」運転手が恐縮して、「じつは、社長。それについてはちょっとご説明しなければいけないことがございまして…」社長が手を振って、「いや、わしがしてほしいのは説明じゃない。紹介じゃ」


・劇場のトイレットで男が一人かがんでいた。用便をすまし、紙を取ろうとすると、これはしたり、ロールに紙が少しも残っていない。あわててポケットを捜したが、紙切れ一枚、ハンカチ一つとてない。運よく隣のトイレに人が入った様子なので、「お隣のかた、紙を分けてくれませんか」「おあいにくさま。こっちも私の分だけです」「チリ紙をお持ちじゃありませんか」「残念ながら」「じゃあ新聞でも」「それもありません」しばらく沈黙が続いたが、もう一度悲痛な声が届いた。「すみません。千円札を五百円に替えてくれませんか」


・女の子は男の子の体を見て、自分にないものがついているのに気がつく。「ねえ。ママ、あたいにはどうしてお兄ちゃんみたいにとんがったものがついてないの?あたいもほしいわ」ママがやさしく慰めて、「心配しなくていいのよ。いい娘になれば、かならず一つはもらえるわ。もっといい娘になれば三つでも四つでもほしいだけ手に入るわ」


・先輩OLのドロシイが、新入りの女性社員たちに忠告を与えていた。「この会社じゃね。社内恋愛は禁じられているのよ。でも、そう堅いことばかり言ってられないでしょう。だから、チャンスがあったら隠れてコッソリやればいいのよ」すると新入りのひとりがオズオズと尋ねて、「あの…隠れてって…どこにベッドがあるんですか?」


私のギャグネタ元の本です。オススメです。(・∀・)