酒場のギター弾き 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「ユーミンの罪」(酒井順子)


小学生の頃、荒井由実の歌を初めて聞いた時は衝撃的だった。「あの日に帰りたい」「翳りゆく部屋」「ひこうき雲…そしてバンバンの名曲「いちご白書をもう一度」ユーミンの曲だと知って驚いたのなんの!


そして大好きな「海を見ていた午後」「卒業写真」、そして三木聖子「まちぶせ」(断じて、石川ひとみの、ではない!)など。日本の音楽史に残る名曲ばかり。そして荒井由実から松任谷由実へと変わっていく。


さて、この本は、ユーミンとともに駆け抜けた1973年〜バブル崩壊までの曲を分析しながら、ユーミンが私達に残した「甘い傷痕」を辿る。そのエッセンスを紹介しよう。


ユーミンこと荒井由実がデビューアルバムひこうき雲を出したのは昭和48年、1973年、多摩美術大学の一年生。宮崎駿監督の風立ちぬの主題歌となったこの歌は、歌詞を見れば、この歌のテーマが「死」であることは一目瞭然です。十九歳という「生き盛り」のお年頃の女の子がデビューアルバムのタイトルソングとして選んだ歌のテーマが命の終わり。このコントラストは、1973年に生きる人々にとって印象的だったことでしょう。ひこうき雲が扱う死は、胸の奥に溜るような哀しみを伝えません。死が、軽やかなのです。ほとんどがお洒落と言っていいほどに。


ユーミンは、「瞬間」を歌にする人です。ストーリーやイデオロギーや感情そのものを歌にしていくのではなく、感覚であれ、具体的な事物であれ、一瞬「あ」と思ったこと。一瞬強力に光ったもの、その瞬間を鋭い刃物で切り取り、すくい上げる。そして「あ」という感覚や光の強さやらを薄めないよう、極度の慎重さをもって、歌に仕立てていくのではないか。


ひこうき雲で言うならば、それは一人の人が死に至るまでを歌ったわけでもなければ、死の悲しさや哀悼の意を実現したものでもありません。「人間は死ぬ」ということ。死んだ人間は、ある時の姿のまま、他人の記憶の中で「フローズン」されること。そんな一瞬の感覚が一つの曲に閉じ込められています。ニューミュージックとは何が「ニュー」だったのかと考えてみると、それは「瞬間を切り取る」という部分であったのではないかと私は思うのです。


「四畳半フォークって言葉、私が考えだしたんだよ」日差しがこうだとか、波の具合がこうといったシチュエーションは、幸福な人しか切り取ることができないし、また幸福な人しか享受することができないものです。すなわちユーミンの歌は、平和で満ち足りた世であるからこそ誕生し、そして人々に受け入れられていったものではないでしょうか。


ユーミンは女性達にとっての、パンドラの箱を開けてしまったのです。ユーミンという歌手が登場したことによって、成長し続ける日本に生きる女性達は、刹那の快楽を追求する楽しみを知りました。同時に「刹那の快楽を積み重ねることによって、「永遠」を手に入れることができるかもしれない」とも夢想するようになったのです。日本の若い女性達にそのようなうっとりした気持ちを与えたのは、ユーミンの大きな罪です。ユーミンに対しては、「いい夢を見させてもらった」という気持ちと「あんな夢さえ見なければ」という気持ちとが入り交じる感覚を抱く人が多いのではないでしょうか。


やっぱりユーミンはスゴイ!ユーミンは永遠だ!オススメです。(・∀・)