- 作者: 元村有希子
- 出版社/メーカー: 毎日新聞社
- 発売日: 2012/12/20
- メディア: 単行本
- 購入: 2人 クリック: 21回
- この商品を含むブログ (5件) を見る
さあ、この本を読んだら、もう理科は苦手、理系嫌い、なんて言えなくなる科学エッセイ103篇。「ウシやシカはどうして北を向くのか? Eメールとウシのゲップと地球温暖化な関係とは? iPS細胞・山中伸弥教授の「滑る話」って?! 男らしさと薬指の関係とは?」そのエッセンスを紹介しよう。
・三月一日。月曜日。この意味がわかる人はかなりの情報通である。厚生労働省が、日本の自殺者のデートを分析したら、一日あたりの自殺者が最も多かったのが三月一日、曜日では月曜日だった。ちなみに、日付の二番目は四月一日、三番目は六月一日。「一日」が多い理由は、転勤や転職や転校などで環境が変わるからか。ワーストテンはすべて一日か月末だったという。その点で月曜日に多いのもわかる気がする。
・1863年、世界で最初に開通したロンドンの地下鉄は設備が古く、ホームから改札口までの間に必ず階段がある。だが、ベビーカーを押す母親がいれば、居合わせた人がさりげなく手を貸す。私も重いスーツケースを持て余し、見知らぬ人たちに何度か手伝ってもらった。日本は逆だ。都心の多くの駅にはエレベーターがあるが、本来使う必要のない人たちが先に乗り込み、必要としている人が取り残される。日本のエレベーターに必ずある「閉」のボタンは、世界では特殊であることも、外国に暮らして知った。
・意外である。天文学者といえば、星空大好き少年がそのまま大人になったようなイメージがあるしかし実際のところはそうでもないらしい。天体望遠鏡などもう何年も触っていないとか、星空を見ても星座が分からないとか、論文を読むより研究所内の会議に時間を取られるとか、こういう天文学者は意外に多い。天文学者に関するもう一つの誤解は「天文学者はロマンティスト」だそうだ。「宇宙のロマン」などと楽しんでいられるのはわれわれ素人の特権で、学者は生き馬の目を抜く世界、ロマンもへちまもない。
・知人の飛行士が言っていた。「宇宙飛行士って模範的に見えるかもしれないけど、離婚率は結構高いんですよ」宇宙飛行士は訓練であちこちを飛び回るから、家になかなか帰れない。宇宙行きが決まると、不眠不休で訓練、家には寝に帰るだけ、というモーレツサラリーマンになる。地上四百キロの宇宙に浮かんでいるISSに長期滞在が決まれば、それこそ宇宙に半年間の単身赴任しまいには妻がキレて子どもと実家に帰っちゃうというパターンが多いらしい。名誉と人気だけじゃ家庭は持たないのだね。
・十九世紀のイギリスで電磁気学の基礎を築いたファラデーは、数多くの人を魅了する実験でも知られたが、ある婦人から「そんな役にも立たないつまらないことをして何になるのですか?」と聞かれ、こう問い返したという。「生まれたばかりの赤ん坊が、何の役に立つというのですか?」
ちなみに山中教授の「iPS細胞」って、大文字じゃなくて、小文字の「i」としたのは、「iPod」にあやかって、世界の人に覚えてもらえることを考えたんだって。知ってた?なるほど!オススメです。