昭和8年生まれの父が話してくれたのは戦後の食糧難のこと。当時新潟にいたはずなのに、食べ物が本当に少なかったのだとか。
さて、この本は、戦後生まれの人には分からない、日本の最も長かった「誰もが忘れかけている」あの五年間を、常識破りの視点からふり返る。 そのエッセンスを紹介しよう。
・「忘れてしまった戦後」から、いくつかひろって書いてみたい。忘れたこと、忘れた部分を書いてみたい。玉音放送から食糧難、交通地獄、闇市、犯罪、そして文化、部門部門の研究はいまで充実した本が出版されているけれども、包括的なあの時代の生活感覚を(それこそジオラマ風に)書いたものは少ないのだ。
「風呂と風呂敷」
今の若い人にはわからないことの一つに、戦前の日本には内湯、家の中に入浴設備を持っている家庭がごく少なかったことがある。特に下町では相当な家の者でも銭湯に行くのが普通だった。もちろんこのこの当時、住む家もないのだから内湯なんてとんでもない。
この当時の入浴風景を再現しようと思ったら、まず「芋を洗うような」大人数の入浴客を用意しなければならない。そして「風呂敷」を持たせること。なぜ、風呂敷か。これが「忘れていること」だ。盗難防止のため。銭湯に行った時の最大の問題は「盗難」だった。物資不足のこの時代に盗難が多かったというものじゃない。それは日常だった。毎分のように盗難が起こっていたことを、もう忘れている。
その他「食糧難と敗戦のレシピ」「殺人電車・列車」「間借り」「預金封鎖」「ラジオ文化 」など。
は〜そうだったのかあ…戦後の混乱が庶民の目で書かれている。こんな時代があったということは単なる昔話ではなくて、ちゃんと伝える必要があるね。近代の歴史の教科書としても使える。オススメです。